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第五十九話 侯爵領へ7

 さて、目の前で構えている、アルベルト様はキラキラはしていないが、真面目そうな青年前の少年だ。

 まあ、私が言うのも何だが、貴族らしい貴族だ。

 いい意味での、威張るわけでもなく。太っているわけでもない。

 ただ、私には、嫉妬でもしているのか、敵意を向けて来る。

 反抗期の子供か。

 ここは、年長者として、いなしてあげよう。

(年下なのは、お前だけどな。

 いいのよ、貴方たちの経験は私の中にあるのよ。お子様には、お灸を添えてやらないとね。

 お前が、上から目線なのはいいのかよ。

 あら、そういえば、そうかもね。まあ、あとで考えましょ。)


「アンジェリカ嬢、訓練とはいえ怪我をすることは良くあることだ。

 それでも、私の相手をするのか?」


「するも、しないも、私が望んだことではありませんもの。

 アルベルト様、それはセルシ伯父様に言って下さいな。」


「私は、どのような状況でも、手を抜いたりはしない。」


「あら、それは、私もですわ。」


「では、そろそろ始めてくれ。

 時間がかかると、私の番まで回ってこないだろう。」



 対峙する二人、先に仕掛けて来たのは、アルベルトだった。


 まあ、剣さばきは早いんじゃない。

 一撃の重さは無いけれど、これは思ったより手ごたえは無いわね。

 いや待て待て、ここは、きゃとか言ってか弱い女の子を演じた方が良いのでわ。

 アルベルト様も、手を抜くどころか、手合わせを止めてくれるかもしれないわ。

 ひょっとしたら、セルシ伯父様にも、止めるように言って貰えるかもしれないし。


 思いついたら、即実行ね。

 私は、アルベルト様の剣撃に合わせて、自分の剣を落とし倒れ込んでみた。


「きゃ

 流石ですわ、アルベルト様。私では、まだお相手するには実力不足のようですわ。」


 私は、立ち上がり、ポンポンと服の埃をはたいていると。


「其方は、私を馬鹿にしているのか!」


「アルベルト様、何を仰っているのですか?

 あの、一撃は素晴らしかったですわ。」


「では、その一撃を受けて何故、直ぐに立ち上がれるのだ。

 よもや、倒れた振りをして、俺を騙そうとしたんじゃないのか!」


 しまったわ。何で、こんなことが分からなかったのかしら。

 私のバカバカ。 これでは、演技でも何もないじゃない。

 ああ、また、逃げられないわね。


「そのようなことは、ありませんわ。」


「アンジェリカよ、其方、以前の手合わせの時より弱くなっているじゃないか。

 流石に、私の目は騙されんぞ。」


 キター。ふふふ、私がその言葉に怯むとでも思っているのかしら。

 次の手は、もう考えているのよ。


「セルシ伯父様は、私が1年近くも眠っていたことをご存じでしょう。

 目覚めたばかりの、私では激しい鍛錬や手合わせなど、まだ耐えられる体ではありませんの。」

 危ない、危ない、でもこれで、危機は去ったはずだわ。

 伯父様たちも、こんな私に無理強いはしないはず。

 私は、俯きながら、顔を逸らす。 か弱さを強調するためでもあるけど、にやけた顔が出た時にバレない様に、念には念を入れておく必要がるのよ。


「ふん、その程度か。父上から聞いていた程の事も無かったようだな。

 過大評価も過ぎれば、敵を見誤る。」


 アルベルト様は、期待通りに喚いているわ。

 くっくっく、私の策に溺れるがいい。

(やばっ、ノブの事じゃないからね。

 何で、ここで俺を引き合いに出すの?泣いちゃうよ。メンタル強くないんだから。)


「アンジェリカ、もうよい。」

 きたー。この言葉を待っていたわ。


「手紙や皆からも聞いている。眠っていたのに、力は十分ついているそうじゃないか。

 儂の、聞き間違いか、手紙の内容が間違っているのか?さて、どうなのだ。」


 これは、脅迫じゃないの!

 はい、その通りです。って言ったら、アルベルト様は怒り出す。

 手紙は、間違いなんです。なんて言ったら、セルシ伯父様が怒り出す。

 どっちにしても、怒りだすわ。より、被害が小さいのわ。

 んーんー。これだわ。


「セルシ伯父様には、申し訳ない事でしたのね。

 アルベルト様は、ご子息で剣にも自信を持っておられるようでしたから、ここは半分も力を出さない方が良いかとおもいまして。」


 ん 何やら、アルベルト様の、顔がみるみる赤くなってきている。

 どうしたのかしら。急な風邪で、発熱でもしたのだったら、急いで休ませないといけないわ。


「アルベルト様、顔色が悪いようですわ。

 早く、休まれた方が・・ 」


 おおお、何やら、髪まで逆立つように沸騰している。

 これは、危ない。急いで熱を下げないと、死んでしますわ。

 あれっ、セルシ伯父様は、呆れた顔をしているのだけれど、心配じゃないのかしら。


「アンジェリカ!」

 私の声を遮るように、アルベルト様の怒声が響く。


「お前は、私を騙していた上に、実力の半分だと!

 この上ない、侮辱を受けたのは、初めてだ。」


 初めてが、私なんて、良いことを言うじゃない。

(その初めてじゃないぞー。それに、褒められてもいないし。

 そうなの、あんなに顔を赤くしちゃって。恥ずかしがりやさんなのよ。)


「アルベルト様、やはり早く休まれた方が・・・。」

 これだけ、気遣っているんだから、今日は、中止になってもおかしくはないわね。


「アンジェリカよ、お前に演技の才は無いようだな。

 仕切り直して、行くぞ。」


 そんな、私の名演技を見破るとわ。

 セルシ伯父様は、ただ者じゃ無いわね。

 もう一押ししたら、気が変わったりして。むふふ。


「そういえば、セルシ伯父様に、お渡ししたい物があったのですわ。

 急な、申し出で、うっかり忘れてしまっていたようで、申し訳ありません。」


「そうか、それは、楽しみだ。

 これが終わったら、晩餐にでも頂こうか。」


 あれ、私の欲しかった言葉じゃない。


「さあ、剣を取れ。今度は、全力でかかってこい。

 手を抜くことは、俺が許さないからな。」


 くっ、これまでかっ。

(もう一つ手があるぞ。

 なになに。もう、ノブったら、勿体ぶって何を隠していたのよ。

 仕方ない、アルベルトと出来るだけ長く、打ち合うだけでいいんじゃない。

 まあ、それはい考えね。セルシ伯父様とは、明日に、なる景色が見える。)


「いつでも、いいわ。

 かまってあげる。」


 私は、アルベルトの剣を下がらずに、受け流したまに、切り返して一撃を入れる。

 なんだか、ホントに前より遅く感じるのよね。

 力も、入りやすいし、絶好調な感じだ。


 何か、アルベルトが叫んでいる。


「うおりゃ はぁー 」


 力が入り過ぎているのよ。

 だから、重みが無い、軽い剣。

 少し早い、かもしれない程度に感じる。

(アンジェ アンジェ!

 え、なに。どうしたの。

 なに、じゃないだろ。前だ前を見ろ。

 こいつ、分かってないのか?)


「なんだか、うるさいわね。もう、ムカついてきた。」


 カーン、剣を落とした音がする。

 私は、あっと思ったときには、しまった。

 やってしまったわ。それに、何故か前に来てるわ。

 アルベルト様は、壁が近い所まで、下がっていたのね。なんで?

(やっぱり、気づいていなかったのか?

 そうね、ノブに気づいたらもう、ここだったし、やたらうるさいと言うか、罵声まで浴びせられていた気がするのよ。それで、つい・・)


「そこまで、二人とも来なさい。」

 セルシ伯父様が、終わりの声をかけて来た。


「アルベルトよ、少しは理解できたか。

 お前は、同年代の中では腕が立つ方だがな。

 アンジェリカは、別だ。」


「しかし、父上・・・」

 アルベルト様は、何かを言いかけたけど、止めたの?

 まあ、私も筋肉もエリアにイリスも腕を上げた分、大変なんだけど。


「アルベルト。

 アンジェリカは、毎日の様に、将軍やそれに劣らぬ者と鍛錬をして、実際に刺客を実戦で討ち取っている。

 これは、才だけで出来る事じゃない。先程も、攻撃をしていたのに、さがるほどに押していくことなぞ、並みの腕で出来る事じゃない。

 慢心するな、これからも鍛錬を欠かさないように努力しろ。」


「分かりました、父上。」

 少し、元気がなくなった様な、アルベルトの返事を聞いて、私って実は凄いのかしら♪


「よし、アンジェリカ。今日、最後は私とだ。」


 来たよ、来たよ。まだ、時間はこないの?


「ハイド伯爵様、そろそろ、お支度をお願いします。

 アンジェリカお嬢様は、時間もかかりますので。」


 キター。待ってました。ミリーに、マジ感謝。

 ご飯が、美味しく食べられるくらいの疲れで良かったわ。


「うーむ、仕方がないか。

 アンジェリカよ、明日は逃がさんからな。」


 よし、今日は、乗り切ったわ。明日はエリアとイリスに任せて、最後に頑張った所を見せればいいわよね。

 うんふふーん。鼻歌を歌いながら、今日のご飯は何かしら。


「ありがとうね、ミリー。」



いつも、読んでいただきありがとうございます。

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