何か忘れているような4
目が覚めると死屍累々の中心でソファで寛ぐ幼げな少女がいた。
「やっと起きたな、安心しな悪漢どもは全員殺した」
ソファから立ち上がり少女は告げた。
歳不相応な冷徹な言葉に違和感を覚えるがそんなことは些細な事だ。
今この女は襲撃者を全員殺したと言った、自分たちが殺されかけた相手に事もなげに。
「それに全員傷も治しておいた、動けるだろ?」
確かに奴らにやられた傷が癒えている。
改めて周囲を見渡すと自分の部下たちにも傷一つない、完璧な治療を施されている。
・・・いやあり得ない!やられた部下たちの中には腕や足を、あまつさえ首を切り飛ばされた者もいたんだぞ!?それが全員完治しているだと?
九死に一生得て自分は幸運だなんて心の何処かにあった楽観的な気持ちが吹き飛ぶ。
俺達を助けたこの女はおとぎ話で語られるような正真正銘の化物だ、こんな化物を敵に回すべきではない。
「積み荷の中身も無事だ、アレを無事と言っていいのか分からないが」
アレを見られたというのか、よりにもよってこんな化物に!アレの運搬は極秘に行わなければならないというのに!
・・・この女は口封じの為に始末しなければならない。
だがこの女に自分のスキルが通用するのか?こんな化物相手に。
だがやるしかない・・・。俺は復活した部下たちに目配せで指示をする、「スキルによる連携で始末する」と。
俺のスキル『意識誘導』は、俺が発した言葉、または口の動きに意識を完全に向けさせ、それ以外の事柄を意識出来なくなるという対人戦闘においては無敵の能力。
弱点を上げるのなら先ほどのような奇襲、集団戦においては全く役に立たないということだが今はそんな弱点を気にする必要はない。
「蛮族共の始末から傷の治療まで、本当に何から何まで感謝の言葉もない」
俺は喋りながら少女に走り出し、長剣で切りかかる、部下たちも俺の動きに乗じて近接戦や魔法攻撃などで攻撃を仕掛ける。
「ああ、よかった」
少女が指を鳴らすと同時に俺の身体中から血が噴き出る、そのあまりの激痛に膝から崩れ落ちてしまう。
「な、なにが起きた!?」
「あんたらに掛けた治癒魔法を取り消したんだよ」
「な、なに?」
「ほーら周りを見てみな、さっきまで繋がっていた身体がバラバラになってる奴らもいるだろ」
「治癒魔法を取り消す?あり得ない!こんな芸当出来るわけが」
「出来るだろ、魔法なんだから」
さも当然のようにこの女は言う、常識的にそんなことはあり得ない。
例えば木を魔法で伐採しようとする、伐採している最中にその魔法を取り消したからって木が元に戻るわけがない。それが出来るとこの女は言ったのだ。
理解できない。だが理解できないことはもう一つあった。
「な、なんで俺の意識誘導スキルが効かなかったんだ!?」
「ん?ああ、お前に興味がなかったからな」
興味がなかった?そんなことで俺のスキルが?
「そんなことよりアンタには聞きたいことがあるんだ、答えてくれるなら助けてやるよ」
血を流し倒れている自分の前に何処からともなく先ほど寛いでいたソファを再度出現させ、それに座りながら化物は告げた。
この女にはもうどうあっても逆らうべきではない、俺は渋々質問に答えることにした。




