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スパルタ特訓の幕開け

急遽、ウニベルの口調変更しました。前回までの、リーファの回想で出てきたウニベルの口調も変えてます。

突然ですみません!

 

 辺り一面星々が光り輝いている宇宙の中心部。巨大な惑星があった。青く輝くその星に、変わった形の大きな宮殿が一つ。


「ウニベル様、ご報告したいことがございます」


 城の最上階。部屋の壁一面がガラス張りとなっている無機質な部屋で、フワフワと黄色味を帯びた雲に乗っている者が一人。大きな窓から外の景色を眺めている。

 頭に木の枝のような角が二本生えており、身体全体を覆う鱗は頬にまで掛かっている。腰辺りから生えた尻尾は太く長く、筋肉の塊であることが窺える。

 この者こそ、宇宙最凶と恐れ多い、ヴァルテン帝国皇帝ウニベルであった。

 ウニベルは部屋に入ってきた部下に一瞥をくれることもなく、「何だ?」と話の続きを催促する。


「はい。ほんの数十分程前、カナとハチュの乗っていた宇宙船の信号が、星間移動中に途絶えました。恐らく船が自爆したものと思われます」

「『自爆』?」


 ピクリとウニベルが反応を示す。


「宇宙船の自爆機能は、幹部クラス以上の人間しか知らない筈……カナ、ハチュとは聞き覚えのない名前だが、幹部クラスだったのか?」

「いえ、末端の戦闘員……それも資源調達を主な仕事としている、最下級戦闘員でございます」

「じゃあ、あまりにもその二人が使い物にならないから、帝国こっちから自爆信号を?」

「いえ、そのような命令は……。恐らく船の機材に不備があったのだろうと。調べさせますか?」


 部下の男が尋ねる。

 しばらくの沈黙の後、ウニベルは「ふむ」と漸く部下の方へと視線を向けた。


「星間移動中とは、何処と何処を移動していたんだ?」

「少々お待ちください。……えっと、Z地点の第三惑星……辺境の名も無き星からムート星への移動中とのことです」

「『辺境の名も無き星』……か……」


 ウニベルは少しだけ考え込むと、「では」と口を開いた。紺碧の瞳が怪しく光る。


「惑星トミーとその星の距離を後で報告しろ。それ以外の調査は良い。下がれ」

「……畏まりました」


 部下の男は深々と頭を下げると、言われた通り部屋から出ていく。

 そうして、「惑星トミー……」と一人復唱した。


 ……リーファが最期に侵略した星……か……。


 部下の男が内心呟く。

 そんなこと毛程も興味なく、部屋で一人、ウニベルは何処までも広がっている宇宙そらを眺めていた。


「リーファ……生きてるんだろ?わかってるぞ。お前は、俺を殺すまで、死ぬような女じゃないだろう?」


 独り言を漏らしながら、ウニベルはニヤリと口角を上げたのであった。



 *       *       *



 ノール星。

 リーファの歓迎パーティーをシアの家で夜通しやった翌朝。

 シアとリーファは、家の裏にある森の中に二人やって来ていた。


「……ったく、何で私がお前の面倒なんか……」


 ブツブツとリーファが文句を垂れ流す。

 これは昨夜のことだ。

 シアがリーファに「ジンシューの力のコントロールの仕方を教えてくれ」と頼み込んだのだ。当然最初は断っていたリーファも、シアが「リーファの復讐のお手伝いの為にも」としつこくお願いすれば、渋々頷いた。

 そうして早朝五時から朝食も食べず、二人で森に入った訳だが、早速リーファは安請け合いしてしまったことを後悔していた。

 覇気のないリーファの足取りに、シアは元気いっぱい「まあまあ」と声を掛ける。


「リーファもリハビリしたいって言ってたじゃん?俺の特訓見ながら、リハビリもできるし一石二鳥でしょ!」

「多少のメリットよりデメリットの方がデカいから、文句を言ってるんだ。馬鹿め」

「もう〜、すぐ人を馬鹿にする〜」

「安心しろ。馬鹿にするのはお前みたいな本当の馬鹿だけだ」

「つまり俺だけ特別扱いってこと!?」

「…………」


 キラキラと瞳を輝かせてポジティブな受け取り方をするシアに、思いきり貶したつもりだったリーファは呆れて言葉を失った。

 会話するのも億劫になり、特訓をする場所を探していた足も「もう良いだろ」と止める。

 少し開けた森の中央部だ。近くには川が流れており、まあまあの広さもある。特訓するには充分な環境だ。


「ここで特訓するの?」

「ああ。ジンシューの力のコントロールだろ?とりあえず、私に当ててみろ」


 あっさり言い放つリーファだが、シアは「えぇ!」と慌てて両手を前に突き出し、「否否」と手の平を振った。


「ホントに俺、力のコントロールできないんだって!間違えてリーファに当たっちゃったらどうすんのさ!!」

「だから『当てろ』と言ってるだろ。どうするもこうするもない」

「でもさ〜、できる限り加減するつもりだけどさぁ、最大出力で出ちゃったらホントにどうするの?大怪我じゃ済まないのは、リーファが一番よく知ってる筈じゃないの?」

「…………」


 中々「わかった」と頷かないシアに、リーファは「舐めやがって」と舌打ちを溢す。

 一つ溜め息を吐いた後、リーファは片腕をシアへと向けた。

 シアが首を傾げるのと、リーファが手の平にジンシューを生成し、シアへ向けて放ったのは同時だった。


「イッ!?」

「避けるな!」

「ッ!?」


 焦ってシアが避けるモーションをしようとするが、それをリーファが止める。ピタリと身体の動きを止めたシアだが、リーファの撃ったジンシューは既に目と鼻の先だ。

 咄嗟にシアが衝撃に備えて目を瞑る。

 だがしかし。


「……?」


 チラリと片目だけ恐る恐るシアが開ければ、シアの目の前でジンシューが急上昇した。ほぼ直角に上へと曲がったジンシューの軌道を、シアがポカンと見つめる。シアから遠ざかって行くジンシューは空中でクルリと進路を変えると、今度はリーファに向かって進んで行った。


「リーファ!……!?」


 シアがリーファへと視線を向ければ、リーファは片手の指でジンシューを操りながら、空いているもう片方の手でもう一つジンシューを生成していた。

 そして、飛んで来るジンシューに向かって、生成したばかりのジンシューを放つ。


「ッ!ウワッ!!」


 シアが両腕で顔を覆う。

 二つのジンシューが空中でぶつかり、大爆発を起こしたのだ。

 少しして土煙が収まると、リーファは前に伸ばしていた腕を下に下ろす。


「私に当てたくないなら、今見せたように当たる直前でジンシューの軌道を変えれば良い。細かい軌道調整のコントロール特訓もできて、丁度良いだろ」

「…………」


 淡々と告げるリーファだが、当のシアは珍しく宙を見上げたまま固まっていた。

 そして、しばらくするとフルフルと肩を震わせる。


「……す、すっごいリーファ!!何今の!?えっ、天才じゃん!!リーファ、すっごい!!どうやったの!?俺にもできる!?」


 興奮絶頂という感じで、一気に距離を詰めて来るシアだが、リーファは非常に冷めた様子で「馬鹿か」と一言吐き捨てた。


「確かに私は天才だが……これに関しては、今からお前もやるんだよ。というか、これくらいで一々驚くな。わかったら、さっさと撃ってこい」

「はい!リーファ先生!」


 ビシッとシアが敬礼する。

 漸く特訓の始まりだ。

 シアはバッと右手を前に突き出した。


「行っくよ〜!?」


 シアの合図にリーファは溜め息でもって応える。

 気にせずシアは右手にジンシューを生成し始めた。

 段々と光の粒子が手の平に集まっていき、球体へと変わっていく。


 ……確かに無駄な力が多いな。


 初めてシアがジンシューを作るところを見るリーファは、冷静にそれを観察する。

 ある程度大きくなったところで、シアはグッと足を踏ん張った。


「ハァッ!!」


 掛け声と共に放たれたジンシュー。

 凄まじいスピードでくうを切っていくジンシュー(ソレ)に、リーファは一瞬だけ目を見開いた。


 ……速いッ……。


 思わず身体が臨戦体勢に入ろうとしたリーファだが、ピタリとその動きを止める。

 ジンシューを追って、正面を向いていたリーファの瞳が段々横へと移っていった。

 気が付けば、リーファの隣(それも十メートル以上離れた地点)を通り過ぎて、ジンシューは森の何処かで爆発した。

 轟音の後、鳥達が一斉に羽ばたく音が森中に響き渡る。


「「………………」」


 しばしの沈黙。

 カクカクとロボット染みた動きでリーファがシアへと振り返れば、誤魔化すようにシアが「テヘッ」と可愛く舌を出した。

 ピキッとリーファの額に青筋が立つ。


「ふっざけるな!!何だ今のは!?お前、力のコントロールができないんじゃなかったのか!!?普通にノーコンじゃねぇか!!それでも月猫族か!!?」


 怒り心頭といった具合に怒鳴り散らすリーファだが、シアは「まあまあ」と両手を前に出す。


「だって、しょうがないじゃん?これ撃ったの、今日で三回目くらいだよ?コントロールなんて慣れてないよ」


 呑気に笑って告げるシアに、リーファは「はぁーーーー」と見せつけるように大きな溜め息を吐いた。

 地面に落とした視線を上へ戻せば、頬を引くつかせながら口角を上げる。しかしその目は一切笑っていなかった。


「……こんなお粗末な技しか撃てない奴が月猫族なんて認めない……まともにコントロールできるようになるまで、眠れると思うなよ!?」


 そう告げたリーファの目は本気だった。

 どうやら寝る間も惜しんで、シアの特訓に付き合ってくれるらしい。

 シアはキョトンと間抜けな表情かおを浮かべたかと思うと、パァッと満面の笑みを見せた。


「うん!!ご指導お願いします!!」


 ペコリとシアが頭を下げる。

 そうしてリーファのスパルタ特訓が幕を開けたのであった。

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