第五十八話 侯爵領へ6
私の家が小さ過ぎて、これが家なの。
見上げるお城と塔に、これが欲しいとつい思ってしまう。
お城の門を潜って、さらに馬車は進む。
ようやく、お城の門?ドア?なんでも大きければいいわけじゃないと思ってしまう。
エルも、見上げながら驚いている。
ま まあ、バルムに比べて、ここは大きいから仕方ないけどね。
悔しいわけじゃないわ。ちっとも、これっぽちも思ってないわ。
ギ―と音を立てながら、門が開く。
「ねえ、あそこに小さいドアもあるけどいいのかしら?」
「あれは、ウィケット・ゲートっていって、日常で人ひとりが通る分の物ですよ。
まあ、門とでも呼んでいただいていいですよ。
私たちは、ここで少し休養して行きますから、大きい方の門じゃないと、荷運びも不便ですから、特別です。」
「へー、まあ、何人もかけて開けたり閉めたりしてちゃ、大変よね。
って、こここ ここに、少しお泊りなの!」
「ええ、補給と移動の疲れをここで取らないと、小さい町か村、野営しかありませんから。」
「あああ あた 頭は大丈夫かしら。」
「もう、何もないですよ。バルムで、お手合わせした時と違うのですよ。」
「そ そう、なら良かったわ。」
ミリーと少し話していると、
「どうぞこちらへ。」
使用人の一人が声かけて来た。
私と、ミリー―にエリアが大広間へ通される。
残念である。少し、いや凄く、残念な気分だ。
ノブの記憶の中にある、侍女たちが並んで挨拶を所だと思ったのに、その期待は裏切られた。
通り過ぎる使用人たちも、頭を下げるくらいで、黙々と仕事をしている。
うちとは違い過ぎると感じながら、セルシ伯父様を待つ。
「ちょっと、凄く違和感があるんだけど。
余所は、みんなこんな感じなの?」
「そうですね。殆どは、こんな感じですよ。アンジェ様のお家が変わっておられるのですよ。
練習したように、ちゃんと挨拶をですよ。」
少し待つと、ドアが開く。
椅子に腰を掛ける、セルシ伯父様から
「よく来てくれた、愛しい(従兄弟)娘よ。
さあ、遠慮なくくつろぎなさい。」
きたわね、私のターンね。
「ハイド伯爵様、お久しぶりでございます。リヒタル領主の娘、アンジェリカでございます。」
きまったわ。
「話は聞いている、1年近くも眠っておったというのに、ちゃんと挨拶が出来る様になったか。まだ、小さかったのに、背も伸びたんじゃないのか。」
「セルシ伯父様、それはあんまりですわ。
日進月歩って、言葉を知っているかしら?これでも、日々、勉学も学んでいましたに。」
「いやいや、アンジェは殆ど寝てただろ。何が進歩するんだ。」
ニマニマとおちょくってくる伯父様に、ムカッとしてきた。
「好きで寝てだんじゃないのに、起きたら今度は、大叔父様の所へ行きなさいと言われるし。何が何だか、教えて欲しいですわ。」
思わず立ち上がって、セルシ伯父様に立ち寄ると、ミリーが横から裾を引っ張る。
「あっ」不覚にも、足がもつれて転ぶ私。
恥ずかしい。顔が熱くなるのが分かる。
何をするのミリーと立ち上がると、両手で顔を隠しているミリーと右手を額に当てているエリスが目に入る。
やってしまったのは、私なのかしら?
「変わらないじゃないか、アンジェよ。
まあ、よい。長旅で、体もなまっているだろう。一つ、鍛錬に付き合うがよい。」
無理です。無理ですよ。無理なんです。三度も無理って心の中で唱えてみました。
ミリーっ出番よ。無いって言ってたわよね。
「ア ンジェ お嬢さ ま、お荷物の方は私にお任せくだ さい。」
あ~ん、笑ってんの、その震えた声は何よ。
「ミリー!無いって、言ったよねえ。ねえ。そんな事より、付き合ってよ。
あ あたまを守る兜なんてあったかしら。」
今度は、エリアに、目で合図を送ってみる。
「アンジェお嬢様、わたしは、隊をまとめなければなりませんので、ここはハイド伯爵様にご指南頂くのも良いかと。」
そうじゃないだろ。もう、私の言いたい事を代弁して無くなる方へお願いしたい。
「イリスがいるじゃないの。エリアまでいなくても大丈夫よ。」
私の、渾身の一撃を遮るように、セルシ伯父様から
「アンジェ、そんなに我儘を言って困らせてはいけないよ。
今なら、紹介しようと思っていた、息子のアルベルトもいるはずだ。」
くっ、ここまでか。
「エリア嬢も、明日には時間も取れるだろう。
イリス嬢も入れて、久しぶりに3人と鍛錬の時間を取ろう。」
よし、やったわ。
にこやかなセルシ伯父様に、笑顔で返す。
「エリア、待ってるからね。
と、その前に、私の無事を祈っておいてね。」
そう、今日を乗り切らなければ明日は無いのだ。
エリアの顔色が悪くなるのを見て、私の心配をしなさいよと思った。
なんで、こうも力試しが好きなのだろう?
一族の習慣?決まりでもあるの?
「それでは、準備してまいります。」
「分かった。では、みなも残りの仕事を終わらせてゆっくりとするがいい。
エリア嬢は、イリス嬢へ明日の事を伝えておいてくれ。」
「ハイド伯爵様、かしこまりました。」
エリアも、観念したようだ。
わっははは、私を贄にしたせいだわ。イリスには、可哀そうなことをしたけど、困ったときの友こそ、真の友って言うじゃない、だから良いわよね。
(いや、良くないよ。勝手に、巻き込まれて迷惑だろ。
いいのよ、ノブでいう、旅は道連れなんとやらよ。
そうなのかねえ。
それに、アルベルトだって、どんな方なのかしら。)
私は、着替えを済ませると、訓練場へ向かう。
お供は、ここの侍女さんに案内を頼んで、一人だけだよ。
訓練場に着くと、広いの一言で完結する。
案内を頼んだ、侍女にお礼を言ったら、逆に驚かれた。なぜ?
既に待っている、セルシ伯父様の横に、青年には少し早い、青髪ですらっとした男の子がいる。
結構な、イケメンで、私のお婿候補に目に焼き付ける様に凝視した。
それにしても、意外に普通だわ。筋肉の子は筋肉にはならないのね。
「セルシ伯父様、お待たせいたしましたわ。」
「いや、問題ない。
話していた、私の息子でアルベルトだ。」
「アルベルト様、リヒタル領主の娘、アンジェリカでございます。」
「私は、今更、不要だろうが、アルベルトだ。
話しには聞いていたが、アンジェリカ嬢の髪に瞳は目を引くようだ。
剣の腕前も、父上から聞いてはいるが、私とも手合わせをしよう。」
やはりしても、親子ね、か弱い私に勝負を挑むなんてね。
(誰が、か弱いんだか。まあ、少し上だろうが、ここの実力を見れる機会だし、良かったじゃないか。いつも、エリアとイリスの他は、筋肉と細筋肉だったろ。
そうね、年の近い男の子とできる機会は無かったし、ちょっと楽しみだわ。)
「さあ、始めようか。
アンジェ、どの程度、腕を上げたか見てやろう。」
おいおい、いきなりセルシ伯父様とやったら、確実にアルベルトとの手合わせは出来ないわよ。
「セルシ伯父様、その先ずは、アルベルト様にお願いしたいのですけれど。」
頼む、アル様―、私の意を読んで欲しい。
(誰だよ、アルって。失礼な奴だ。
いいじゃない、聞かれるわけでもないし。)
「そうかでは、アルベルトに先を譲ってやろう。
手を抜いていると、足をすくわれるくらいに、実力はあるからな。」
それなりに、自尊心あるのだろう、年下の小娘を見つめるような、上から目線で嫌な感じだわ。
ここは、いつもエリアとイリスに筋肉たちに鍛えられた、実力を見せてあげるわ。
私はね、もう負けないと決めているのよ。
筋肉たちには、まだ勝てないけど、初見で侮るようなお方には、分からせてやる必要があるわね。
ノーマルなスタイルだが、剣と楯の組み合わせか。
基本に、忠実に鍛錬してきたのね、どの程度、フェイントを混ぜて来るのかしら。
(なに、上から目線で考えてる。さっき、嫌なん)感じとか言ってたじゃないか。自分が侮ってどうするよ。
あれ、そんなこと言ったかしら?でも、、やるからには、全力行くはよ。
ああ、最初から飛ばしていけ。)
わたしは、こうやって、旅でカチコチな体に鞭を打って手合わせをすることになった。
早く、お茶をするために、少し眠る為に、私は全力でいくわ。
いつも、読んでいただきありがとうございます。




