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初めて芽生えた向上心

「おお〜!これが宇宙船!!」


 あれから、とりあえず宇宙船を確認しようと、シア達はシェパーに連れられて地下シェルターへと赴いていた。

 そこにあったのは、まるで一つの豪邸のような大きさを誇る船だった。

 これ程の大きさの宇宙船ものは初めて見たのだろう。

 シアが瞳をキラキラと輝かせる。


「大っきいね!!これに乗って、宇宙に行くんだ!!」


 シアは宇宙船に乗ること自体初めてだ。乗る事になった原因も忘れて、生まれて初めての宇宙船にテンションがピークに達する。

 対してリーファは宇宙船など見慣れたもので、さっさと中に入って行った。

 ヘキムとシェパーもそれを追うように入り口へと向かい、「シア」と手招く。

 シアはワクワクしながら、弾む足取りで三人の後に付いて行った。


「……思っていたよりも新しい機種だな」


 宇宙船内部の操縦室までやって来た一行。リーファが操作パネルを確認しながら呟いた。


「どうですか?一ヶ月以内にリーチ星に辿り着けそうですか?」


 ヘキムが尋ねる。

 当然だが、古い型の宇宙船と新しい宇宙船では、目的地に到着するまでの時間が違う。

 帝国軍で使われている宇宙船は全て最新機種だ。リーファの言う「リーチ星までおよそ三週間」という数字は、リーファにとって馴染み深い帝国軍の宇宙船を使えばと言う意味だろう。

 ノール星にある宇宙船で一ヶ月以内にリーチ星へと辿り着ける保証はなかった。

 ヘキムとシェパーがドキドキとリーファの返事を待つ。

 粗方触り終えたのだろう。リーファは立ち上がると、二人へ振り向いた。


「割と性能の良い船だ。この分だと、早ければ三週間掛からずに到着するかもな」

「「!!」」


 リーファの答えに、二人が安心したように表情を和らげた。


「良かったぁ」

「良しっ!それなら、できる限り早めに出発して、余裕持ってリーチ星に行こう!」

「はい、そうですね!」


 ヘキムとシェパーが頷き合う。

 到着に三週間掛かるなら、最低でも一週間後までには発たなければいけない。だが、当然その身一つで宇宙に行く訳にもいかないのだ。食料や着替え、怪我をした時などの緊急セット。とにかく必要な準備が沢山ある。しかも、食料に関しては、ノール星のように小さな町では中々量を集めるのに時間を有してしまう。


「一番の問題は食料だよなぁ。蓄えが多い訳じゃねぇし、かと言ってすぐに作れるもんでもねぇし……」

「そうですね。最悪、水だけで何日か保たせれば何とか……とりあえず、二日後か三日後までに準備を終わらせましょう。食料のことは町の皆さんとも相談しないと……」

「だな。最後の手段にヘキムの超能力もあるし、遅くても三日後には出発したいな」


 シェパーとヘキムが話を進めていく中、ずっと初めて見る宇宙船の内部に興奮していたシアが、「ねぇ」とリーファに話しかけた。


「リーチ星に着くまでの間さ、リーファが宇宙船を操縦するの?」


 シアがコテンと小首を傾げる。リーファは「否」と首を横に振った。


「途中で別の星に寄る暇もないし、リーチ星に直行ならオートで大丈夫だろ」

「『オート』?」

「機械が自動で操縦してくれるってことだよ」


 ピンと来ていないシアにヘキムが耳打ちしてくれる。簡潔に言えば、操縦室には誰も入らなくて良いということだ。つまり、リーファは操縦しないということである。

 それならと、シアは「じゃあ」と口を開いた。


「リーチ星に着くまでの三週間、俺と特訓して!!」


 シアがリーファを本気の眼差しで見据える。

 今までシアはノール星の『英雄ヒーロー』として、町の人達を守ってきた。偶にやって来る賊にだって、つい先日対峙した帝国軍の戦闘員にだって、それ程脅威を感じたことはない。それはシンプルにシアが強いからだ。シアは自分が誰かと闘って負けるかもしれないなどと考えたことは一度だってなかった。だからこそ、強くなりたいと真剣に思ったことはない。

 だがしかし、リーファと出会って何かが変わった。

 初めてできた好きな女の子に、カッコ付けたいだけかもしれない。それとも生まれて初めて同種に出会えたことで、“戦闘狂集団”としての本能が騒ぎ出しているのかもしれない。

 どちらにせよ、シアは今、心の底から強く思っていた。

 強くなりたいと。


「……」


 シアの眼差しを受けて、リーファがシアの金色の瞳を見つめ返す。そして、しばらくジト目で無言を貫くと、呆れたように溜め息を吐いた。


「……はぁ……初めからそのつもりだ」

「そこを何とかお願いしま……えっ?エェッ!!?」


 まさか一発で了承を得られるとは思っていなかったのだろう。シアがリーファを二度見する。

 失礼なシアの反応に、リーファは眉根を寄せた。


「何だ?断った方が良かったのか?」


 リーファが皮肉を告げれば、「否否否」とシアが慌ててブンブン首を横に振る。


「否だって、いつも必ず最初はお願い断るからさぁ……素直に頷かれると驚いちゃうって言うかさぁ……」

「……わかった。なら断る」


 機嫌を損ねてしまったらしい。そっぽを向くリーファに、シアは情けなく「あぁ、ごめんってば」とお姫様のご機嫌取りに勤しみ始めた。


「リーファに認めて貰えてる証拠でしょ!?すっごく嬉しいから、断らないで!!」

「一々ポジティブな捉え方をするな!別にお前を認めたから、頷いた訳じゃない!」

「えっ、じゃあ何で?」


 寝耳に水と言ったように、シアがキョトンと首を傾げる。本当にリーファが頷いた理由がソレしか思いつかない辺り、空気の読めなさは相変わらずだ。

 リーファは再び大きく溜め息を溢した。


「お前は惑星ほしの存亡を賭けて闘いに行くんだろ?今までの賊退治とは訳が違うんだ。惑星ほしの……種族の誇りを賭けた闘いで、月猫族の生き残りであるお前に情けない戦闘をされたくないだけだ!」


 言い終わると、リーファはプイッと顔を背ける。

 そんなリーファの様子に、シアは一瞬ポカンとするが、すぐにフッと柔らかく微笑んだ。


「そっか。なら、余計に頑張らないとね!」


 両手に握り拳を作って見せるシア。

 ノール星の為、町の皆の為、そしてリーファの大切な月猫族の名を汚さない為にも、シアは強くなると決心する。


「三週間、特訓よろしくね!リーファ!」

「ふんっ、精々覚悟しておけ」


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