第六十話 侯爵領へ8
私を、歓迎してくれたのか、豪華な晩餐会が開かれた。
何と、妹にキアリーナちゃんがいた。私の2歳下で可愛い人懐っこい子だ。
奥様は、キアラ夫人というが、お母様とあまり変わらないくらい若く見える。
確かに、伯爵家だけあって、威厳な感じさせる雰囲気だが、私の前にあるご飯には勝てない。
「セルシ伯父様、先ほどお話した物ですが、これをどうぞ。」
包みを、とって中身を確認すると
「これは、チーズか。」
「はい。途中の村で見つけたのです。
伯父様は、お酒をお飲みになるでしょう。チーズは、とても相性がいいと、それにパンに載せて焼くととても美味しいですし。」
途中の村に、一級品なんて無いし、特産品でいいもを選んだのだ。
「分かった。ありがたく頂くとしよう。」
翌朝は、鍛錬にエリアとイリスも一緒にセルシ伯父様を倒すために、作戦を練る。
エリアを1番にしてイリスを2番、最後に私が痛くない程度に、戦う。
「それでは、私たちは、どうなるんですか?
嫌ですよ、鍛錬ですのでアンジェ様も平等にお願いします。」
「そうですよ。私が、最後でいいじゃないですか。」
エリアもイリスも、最近の鍛錬では、お嬢様的な扱いをしなくなった。
親しくされるのは、嬉しいし何より楽しい。
だが、1番は嫌だ。
「私が、一番年下なんだから、最後でいいじゃない。
お姉様たちの、お手本を見てみたいなぁ。」
「こんな時だけ、お姉様あつかいはお止めください。」
「ここは,、じゃんけんで決めましょう。」
くっ、私の笑顔のお願いは、おじ様方にしか効かないのか。
「じゃんけん、ポンッ」
エリアが、飛んで喜ぶ。そこまでして、1番は嫌だったのか。私もだがな。
「じゃんけん、ポンッ」
今度は、イリスが、エリアの手を取って、喜んでいる。
なんだか、疎外感を感じるわね。
私が、言った順番の逆になるとわ。
「そろそろ、いいか。」
セルシ伯父様から、声がかかる。
もうしかたない。何時ものパターンね。やるしかない、やるからには、全力だ。
終われば、先にモーラとエルに癒して貰おう。
「はじめ!」エリアの声が響く。
私も、セルシ伯父様も、打ち合い、さばきながらも、前と違う。
なんだか、セルシ伯父様の一撃の重さが感じられないわ。
手加減をしている様には、感じられないのに。
これなら、十分に引き付けられるわ。
エリアとイリスも、少しは楽に戦えるでしょう。
「アンジェ様って、まだあそこまでは強くなかったわよね。」
「そうね、それと、イリス、ここではアンジェリカ様か、お嬢様を付けなさい。」
「そんな、馬鹿な!父上と互角だなんて。」
うーん、おかしいわ。やっぱり、私って、1年眠って強くなってるわ。
これが、 睡眠学習って言うのかしら?
(違うよ。勉強したことを、寝ている間に聴いて記憶に定着させられるって言われているから、力が、増すこととは関係ないよ。
じゃ、なんでこれだけ、受けきれるのよ。おかしいじゃない。
それを、言われてもなあ。)
「アンジェリカ、そろそろ終わりにしよう。
次があるし、今回は引き分けでいい。」
私って、やりましたわ。
頭も、無事に終わる事が出来たわ。
でも、疲れたあ~。持久力が違うのかしらね。
「モーラ、エル、タオルと飲み物をお願い。」
エルが、タオルを持って駆けてくる
「アンジェ、凄かったね。
私、ビックリしちゃった。」
「エル!走って持っていくなんて、ダメでしょ。
それと、アンジェリカお嬢様でしょ。まだまだね。」
「あっ、ごめんなさい。」
あの、モーラが指導してる。
立派になって、私は嬉しいわ。
「次に行こうか。」
アルベルト話していたセルシ伯父様が、続きを呼ぶ声が聞こえた。
そうよね。一息くらいはつくわよね。
ちょっと、回復までさせてしまった。
前とは違って、立て続きとはならなかったか。
仕方ない、イリス頑張って!
結局、イリスは奮戦したものの、押し切られてしまい惜敗に終わる。
でも、エリアは、押されつつも、粘ってくらいつき、引き分けとなった。
いや、十分すぎるくらい、強くなったよ。
マクミランとハンスに、鍛えられて良かったわ。
これで、セルシ伯父様のリクエストには答えたから、出発まではゆっくりできる。
「エル、明日は外に出かけてみない。」
「えー、いいのかなぁ。ミリーさんとモーラさんに聞いて見ないと分からないけど、行ってみたい。」
「でしょ。私も、一緒に頼みに行くから、大丈夫よきっと。」
私の、ここでの楽しみ方の最後は、城の外にでることだ。
兵士が多いのは、分かっていたけど、普通にお店もあったから見てみたい。
兵士の家族も一緒なのね。
街なのよ。要塞ってもっと、こう兵士だけでいつでも戦える準備がしている所と思ったけど、違ったのね。
「ミリー、お願いがあるのだけれど、いいかしら。」
「アンジェリカ様、何でしょうか。」
「明日は、エルと街に出かけたのだけどいいかしら。」
「そうですね。明後日には、出発しますので明日なら、ですがハイド伯爵様へお伝えしてからになります。
もし、伯爵様の御許しが出なかったら、ここでお過ごしください。」
「わかったわ。じゃ、伯父様に頑張って粘り強くお願いしてね。」
「あと、念のため、エリアとイリスにも護衛を伝えておきます。」
あっさりと、お許しが出た。
エリアだけが、用事があるとお留守番なのが残念だったが、ミリーとモーラも皆で城下町にお出かけだ。
「それで、あの力は未だに分からないのか。」
「はい。目覚められた、アンジェリカ様は以前より全ての力が増しています。
お嬢様本人は、自覚されていないようですが。」
「そうか、それでウィルビス侯爵領へ移すのか。
あと1年は、何事もなく、過ごさせてやらないとな。」
「リヒタル子爵も、今回の戦いで何か起こってからではと、おっしゃられていました。」
「私の方からも、出来るだけの事は力になろう。
何かあったら、言ってくれ。」
「我がリヒタル子爵に代わりまして、閣下に感謝申し上げます。」
楽しかった~。
やっぱり、旅はいいものだわ。
自分の目で見る世界は、こんなにも綺麗なのね。
「エル、どうだった。」
「初めて、こんなに大きな街に来たから、歩いているだけでも楽しかったよ。
アンジェは、どうだったの。」
「うーん。楽しかったのは同じだけど。」
「だけど?」
「大叔父様に渡す、お土産が中々見つからかったわ。
これで、良かったのかしら。」
「大丈夫ですよ。侯爵様は、アンジェリカお嬢様には甘くなられますから。」
「アンジェ様は、食べてばっかりだったから、お土産も食べ物ばかり見ていましたね。」
「私の見て来た嗜好品も、ここにはありましたから、商人の出入りも多いのでしょう。」
モーラの見るところは、私とはちょっと違うわね。
嗜好品なんて、良く分からないし。
お酒じゃないのって、思っていたし、高いお酒は、お見慣れているだろうから、私には食べ物を見ていたのだ。
確かに、味見もしたけど、それは味を確かめるためであって、決して食べてみたいなどという、不純なものではない。はずだ。
(自分で、はずだなんて、ありえんな。単に、食べたかっただけだろうに。まあ、おいしかったけど。
文句なの、褒めてるの、どっちなのよ。)
※ ※ ※
帝国のオイコン要塞では、エストラン王国攻略の準備が整い進軍を始める。
追い詰めれていた、両将の動きは悪く、お互いにこれまでの敗戦の責任を押し付けあっていた。
エラルド公爵とヴァルテン伯爵は仕方なく、進軍を開始した。
「これまで、私がいたから、この要塞に王国は攻める事も出来なかったのだ。」
「公爵、それは違います。
私が、巡回を兼ねて国境を強化していたからこそ、奴らは攻めあぐねていたのです。」
この一年、伸ばしに伸ばして、ようやく出陣する二人の司令官は、要塞内では、付き合いも良かったが打って出ることが無く、これまでの、功績の奪い合いをしていた。
しかし、要塞の兵士をほぼ全軍出撃させたことで、総勢6万の軍全を率いてアゼリア要塞に向かっていた。
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