激動☆魔法少女の一日
異世界生活10日目
そうなんです。
ゴブリンに殴られたり、盗賊やら闇ギルドやらと色々とありましたが、前世の記憶を思い出してから、実はまだ10日しか経っていません。
一応ユリィちゃんとして、これまで生きて来た約8年分の記憶はある。
だが成人男性として過ごした約30年分の無駄に濃密な記憶を思い出したせいで、そっちに引っ張られて自分の性別が男から女に変わったことをすっかり忘れていた。
普通、自分の性別が変わっていたら、いくらなんでも気付くだろ?とお思いになると思いますが、異世界転生経験者もしくは前世の記憶をお持ちの方からのみ抗議を受け付けております。
それにまあ最近色々と忙しかったし?まあこれくらいのミスは誰にでもあるよね。
…………ってそんな訳あるかーい!!
まずい、本当にまぁず~~~~~い。
このままじゃ最強のハーレムを作るどころか、逆に変な男のハーレムに入れられてしまうことだってある。
それだけは回避したい!俺は男に戻ってハーレムを作りたいんだ!
だったら魔法でサクッと男に戻っちゃおう!と思いそれとなく母と妹に聞いたら当然反対されてしまった。
もうそうなったら不可抗力、不可抗力で男になる方法しかないよね?
ということで各地のダンジョンを攻略したり、魔道具を取り扱う店などを駆け巡り、男に戻れそうな良い感じの魔道具を探し回ることにした。
そんなこんなで分身を使った超・人海戦術で金策と修行。
そして男に戻る為の魔道具探しと充実した日々を過ごしていたら、あれよあれよという間に月日は流れ───気付けば3年が経過し、俺は11歳になっていた。
そんな、ある日の早朝。
「私も王都に行ってみたい!!」
我が妹、レコちゃん(8歳)は突然そんなことを言い出す。
「じゃあ行こうか王都に!」
勿論即答。可愛い妹の頼みとあれば、たとえ火の中、水の中、草の中、森の中、何処へでも行きましょう。
「やったぁ!!」
「それじゃあ早速……変身っ!」
俺は変装用の魔法を使って華麗に変身!
身長は170cmくらいで髪はショート。
服装は、ネイビーの袖なしサマーニットノースリーブに白デニムに黒のサンダルと、スレンダーなユリィちゃん20歳の姿(予想)に変身する。
「大人になった!」
「子供二人だと入国の時とか色々と大人の人に心配されちゃうからね」
「へ~」
そう、今日の俺は保護者、それに相応しい格好に変身したという訳。
「よ~し、じゃあレコも着替えよっか」
「うむ!」
レコがこちらに向かって胸を張りながら両手を広げて待っている。
俺は、すかさず魔法を掛けると魔法の輝きに包まれたレコの衣装が変わる。
ブラウンのワンピースから白のビックシルエットTシャツに黒のショートパンツ、そして水色のサンダルにコスチュームチェンジ!
「どうですか姫?」
「う~む、苦しゅうないぞ」
どうやら衣装がお気に召したようでなによりだ。
「よ~し、それじゃあ行こっか!」
「うん!」
レコと向かい合ってお互いの両手を繋ぐ。
「行くよ~、せーの……」
「ジャ~~~ンプ!!」
2人息を合わせて同時にジャンプ!
そして着地と同時にワープ。周囲の景色がガラッと変わり、王都アミスティアの城門前から少し離れた場所にやって参りました。
「おっきな壁!」
「あそこに入口があるから入口目指してレッツゴー」
「おー!」
歩いて城門前に辿り着く。
そこで行われた入国審査では、俺の世を忍ぶ仮の姿であるSランク冒険者であるフュリアを保証人にしてヌルっと入国。
「人がいっぱいだ!」
レコは街を行きかう人々を見て驚く。
今日は特にイベントがある訳では無いが、それでも自分たちが住む限界集落より王都は人口も多く、歩行者も多い。
「迷子になっちゃうからお姉ちゃんと逸れないよーに」
「はーい。あっ、お姉ちゃん!アレ!」
「はい、お姉ちゃんです」
「もしかしてあの建物がお城!?」
レコは離れた位置にある大きな城、アミスティア城を指をさす。
「正解っ!」
「じゃあ、じゃあ!あそこに王様やお姫様がいるんだよね!?」
「うーん、行っても王様達には会えないと思うけどそれでもいい?」
「うぇ~、なんで~?」
「王様たちは、と~っても偉くて、と~っても忙しいから簡単には会えないんだよ」
「そ、そんなぁ……お話したかったなぁ……」
「で、でもお城は見れるし!それに王都には、まだまだ珍しい物とか美味しいものがいっぱいあるよ!」
「あ」
何の予兆もなく、レコは急に通行人の男性Aを魔法の光弾で攻撃した。
攻撃を受けた男性Aは呻き声を上げることもなく床に転がっていた。
「あ”ぁ~???」
妹の突然の凶行に思考回路はショート寸前。
何?何が起きた?急にどうした!?八つ当たりか!?そんなに王族に会いたかったのか!?
混乱している俺をよそにレコは倒れている男の元に近づく。
「ダメなんだよーおじさん?人の物を取ったら。……はい、どうぞお姉さん」
レコは倒れている男の手に握られていた財布を取り、近くにいた女性の元へ行き、財布を渡す。
「……え?あっ!私の財布!?あ、ありがとう……」
いつの間にか財布を男に盗られていた女性は困惑しながらもレコから自分の財布を受け取る。
「どういたしまして!」
「レコちゃん偉い!」
「いえい!」
レコは笑顔でピースもしている、可愛い。
……ま、まあ!?も、勿論分かっていましたよ!妹が急に他人に八つ当たりする子じゃないってことくらい。
我が妹の弱気を助け強気を挫く、その姿を褒めて褒めて褒めちぎりたいが、そういうわけにもいかない。
このまま、この窃盗犯を放置してたら、あらぬ疑いを掛けられてしまうかもしれない。
なので衛兵を呼びに行かなくてはならない。
「ちょっとお姉ちゃん、衛兵……この悪いおじさんを捕まえてくれる人を呼んで来るから、ここで待ってて」
「はーい」
ユリィが大急ぎで衛兵を呼びに行き、暫くして……。
「強いね、貴方」
キャスケットを被ったショートカットの少女がレコに話しかけて来た。
彼女はライトグレーの髪にグレーの瞳、身長は140cmくらいとレコより10cmは高い。
服装は、背中が丸出しのホルターネックにホットパンツ、ショートブーツと全身黒色で統一されている。
「えぇ~、そうかなぁ~」
レコは女の子に褒められて、照れくさそうに笑う。
「それに眼も良い」
「……んん?目?」
視力の事だろうか?
確かに自分の視力は5.0?だっけ?
とっても目が良くて、お姉ちゃんが驚いてたけど、そのことかな?
「貴方の名前は?」
「レコだよ」
「レコ……聞いたことない名前。こんなに強いのなら無名のはずがないのに……貴方の姉も強いの?」
「もちろん!私のお姉ちゃんは最強だよ!」
「……姉の名前は?」
「お姉ちゃんはユリィって言うんだ~」
「ユリィ……覚えた」
「……って、あ~!そういえば名前!」
「……?」
「貴女の名前、まだ聞いてなかった!なんて言うの?」
「…私の……名前……?」
「うん!」
「私の……名前は……」
キャスケットの少女の名前を聞こうとした、その時。
「超大規模なスタンピードだ!全冒険者達は街の外に集合してくれ!大至急だッ!!」
血相を変えた衛兵が王都に訪れた危機を知らせに来た。
「すたん、ぴーど?」
「魔物の集団がこっちに向かって迫って来てるって事」
「ええ!?そうなの!?」
「だから戦える冒険者は街の外に、戦えない人間は安全な場所に隠れて……」
───突然。
「うわぁ!?なんだ!?なんで街中にオークがいるんだ!!?」
「一体だけじゃない!街のあちこちに魔物が、沢山!!急に!!」
「ゾンビやスケルトン、他にもいるぞ!」
「だ、誰か助けてくれ!!」
「冒険者は!?衛兵はどこ!?」
キャスケットの少女の言葉を遮るように街中から人々の悲鳴が聞こえてきた。
「……貴方はどうする、レコ?逃げる、それとも───」
「変わる私、変える未来、交わる世界、夢を守る魔法の光、クロッシングドリーム!」
高らかな声、派手なエフェクトと共にレコは魔法少女に変身した。
「……何で今、早着替えを……?」
キャスケットの少女は、レコの唐突な早着替えを理解できずに困惑しているが、当の本人は、そんなことお構いなし。
「私、皆を助けて来るから、貴女は安全な所にいてね!」
レコはキャスケットの少女に安全な場所への避難を促し、目の前にいたオークと対峙する。
「いっくよ~~~!」
レコは右手にキラキラと光るエフェクトを纏わせながら、街中に現れたオークに向かって走る。
「『きらきらパーンチ』!」
掛け声と共に物理的にキラキラ光る右ストレートをオークのお腹にお見舞いした。
説明しよう!
『きらきらパンチ』とは、右手にキラキラなエフェクトを纏わせて相手を思いっきり殴り───
「……嘘」
触れた相手を一瞬で光の粒子へと変換、キラキラと光るエフェクトを発しながら消滅させる必殺浄化パンチなのである。
「いえいっ!」
レコは決めポーズをバッチリと決める。だが油断も慢心もしない。
まだまだ街の中には数えきれないほどの魔物達が人々を襲おうとしている。
「させないよっ!」
レコは仁王立ちで構える。
「『クロッシングミラージュ』!」
説明しよう!
『クロッシングミラージュ』とは、自身の姿が写った鏡を無数に出現させ、現れた鏡が自動的に割れると同時に、鏡に映っていた自分の鏡像を現実世界に現出させる……つまりは分身技なのである。
「みんな!街の人たちは任せたよ!」
「えいおー!」
レコの指示を聞き、分身達は元気よく助けを待つ人々の元へ駆け出していく。
「私は街の外のスタンピード?を何とかしないとっ!」
そう言って本体であるレコは、一気に300メートル上空まで飛ぶ。
「特殊能力じゃない、魔力だけで空を……!?」
地上に一人残されたキャスケットの少女は、この世界の常識を知るが故に、自在に空を飛ぶレコの姿を見て戦慄する。
───この世界で人が空を飛ぶ方法は二種類。
一つは特殊能力による飛行。
だが飛翔系の特殊能力を持った人間は非常に稀で、国内でも片手で数えられる程しかいない。
なので飛翔系の特殊能力を持っていれば、国中に知れ渡るはずだが、レコの顔と名前には覚えがないし、そもそもレコが特殊能力を発動した形跡がない。
もう一つは魔道具による飛行。
こちらはダンジョンなどで手に入る魔道具のみで、人造の魔道具は未だに実用化には至っていない。
そして飛翔系の魔道具は発見率が極端に少なく、1年に1個見つかればいい方で下手をすれば5年、10年は手に入らない。
その為、流通数は限りなくゼロに近く、レコのような少女が持っているとは考えにくい。
例外として、魔力を使う方法もある。
だがこちらは膨大な魔力量と非常に高度な魔力操作が必要不可欠。
つい最近、Sランク冒険者のヴェルウェルが、何年も、それこそ血のにじむような努力をして、やっと5秒ほど空を飛ぶことに成功したというが……こんな年端も行かない少女が自由に空を飛びまわるなんて……信じられない。
(もう5秒以上空にいる……レコ、そして彼女が最強と言う姉、二人は一体……)
「うわぁ……」
300メートル以上上空にいるレコは、王都をぐるっと一周囲むようにして現れたモンスターの大群、スタンピードの規模を確認し、その数の多さに辟易していた。
「あ~、お姉ちゃんから、いっぱいやっつける用の魔法、教えてもらっておいてよかった~」
レコは姉に感謝しながら、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色の小型な円形を数千、数万個以上を自分の頭上に出現させる。
「『プリズムレイン』!」
レコの頭上に大量にあるカラフルな円形から同じ色の光が放物線を描きながら、地上の魔物目掛け幾つも放たれた。
地上に降り注いだ様々な色の光は、魔物の身体を貫くと同時に、その身体を一瞬で光の粒子へと変える。最後には星形の小さなエフェクトを発しながら、魔物は地上からその痕跡を一切残さず消滅する。
中には光線を避けようとするものもいるが、降り注ぐ光線は何度も、何度も、何度でも屈折しながら着弾するまで追尾を止めず、全ての魔物を残らず消滅させていく。
説明しよう!
『プリズムレイン』とは超広範囲自動追尾殲滅浄化技なのである!!
そしてレコは知る由もないが、突如天空から降り注いだ光の雨によってスタンピードの魔物達が一匹残らず殲滅された事で、王都防衛の為に駆り出された兵士や冒険者達に大混乱が起こっていた。
「よしっ!これでお姉ちゃんを助け……に……」
───言いかけたその時。
ふと、レコの視界に全身が赤黒い鱗で覆われた大きな鳥の姿が映った。
その鳥は遠く離れた位置からアミスティア城目掛け、一直線に飛んで来ている。
レコには、一目見ただけで分かった。アレは私が倒さないといけないヤツだ。
「早く助けに行かないと!」
でないと城の人たちが、いっぱい死んじゃう。
レコは音の壁をぶち破って全速力でアミスティア城に向かう。
───その道中。
私はゴブリンが襲ってきた、あの日の事を思い出していた。
私が魔法少女になろうと思ったあの日の出来事を───
あの日、お姉ちゃんはゴブリンに襲われて怪我をした。
でもそれは襲われてた私をお姉ちゃんが庇ってくれたから。
『私が来たからには、もう大丈夫だよ』って。
お姉ちゃんが来てくれた!ああ、助かったんだって、あの時は本当に嬉しかったな。
絶望の淵から救い出された、あの感覚、あの時の気持ちを、私は一生忘れることが出来ないと思う。
そして『お姉ちゃんのような、誰かを助けられるヒーローになりたい!』ってそう思った。
だから私は魔法少女になった。あの時の私のように助けを待ってる人達をいっぱい助けたいから!お姉ちゃんと一緒に!!
だから私は戦う、そしてみんなに言うんだ。『もう大丈夫だよ』って。




