〇〇が欲しいか?6
馬車でダンジョンへ向かう最中、車内ではフュリアがヴェルウェルから質問攻めに遭っていた。
「フュリアって何処からアミスティアに来たの?」
「遠い島国から来ました」
「ふぅん」
嘘は言ってない。
しかし事前にデート用のトークデッキをいくつか考えてきたんだけど・・・。
「フュリアの魔法ってどれも見たことがないものばかりだけど、じゃああの魔法はその国独自のものだったのね」
「いえ全て私のオリジナルです」
「嘘!?え、フュリアって今いくつ!?」
「8歳です」
「嘘・・・8歳であれほどの魔法を、それも全てがオリジナル・・・」
まずい、本当にまずい。
流石にまだ作って一週間も経ってないフュリアの事ばかり聞かれたら確実にボロが出る、それもダンジョンに着くまでおよそ3時間も!
3時間もフュリアで話が持つわけがない、何とかして話題を逸らさないと!
「たった8歳でその類まれな才能に実力・・・貴女、本当に何者?アミスティアには何の目的で
・・・」
「そんなことより!」
「うわっ!?」
前のめりになりながらヴェルウェルに近づく。
「ヴェルウェルさんのスキルが知りたいです!」
「え?私のスキル!?」
本当にかなり強引に話を変えに行った。
「そ、そんなに気になる?」
「はい!」
「う~んそうだな・・・私達のギルドに正式加入してくれるなら教えてあげる」
「えぇ」
ヴェルウェルたちのギルドに入るぅ?
「ふふ、ごめんね、私のスキルはギルドメンバーにしか教えられない決まりになってるの」
「なるほど?」
ふーん、ギルドメンバーしか知らないスキルねぇ!
ということはヴェルウェルのスキルってとんでもないぶっ壊れスキルなんじゃないの~!?
き、気になる・・・ちょっと気になるけどギルドは自分のを作りたいんだよなぁ。
だって女性冒険者いっぱい雇いたいし!
それにギルドの制服だって作って着せたい!
面倒な仕事は全部押し付けたい!
美人な秘書やメイドさんに囲まれて過ごしたい!!
将来はアミスティア屈指の冒険者でプールや温泉施設の社長になるんだからこれくらい当然!寧ろ箔が付く!!
いいぞ、いい!最高だ!!
「フュリア?」
ヴェルウェルが心配そうにフュリアに声を掛ける。
いかん自分の世界に意識が飛んでいたようだ。
「まあフュリアとはこれから一緒に仕事する機会も増えていくだろうし、そのうち私のスキル見れるかもね」
「それは楽しみです」
緊急時なら見れるらしい。見てみたいなあ。
「その時は箝口令、他の人に喋っちゃダメだからね?」
「はい分かりました」
「そうそうフュリアって誰に魔法を習ったの?流石に師匠とかいるでしょ?」
「独学です」
「はぁ!?」
ヴェルウェルが素っ頓狂な声を上げる。
「そんなことより!ヴェルウェルさんはクギアさん、ミストルクさんとどういった関係何ですか!?」
「うへぇ!?」
またもや強引に話を変える。
「私とアイツらとの関係!?」
「そうです!」
そうです、肝心なことです、超重要です。
「ふぅん、フュリアってそういうの興味あるんだ」
「それはもう!」
ハーレムを目指す者として異性の交友関係は気になりますよ。
「意外」
「どうなんですか!?」
グイグイとヴェルウェルに近づく。
「ふふ、そうね・・・私とアイツらとの関係は~」
ヴェルウェルはわざとらしく焦らす。
「・・・残念、ただの仕事仲間」
「ふぅ・・・」
俺は胸を撫で下す。
少なくともヴェルウェルには2人に対する恋愛感情は無さそうだ。
となれば後はクギアとミストルクの2人がヴェルウェルを好いているかだな。
今度それとなく聞いてみるとして。
「ヴェルウェルさんは皆さんとどうやって知り合ったんですか?」
以前から少し気になっていた三人の出会いを聞いてみる。
「私は・・・そうね、私が15の時だから・・・今から4年前かな?冒険者ギルドで2人にスカウトされたの」
「スカウト!」
いいなぁスカウト!前世ではそんな機会一度もなかったから憧れるぜ。一度でいいからスカウトされてみたい。
「そ、今日フュリアもされてた」
そういえば変な連中にされてたわ。
「当時Bランクのクギアとミストルクは2人でパーティーを組んでいたんだけど、戦士2人でのダンジョン攻略は難しくて行き詰っていてね。
しょうがないから追加メンバーとして自分たちに付いて来れる魔術師を探してた所に同じくBランクでソロ冒険者だった私に声が掛かってそのまま今日までズルズルと・・・って感じ」
思ってたより仕事の同僚って感じの関係だった。
これなら今後も継続的に熱心なアプローチをしていけばヴェルウェルの心を鷲掴みに出来るんじゃないか?
ヴェルウェルと恋仲になれるんじゃないか?
俺のハーレムはそう遠くないんじゃないか?
「そういえばフュリアは『夢の果て』には興味ある?」
「『夢の果て』?」
「未だかつて誰も踏破したことがない世界最大のダンジョンの名前。
で世の冒険者達はその完全踏破を夢見てるから『夢の果て』って訳で一応私達の目標でもあるんだけど・・・興味ない?」
およ?これってもしかして
「スカウトですか?」
「そういうことになるかな」
ヴェルウェルからの熱烈なスカウト!
勿論二つ返事でOK!と行きたいところだが
「一応興味はありますけどアミスティアに来てまだ一週間も経ってませんから」
「そういえばそうだった」
「まだまだこの国を見て回りたいですし、やりたいこともありますから。なので諸々落ち着いたら一緒に行きましょう」
折角のデートのお誘い、無下にする訳にはいかないもんね
「本当!?」
「ええ」
「ありがとうフュリア!アイツらが聞いたらきっと大騒ぎね」
ありがとうはこちらの台詞ですよ、またダンジョン攻略デートのお誘いを頂くなんて今日はいい一日になりそうだ!
この調子でこの後のダンジョン攻略デートもきっと上手く行くに違いない。
「これで43階層は超えたも同然ね」
ヴェルウェルは小さくガッツポーズしている。
んん?43層?
「・・・えっと夢の果ての最高到達階層って何層なんですか?」
「43層。ふふん、実は私達が最高記録保持者」
ヴェルウェルは誇らしげに言う。
「今日行くダンジョンって何階層ありましたっけ?」
「『彷徨いの伏魔殿』?確か全10層だったかな?」
エンドコンテンツじゃねぇか!
何層あるか知らないけどこれ下手したら半年以上ダンジョンで暮らす羽目になるんじゃないの~!?
「はは・・・」
「大丈夫、フュリアなら余裕で攻略できるよ」
「へへ・・・」
渇いた笑いしか出ない。
何も考えずに安請け合いするべきではなかった。
今日は本当にいい一日になるんでしょうか?
未来は明るいんでしょうか?
「あ、そういえばフュリアって・・・」
ダンジョンに着くまでの間、再度ヴェルウェルから質問攻めされつつ、まだ見ぬ未来を憂うフュリアだった。




