背後には気を付けよう3
ゴブリンの襲撃の翌日
村は無事だったし、死者も出なかった。重傷者も殆ど出なかった。俺を除き。
そしてゴブリンに頭カチ割られた俺は治癒魔法をかけてもらい傷一つなく今日も元気に嫉妬していた。
何故なら頭カチ割られた俺の事より、特殊能力が発現したロキュの事で昨日は大盛り上がりだったからだ。
どうやら周りの反応と母から聞くに特殊能力持ちはそこそこ珍しく、将来安泰、就職先にもあまり困らないらしい。
英会話の出来る日本人くらいのレア度?
まあいいさ。次に、もてはやされるのは俺の番だ。
とまあ嫉妬に狂うのは、この辺にしておいて
折角の異世界!ここには前世では架空の存在だった魔法がある!と来れば
「使いたくなるよね~魔法!」
鼻歌まじりに、なんならスキップもしながら誰にも見つからないように森の中に来た。
子供の火遊びと同じ扱いで物事がちゃんと判断できるような、ある程度の年齢までは魔法を使わせないのが一般的なので、こうしてバレないようにコッソリと魔法を試さないといけない。
子供の悪ふざけで家燃やされたくないしな、わかるわかる。
そういうことで魔法を使おうとしても使い方は教えてもらえなかったので手探りで魔法を使わないといけないわけだけど、そこは前世のアニメや漫画、ゲームの知識で何とかしよう。
記念すべき最初の魔法は、どれにするかもう決めてある。
魔法を行使するための定番って大体は魔力を感じたり、使いたい魔法を強くイメージしたりして、なんやかんやするんだっけか?
「やれる!この元『悠太郎』くんなら出来る!!」
体内の魔力が活性化しているのか、心地の良い温もりを感じる。いや興奮してるだけかこれ?
「もうなんだっていい!いくぞ、いくぞ、いくぞ!」
使いたい魔法を事細かにイメージし、魔力を爆発させる。
瞬間、周辺が閃光に包まれる。
火を出すわけでも、水を出すわけでもなく、はたまた空を飛ぶわけでもない。俺が選んだ魔法、それは・・・。
閃光が止み、周囲の光景が徐々に見えてくる。
「い、いやっっった・・・!」
目の前には写し鏡のようなもう一人の自分が存在していた。
「・・・分身は成功だ!」
分身の魔法を選んだ理由は単純で、時間は有限なので魔法修行を効率化したかったから。
この分身には分身が経験したことを他の分身や本体に共有するように組み込んでおいた。
つまり分身の数だけ経験値が倍になる。
前世ではゲームの効率化と聞くだけで目を輝かせる自分にはピッタリの魔法だ。
「それにしても、いつみても可愛らしいな、我がボディ」
舐め回すように分身を見つめていると分身の俺は調子に乗ってキメポーズを取り始めた。
身長は120cm前後で透き通るようなエメラルド色の長髪の女の子、それが今の自分の姿だ。
何故男である自分が女性に転生しているのか、今も恋愛対象は女性な自分にはかなり深刻な問題だが今はそれどこではない。
後ろ髪をかき分けゴブリンにカチ割られた箇所を観察するが傷跡がない。
「本当に傷跡一つない、凄いな治癒魔法って」
安堵するとともに腹の底から煮えたぎるような怒りが沸いてくる。
そう、わざわざ分身を習得し魔法の修行を効率化する理由がこれだ。
「ぶ、ぶち殺してやるからなゴ、ゴブリンども・・・!」
前世から変わらず、かなり根に持つタイプだった。