表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/69

第六十三話 アゼリア要塞攻防戦1

 王国歴188年5月15日

 この日、陽が昇る頃に、帝国軍は本陣を前に方陣を2つ構えて王国軍へ前進していた。


「敵は、まだ完全に陣が敷かれていない。これは、好機だ。

 全軍突撃の用意をせよ。」


「エルランド公爵閣下、まずヴァルテン伯爵との足並みを揃えてからにしなければ、陣形が崩れます。」


「何を言う!この好機に、遅れる方が悪いのだ。

 伝令でも、送っておけ。遅れて来ても、武功は、我が全て貰ってやるとな。」



「ヴァルテン伯爵閣下、エルランド公爵が先行しています。

 このままでは、我らとの陣形が崩れてしまいます。」


「むう。手柄に、釣られて出過ぎたことを。

 我らがいなければ、各個に攻撃されるだけだろうに、それすら分からぬのか。」


「敵が、まだ少ないとはいえ、公爵だけでは突破するのは難しいのではありませんか。」


「そうか。よし、我々は、このまま前進をする。決して、急がずにだ。

 敵が、エラルド公爵に食いついている所を、横から敵の本陣を落とせばよい。

 我ながら、良い案だと思うであろう。」


「本当に、よろしいのですか、エラルド公爵には

 少なからず、被害が出るものと思われます。」


「くどい!今の作戦で、前進を続けろ、突撃の合図は任せる。」


「はっ。了解しました。」



 ※※ ※

 そのころ、王国軍では、帝国軍が迫っている事が分かると急いで陣形を整え始めていた。


「リンデン将軍、ファナル将軍。我らも、陣形を組んで迎え撃ちましょう。」


「おお、マクミラン殿、ハンス殿も早かったな。

 兵がいても、指揮官が不在ではどうしようもなかったが、これで暫くは、持ちこたえられる。」


「して、まだ半数程度じゃ、攻勢まではいかないか。」


「こちらも、方陣を敷いて迎え撃ちましょう。

 まだ、作戦を実行に移すのは、全軍が揃ってからになりましょう。

 今は、敵を押しとどめ、被害を抑える事が肝心かと思われます。」


「総指揮は、私、ファナルがとる。

 副指揮官にマクミラン殿をお願いしたい。」


「承った。」


「それでは、左翼にリンデン将軍、右翼にハンス殿は、それぞれ1万5千の兵を持って迎え撃ってくれ。

 魔法師団の中距離攻撃の後、弓兵で攻撃をして、槍兵で先方を迎え撃ち騎兵で押し込む基本戦術で行くとしよう。」


「仕方ないか。今回は、守勢に徹する事しか出来ないか。」


「まあ、落ち着け。リヒタル子爵閣下とシュナイゼン伯爵閣下が揃えば、一気にたたき込むことも出来るだろう。」


「わぁーかってるって。言ってみただけだ。」


「ハンス殿の言も分かるがの、功を焦っては墓穴を掘るってな。」


「リンデン将軍にまで、言われるとわ。大体、子供じゃないんだから、もうちょっと、信用してくれてもいいんじゃねえか。」


「これくらいにして、行くとしようか。」


「承知した。」



 ※※ ※

 両陣営が向かい合うと、既に帝国軍は、突撃のラッパを鳴らしていた。


 王国軍の、魔法師の攻撃にも怯まず、弓兵の矢を受けながらも、突撃は止まらない。


 リンデン将軍の率いる左翼が先に、帝国軍と激突する。

 ハンスの率いる右翼の先頭が、帝国軍右翼のエルランド公爵を迎え撃つと、左翼のとの間に少しの隙間が出来る。

 ハンスは、部隊を分け、横から帝国軍の右翼先頭の横から攻撃を開始する。


「今だ、敵は足並みすら揃えられない素人だ。

 先に、敵、右翼の横っ腹から崩してしまえ!」


「馬鹿な!ハンスめ、目先に囚われおって、こちらの、陣形を崩して何になる。

 急ぎ、馬を出せ、陣形を崩すなと!

 間に合えばよいが、難しいか・・・。」



 ※※ ※

「エルランド公爵閣下、敵の左翼の一部がこちらへ攻撃を仕掛けています。」


「ふん。たかが、数千である。こちらの、数には及ぶまい。

 そのまま、突撃を続けろ!もろとも、蹴散らしてやる。」



「ヴァルテン伯爵閣下、敵の先頭が右翼のエルランド公爵へ向きを変えて、攻撃を仕掛けております。」


「馬鹿な奴らだ!我らは、このまま突撃を仕掛けるぞ。

 敵の前衛が手薄になったのだ、このまま突き進め!

 目指すは、敵本陣の司令官を打ち取るのだ。」



 ※※ ※

「くそう。敵の左翼が追いついてきやがった。

 一端、後退して、陣形を立て直すぞ!」



「マクミラン殿、本隊から、5千の兵でハンス殿に、立て直す時間を作ってきてやれ。

 今、崩れては、元も子もない。」


「すまぬ。ファナル将軍、少しの間ここは任せる。」



 ※※ ※

「エルランド公爵閣下、敵の左翼が下がっております。」


「よし。今だ、敵の前衛を突破しろ!

 ふん。今頃、追いつきおって、我らが先に本陣を落ちしてやるわ。」



「イノシシの様に、突撃しか出来ぬ公爵が、足止めをしているうちに、我らが、先に落とすのだ!」



 ※※ ※

 リンデン将軍は、押し込められている前衛に単騎で前に出ると、兵士たちを鼓舞する。


「我が身にやどりし業炎よ、剣に宿りて眼前の敵を焼き尽くせ。プロミネンス・エッジ。」


 先陣に立ち敵の進攻を抑え始める。



 マクミランは、増援として、前衛の守備の層を厚くするために、割り込む。


「ハンスに伝令を。こちらが、時間を作る。隊を立て直して陣を敷き直せ。」


「蒼炎よ、我が剣に宿りて、かの敵を灼き尽くせ。アズール・フレイム。」


「悪い。マクミラン。少し、先走ってしまった。」


「分かっているなら、さっさと、立て直せ!今は、攻勢に出るだけの余力は無いのだから。」


「ああ。直ぐ、戻る。」


 ハンスは、冷静さを取り戻した様子で、後方へ少し下がる。



 しかし、帝国軍は、思いのほか善戦していた。

 お互いに、本陣を落とそうと、進撃の手を止めない事と、兵士も互いに先を勝ち取ろうと奮戦した結果である。


 ハンスが、戻った時には、混戦状態から抜け出せなくなっている両軍に、少なからず被害が大きくなってきていた。



「このままでは、消耗戦ではないか。ここまで、帝国軍が押してくるとはな。

 数において、劣勢な我らが持ちこたえているのは、士気や練度もあるだろうが、指揮する者への信頼でもあるか。」



 ※※ ※

「エルランド公爵閣下、このままでは、敵陣の突破はおろか味方の損害が大きくなるだけでございます。

 ここは、口惜しい限りではありますが、兵を引き再度の攻撃に再編が必要と思われます。」


「くう。あの程度の、敵を蹴散らすことも出来ぬとわ。忌々しい。

 一端、陣へ帰還する。差配は任せる。」


「ヴァルテン伯爵閣下、公爵の軍が引き始めております。

 このままは、我らは孤立してしまいます。

 今は、兵を下げ公爵と再度の攻勢に向けて立て直すしかないかと。」


「勝手に、先走りよって何の成果も上げられぬまま引き下がるとわ。

 全軍に通達せよ、陣まで下がって再編するように。」



 この日、功を競い合った帝国軍の奮戦に、王国軍は想定より大きな被害をだした。

 また、帝国軍も、同じく数で押し切れず、混戦になったことで被害が大きなものとなった。


 帝国軍6万の内、死傷者8千7百名

 王国軍4万の内、死傷者1万3千6百名



「思いのほか、被害を出してしまったな。

 もう間もなく、シュナイゼン将軍とリヒタル子爵閣下も、到着されるが面目もたたぬ。」



 ※※ ※

「ヴァルテン伯爵よ、何をしておった。

 われの邪魔をしよって、其方のせいで、無駄な時間を消費しただけではないか。」


「エルランド公爵よ、私の軍の進軍を無視して先行した挙句に、敵の本陣にも届かぬ内に撤退とはな。

 勝手が、過ぎるのではないですか。」


「閣下、お二人の無念もまだ、挽回の機会はあります。

 敵の方にも、無視できない被害が出ております。また、我らは、5万強で攻勢に出れます。

 まだ、五分以上の戦いで勝利を。」


「仕方ないが、ここは明日は、共に王国軍を打倒して、陛下への手土産にするとしようではないか。」


「承知した。ここは、帝国の勝利に協力しようではないか。」



 ※※ ※

 ほぼ、同じころに、シュナイゼン将軍とリヒタル子爵が陣営に加わる。


「何やら、余り顔色が良いとは言えないようだが。

 どうしたのだ。話してくれ。」


「シュナイゼン将軍、リヒタル子爵閣下、まことに申し訳ありません。

 本日の戦で、お預かりした兵に、想定外の被害をだしてしまったこと。

 全ては、指揮した私の責任であります。」


「いやなに、戦場での事で、絶対はありえぬ。

 それよりも、良く本陣を守り抜いた。」


「シュナイゼン将軍には、明日の総指揮をとってもらいたい。

 宜しいな。」


「いや、ここは、ハイド伯爵とリヒタル子爵の戦場であるから、私は遠慮しておいた方が・・・。」


「いや、シュナイゼン将軍の方が、身分も上であろう。伯爵である其方が、士気を取って貰えれば、我々も安心して本陣を任せられる上に、敵に集中出来るものであろう。」


 少し、考え込むが、将軍らの頼みでもある。


「分かった。その役目、私の身命にかけて、務めさせていただく。

 では、明日の、作戦会議を後ほど説明する。」



いつも、読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ