遂に来た入学式、夢の学園生活!
「遂にこの日がやって来たね、お姉ちゃん…!」
はい、お姉ちゃんです。
そうなんです、俺は未だに『お姉ちゃん』あれから女のまま男に戻れていません!!
…だというのに今日この日を迎えてしまった。
今日は何の日かって?それは勿論、入学式ですよ奥さん。
俺がゴブリンにぶん殴られて前世の記憶を思い出し早7年。
日々が過ぎるのは早いもので私、阿部悠太郎ことユリィちゃんは15歳に、そして三つ年の離れたユリィちゃんの妹、レコちゃんは12歳になりました。
……いや本当は学校入学までには男に戻る予定だったんですよ?
それがいくら探しても男に戻れそうな魔道具は出てこない!
都合よく性転換させて来る様子のおかしい敵も出てこない!
一体全体どーなってるんだ、この世界は!!
こちとら一身上の都合で魔法を使って自分の性別を変えられないというのに……!
都合よく行かない世界に内心怒り狂いながらもそれを表情に出すこと無く、俺は入学することとなった
アミスティア学園の正門をくぐる。
するとどうだろう。
先程まで入学できたことの喜びで浮ついていた新入生諸君の視線が一斉に、こちらに向いたではありませんか。
「お、おい、あれ見ろ!」
「あの子ってまさか例の……」
「ええ、史上最年少でこの学園に受かった……」
んん~?何か噂する声がちらほらと聞こえてきたなァ!?
ふぅん、それもそのはず。
このアミスティア学園は基本的に15歳から入学出来るのだが、うちの可愛いレコちゃんは類まれなる才能と圧倒的な実力を発揮し、なんと主席で合格。
アミスティア学園創立……何年か忘れたが、史上最年少!すーぱー12歳のお通りだァ!!
「凄いぜーレコちゃん、早速噂になってるぜ~」
「半分くらいお姉ちゃんのことだと思うけどねー」
「ほ~ん?」
おいおいおい、まだ何もしてないんだが~!?
溢れんばかりの魔力、才能、実力を隠し切れなかったかぁ~?
それとも入学試験で俺、何かやっちゃいました~?
「あ、いたいた。リア~!」
「おはようレコ」
「時間通りだね、じゃあ早く行こっか!」
「分かった」
まあ?天才12歳、その姉なら注目度されても仕方ないかぁ~~~。
さてさて、ここらで一旦、俺の事を噂している生徒達の声に耳を傾けてみましょうかね。
どれどれ~、一体どんな事を言ってるんでしょ~~~うか。
俺は聞き耳を立てると男共の会話が聞こえてくる。
「うおっ……でっか……」
「なるほどね」
「なんだその胸は、ふざけやがって……!」
「デカパイ感謝」
「身体的特徴───ッ!!」
「ほらお姉ちゃん早く行こ!今日はナナンが新入生代表の挨拶をやるから、早く行っていい席取らないと!」
「待て、お姉ちゃんはアイツらを殺さなくてはならなくなった」
「はいはい、行くよ~」
「もっとあるだろッ!こう!他にも!!」
俺は再度、新入生会話に聞き耳を立てる。
「おいおいアイツは……Sランク冒険者で王国騎士団、団長の……」
「キャーッ!『ロスア・キュウズ』様!!」
突然現れた銀髪高身長イケメンに女子生徒達が群がる。
「同じ15歳だってのに俺達とは生きる世界が違うなぁ」
「あんなバケモノと比べても仕方ないだろ、気楽に行こうぜ」
「なんだァ!?もう私の事は眼中にないってか!?ムキ~~~ッ!!」
ユリィはレコに強引に引きずられながら体育館へ連行された。
入学式といえば?
校長の式辞
在校生代表の挨拶
新入生代表の挨拶
とまあ色々ありますが、なんとこのアミスティア学園では新入生が前に出て特殊能力を晒します。
……何でそんなことを?貴族御用達の学校だけあって力を誇示したいんですかね?
まあ、この世界の大人の事情はよく分からんが、俺達新入生は名前を呼ばれたらステージに立ち、真っ黒い板の魔道具に魔力を流して特殊能力を開示するだけ、簡単だね。
でも問題は数。
今回の新入生は約100人、中々長くなりそうだ。
ステージには特殊能力を表示させる魔道具と生徒の呼び出しと魔道具に表示された特殊能力を読み上げる80代の白髪のおじいちゃん副学園長が今も新入生を呼び出しては特殊能力を読み上げている。
特殊能力の晒し合いは、一言で言えば退屈だった。
だって『火炎放射』だの『念力』だの、どれもありきたりで、ぱっとしない特殊能力が表示されるんだもん。
もっとこう、複雑な特殊能力とか、それいつ使うの?ってくらい限定的な特殊能力とか、はたまた普通に超珍しい激レア特殊能力とか出ないかな~。
とか呑気に考えていたら、見知った名前が呼ばれた。
「ナナン・アミスティア、特殊能力『伝心』」
お、ナナンちゃんだ。
確か『魂に直接作用して空気の無い空間でも声がナナンの声が一方的に聞こえる能力』だっけか。
戦闘中に作戦が相手に聞かれる心配もないし、逆に相手を惑わしたりも出来る、利便性の高い特殊能力だけど本当に凄いのは効果範囲だ。
この前なんかダンジョンに潜ってる時に声を掛けられたもんなぁ~。いい特殊能力だ。
「次、ユリィ・スティルア」
おっと呼ばれたか。
俺はゆっくりとステージに向かう。
ふふん……実は7年前にギルドに入る時に調べたっきりで、あれから特殊能力の鑑定はしてないんだな~。
後天的に特殊能力が出て来ることはないって、あの時ギルドの受付嬢は言ってたけど、案外特殊能力が生えてきてたりしてるんじゃないの?
俺はステージに上がり、ちょーっと、ホントちょっとね、期待しながら魔道具に魔力を流す。
「ユリィ・スティルア、特殊能力『無し』」
知ってた。
まあね、知ってましたとも。
全然悔しくなんかないですよ私は。ええこれっぽちも。ちーっとも。
「リア、特殊能力『無し』」
意外や意外、まさかリアちゃんも特殊能力無しとは。
「リアちゃん、今日は一緒に飲もうね!」
俺はステージから戻って来たリアに声を掛ける。
「……?うん」
俺は、おじさんだからね、年の功ってやつで気丈に振舞っても分かるぜ、その心の内、その気持ち。
特殊能力無し無能力者同盟として仲良くやって行こうなリアちゃん!!
俺はリアちゃんに並々ならぬ親近感を感じて───。
「レコ・スティルア、特殊能力……『無し』」
「はーいウソウソウソ!!」
ユリィがズカズカとステージに乱入する。
「私のさいきょー可愛いレコちゃんが特殊能力無しなんて……そ、そんな事あるわけないだろ!貸せ!貸してみろ!!」
「何だ貴様は!?」
「ちょっ、お姉ちゃん!?」
俺は強引にジジイ副学園長から魔道具を強引に分捕り、そこに書いてあるであろうレコの特殊能力を凝視する。
そこに書いてあったのは──────。
レコ・スティルア
特殊能力『全知全能の神眼』
「オァー!?」
「お姉ちゃん!?!?」
俺は泡を吹いて失神した。
なんなんですか全知全能の神眼って……。




