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自分の故郷

「……い、一ヶ月後にし、消滅……」

「そ、そんな……」

「また……また、住む場所を失うのか……」


 町へと着いたシェパー達は、パニック状態になっていた町の人達に事のあらましを告げた。

 当然、突然の事態に皆戸惑い、絶望する。


「シェパー……ほ、本当にノール星が消滅してしまうのか?」


 老人が恐る恐るシェパーに尋ねる。いきなり今住んでいる惑星ほしが消滅すると言われても、にわかに信じられないのは当たり前である。

 シェパーも言い辛そうに俯きながら、「ああ」と頷いた。


「リーファの話によると、確実に一ヶ月後……ノール星は消滅しちまうらしい」


 再びザワザワと動揺が広がった。


「そんな……」

「い、否、でも……月猫族の言う事なんて信じられるのか?」

「そ、そうだ!月猫族の言う事なんて嘘に決まってる!」


 町民達の負の感情が宿った眼差しが、リーファに向けられる。シェパーが「おいおい」と人々を宥めるが、町の人達には届かない。

 しかし、理不尽な疑いを掛けられても、リーファは大して怒りもせず、フッと煽るように鼻で笑うだけだった。


「馬鹿か?そんなことをして、私に何のメリットが……」

「リーファは嘘なんてかないよ!!」


 リーファの言葉を遮って、シアが断言する。

 シアからの強い眼差しに、町の人々はそれぞれ口を噤んだ。だがしかし、嘘ではないということは、ノール星は消滅してしまうということである。

 町民の中には、その場に崩れ落ちる者も居た。


「……ノール星が……俺達の第二の故郷ほしが……」

「また何もかも失うのか……」


 絶望感に打ちひしがれる人々。

 シェパーもヘキムも掛ける言葉が見つからず、視線を地面に落とす。

 そして絞り出すように、シェパーが口を開いた。


「……ノール星を捨てて、新しい惑星ほしを探すか、それとも……ノール星と一緒に死ぬかを、今から全員で決める。皆、好きな方を選んでくれ」

「「「…………」」」


 やり切れない思いのまま、町民達は互いに顔を見合わせ合う。

 二度目だからと言って、自分達の住処を失うのは言い様のない程の辛さだ。かと言って、死んでしまった同種の仲間の分も生きていく義務が彼らにはある。生きる希望が見つからないからと言って、自ら死を選ぶ訳にはいかないのだ。


「ねぇ」


 とそこで、シアが声を上げた。

 シアは真っ直ぐリーファを見つめる。


「リーファ、本当にどうすることもできないの?ノール星が消滅しない方法は一つもないの?」

「……」


 シアの質問に、リーファが眉根を寄せる。


「……お前には無理だ」

「ってことは、方法はあるんだね!?」


 パァッと表情を明るくさせ、喰い気味に反応するシア。しかしリーファは「都合良く解釈するな」と溜め息を溢した。


「確かに惑星ほしが消滅せずに済む方法は一つだけある。だが、絶対にお前らには不可能だ」

「そんなのやってみないと、わからないよ!だから、ねっ!お願い、リーファ!その方法教えて!!」


 顔の前で両手を合わせ、シアが必死に頼み込む。リーファはもう一度、見せつけるように大きな溜め息を吐いた。


「……『リーチ星人の長が持っている宝玉を壊す』……そうすれば儀式は中断され、ノール星は消滅しない」


 リーファが答えれば、シアは思わずポカンと間抜けな表情を漏らした。


「……それだけ?」


 拍子抜けの言わんばかりにシアが尋ねる。リーファは「ああ」と頷いた後、「それだけだが」と話を続けた。


「どうやって宝玉を壊す?まず、お前らの中に一人でもリーチ星の場所を知っている奴がいるのか?宇宙船は?仮に辿り着いたとしても、リーチ星人はおよそ千人弱。しかも帝国軍の戦闘員と遜色ないレベルで闘える。長の強さは帝国軍幹部(クラス)だ。この星に居る奴ら全員で掛かったとしても、アッサリ返り討ちにされて終わり……惑星ほしが消滅するより先に殺されるのがオチだ」


 リーファの説明が終わる。

 ノール星の住民は五十人も居ない。シアとシェパーは闘えるとして、ヘキム含めた他の町民達がどれだけ戦闘力があるかわからないが、あったとしても、そもそも千人と五十人未満では話にもならないだろう。


「ならさ、コッソリ宝玉のところまで行って、ソッと隠れて壊せば良いんじゃない?」


 わざわざ正面突破する必要はない。「名案でしょ」と言いたげに、シアが胸を張れば、リーファは呆れたように「ほぅ」とジト目を向けた。


「ならお前は、この星よりも広大なリーチ星の何処に長が居て、どんな風に宝玉が管理されていて、そもそも宝玉がどんな見た目をしているのかすら、全て知っていると言う訳だな?言っておくが、私は知らないぞ」

「……あ、あはははは……」


 思わずシアが苦笑いを溢す。

 当然だが、リーチ星人の存在すら知らなかったシアが、そんなピンポイントな情報を持っている筈がない。

 笑って誤魔化すシアに、リーファは「だから言っただろ」と口を開いた。


「お前らには無理だ。諦めて、惑星ほしを捨てる準備でも進めておけ。宇宙船すら無いんだからな」

「でも……やっぱりだ。俺はノール星を捨てたくないよ!」


 シアが宣言する。それに対して、「はぁあ?」とリーファが今度こそ声を荒げた。


「馬鹿か?この宇宙の何処に、捨てたくて自分テメェ故郷ほし、捨てる奴が居るんだよ。捨てたくねぇなら、心中する!弱者に選べるのは、ソレだけだ!!」


 苛立ちの所為か、口調が荒くなるリーファ。負けじとシアも「だって」と語尾を強めて言い返す。


「俺達の故郷ほしだもん!!勝手に生贄にされるなんておかしいよ!!何で俺達が我慢しなくちゃいけないのさ!!」

「だから!お前らにはどうすることもできねぇから、諦めるしかないって言ってんだろ!?『弱い奴は理不尽な力に淘汰される』!それが宇宙の常識だ!」

「じゃあ、俺が宇宙の常識変える!!」

「ハァア!!?」


 リーファの瞳にありありと「何を馬鹿なことを言っているんだ」と映される。だがしかし、シアに前言撤回する気はない。


「リーファも兄ちゃんも、シェパーさんも、町の人達も……皆、自分達の故郷を失ったんでしょ?悲しくて、辛くて、寂しくて……でも一番はさ、怒ってるんじゃないの!?だって自分達の故郷ほしを滅ぼされちゃったんだよ!?そんなの全然当たり前のことじゃない!!俺はそんなの許せないよ!!助かる方法があるなら、どんだけ無茶でも試してみる!!代わりなんてない!俺の大切な故郷ほしだから!!」

「ッ!…………」


 リーファを見据える真剣なシアの眼差しに、リーファはユージュンの面影が重なって見えた。

 どんなことがあっても決して折れない強い意志を宿した眼は、否応なく人を惹きつける。どれ程無謀な事でも、「コイツなら」と思ってしまう不思議な力が確かにシアにはある。


 ……顔立ちも雰囲気も、性格すら全然似てないって言うのに、こういう所だけ父親ユージュンに似やがって……。


 心の中で悪態をきながら、リーファはシアから視線を逸らした。


「……ッどれだけ言っても、宇宙船が無いことには……」


 先程より遥かにキレ味が鈍りながらも、リーファが意見すれば、「否」とシェパーから声が上がった。


「宇宙船ならある!たった一船だけだけどな」


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