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第五十七話 侯爵領へ5

 翌朝の私は、寝不足で体が重い。

 別に、体重が増えたわけじゃないの。

 昨夜は、散々でやれ護衛対象が前に出ようとは何事か。

 とか、もっと自分の立場を理解しなさいだとか。

 途中からは、もう殆ど覚えていないわ。

 私は、新たに耳から聞こえてくる事を、記憶することなく吐き出す術を会得したのよ。


 それから、出発まで、お店を見て回りたいとエリアに相談する。

 エリアは、今度は護衛を付けて了承した。

 まだ、陽が昇る明るいうちなのがよかったのかしら。


「アンジェお嬢様、何か必要な物があれば、こちらで準備いたしますが?」


「違うのよ、セルシ叔父様へお土産を渡そうと思ってね。」


「それでしたら、もう準備していますが。」


「エリアは、分かってないのね。

 男って、孫や姪には、甘々なのよ。

 だから、ここのバルムのお土産をさりげなく渡すことで、私の好感度は爆上がりよ。」


「誰から、その様なことをお聞きになれたのですか?」


「何か、間違ったことを言ったのかしら?

 それに、これは極秘事項なのよ。

 簡単には、教えられないわ。」


「そうですか、昨夜は私たちも言い過ぎたと思い。

 先ほどそこで、ビスケットを買って来たのですが、お嬢様はいらないということですね。」


 ずるい、卑怯な手を。

 エリアのくせに、私はなんてかわいそうなのでしょう。

「ぐすっ」ちら・・・。


「もうその手には、乗りませんよ。

 早く、楽になりなさい。」


「あー、いやいや、そんなことで私が裏切るとでも、まだまだ甘いわね!」


「別にかまいませんわ。

 あーん。あら美味しいわ。サクッとして甘すぎない感じで、私は好きな味ですね。」


 くっ、おのれ、これみよがしに、私の目の前で食べるとわ。


「もう一枚っと。サクッ、疲れた時は、甘いものが良いですわ。

 あらあら、もうこんなに無くなってしまったわ。」


『じゅるじゅる』ああ、よだれが止まらないなんて、はしたないわ。

 でもお菓子は別腹よ、お菓子に罪は無いのよ。


「エリア、これは内緒よ。モーラに教えて貰ったのよ。

 ほら、モーラって元々が商家の出だから色々と知っているのよ。

 ごめんね、モーラ。このビスケットがいけないの。

 それを持って来た、エリアもいけないの・・あっ」


 今回のエリアは、仕方ない言わんばかりのため息を付くと残りのビスケットを手渡して行ってしまった。

 私は、ごめんの代わりに少しだけモーラに渡す分を取り分けて、一つ食べる。


「ああ、この右手がいうことを聞かないわ。」

 なんて、取り分けた分のビスケットに手を付けようか葛藤している所に、イリスとミリーがやって来た。


「何を、なさっているんです。さあ、行きますよ。

 あまり、時間も無いので買い物を済ませたら、出発ですからね。」


「よし、やったわ。」

 結局、残りのビスケットまで食べる。

(あーあ、ひで~やつだな。

 いいのよ、ちゃんと買って渡せばいいのよ。残り物よりたくさん食べれるのよ。

 そうかー、俺なら自分の分を、少しでも分けてくれる方が、ぐっと心に響くけど。

 もう食べたんだから、考えても仕方ないじゃない。)


 そこは、村であった。特に目新しいものは無く、教会を中心に家が広がる。

 護衛を連れて行くには、仰々しくて人の視線が集まる。

 私は、セルシ叔父様の御土産とモーラのビスケット等などを買って戻った。


 ようやく、出発の準備が出来た。

 100人もの盗賊たちを収容する場所は勿論ないので、野晒しで4つに分けられて縛られている。


 私たちは、 アゼリア要塞へ向けて出発した。

 何時もなら、皆とワイワイ話でもするところだが、私は、眠けに耐えられそうになかった。

 段々と遠くなる話声、気が付くとハイド伯爵領で最初の村についていた。


 今日も、ベッドで寝られると喜んだものの、眠れるはずもなく、ゴロゴロと寝返りをしてみる。

「無理だわ。どうしたものかしら、これじゃ明日の夜も眠れなくなるじゃないの。」

(ハーブティが、体も温まるしリラックス効果もあるって聞いた事があるけど。

 よし、頼んてこようっと。)


「ミリー、お願いがあるの。」

 まだ、ミリーとモーラは片付けやら、バタバタしていた所に、私は声をかけた。

 エルは、お子様なので、休ませているらしい。


「眠れないの。こういう時は、紅茶を飲むといいのでしょ。」


「カモミールの事ですね。

 でも、アンジェ様ならホットミルクの方が良いと思います。

 直ぐ、用意しますから、おかけになって待っててください。」


 なんか、子ども扱いをされている様に感じるわね。

 コトコトコト、ミルクの温まる匂いがしてきたその時。

「あっ、忘れてたわ。

 ちょっと待っててね、」

 私は、直ぐに部屋に戻ると、袋を持って戻った。


「モーラ、これ。渡すの遅くなったわ。」


「どうしたんですか、アンジェ様、これは。」


「ビスケットよ。ミリーから貰って食べたら、美味しかったから、前村で買っておいたの。

 モーラも食べてみて。」


「ありがとうございます。大切にしますね。」

 モーラは、嬉しそうに笑ってくれた。

 ミリーも、私たちのやり取りをみて、微笑んでくれた。


「なるべく、早く食べるのよ。食べ物なんだからね。」


「アンジェ様、出来ましたよ。」


「ミルクの匂い、がホッとさせる。

 これ、美味しいわ。」


「少し甘くなるように、はちみつを入れてますから。」


 ホッとする時間が、過ぎていく。

 この時間が、ずっと続けばいいのに・・。


「二人とも、ありがとう。おやすみなさい。」


 体が、温まって少し眠れるような気がしてきた。

 私は、エルの部屋に入ると、寝ているエルの横に眠りについた。



 翌朝、エルの声で目が覚める。

「ななな アンジェが、何でここで寝ているのよ。」


「もう、うるさいわね。後10分・・・。」


「だめだめ、アンジェ、早く起きてよ。

 私は、朝の支度があるのよ。

 ミリーさんが起こしに来た時に、ここにいたら困るわ。」


「もう、仕方ないわね。私も、着替えて下りようかしら。」


 着替えるエルは

「どうして、ここで寝ていたのよ?」


「いやー、夜眠れなくて、エルなら温かくて眠れるかなーって。」


「はっ。」突然、服の下を確認するエルがホッとする。


「大丈夫みたいね。」


「何言ってるのよ。私は、女でしょ。何を、考えているんだか。

 まあ、性別なんてと思ったり・・でも、まだ恋が何なのか分からないのよね。」


「その考えは、理解できないわ。ちょっと引くわよ。」



 朝を告げる鳥の声に、薫風が重なる。新緑が揺れる外の木々からは生命の匂いが包み込む。

 ご飯も、たくさん食べたし、早く伯父様に会いに行かないとね。


 とまあ、思っていました。

 でも、今度はウルフだって。集団で襲って来るがボスを倒すと逃げていくらしい。

 で、今は、捕まえたウルフの血抜きをしている。

 少しでも、進みたいと言っていたのに、直ぐに躓くとわ。

 だれぞ、この度に呪われているんじゃないの。

 私の、気持ちを余所に、少しずつ前に進む。


 そのあとは、ちょっとした魔物とか獣とか少し出ただけで、順調・・に進んだ。

 まあ、この街道で多くの魔獣なんて出てきたら人の行き来なんて出来ないでしょうから。

 傭兵たちが、定期的に狩りに出ていると、聞いたから大丈夫でしょう。



 出発してから、13日目にして、ようやくアゼリア要塞が見えて来た。

 今日中には、着くだろうと、ヘラルド(先触れ)をだした。



「ほほー。大きいわ。

 なんか、丸いわよ。守りにくそうだけど、何でなのかしら。」


 騎乗して、横にいたイリスが窓際にいたアンジェに説明する。

「これは、敵からの死角を無くすために中央の塔から見える様にしています。

 魔法や弓矢による遠距離攻撃で守備に適していると聞いています。」

(大砲は、無いんだな。

 あの鉄の球を飛ばすやつ?

 あれが利用されるようになってから、要塞の形は星形が主流になったんだよ。大砲の設置場所がいるからな。

 まあ、いいじゃないの、丸くても問題ないなら。)


「この城門も、大きいわ。

 要塞って兵士しかいないと思っていたけど、違うのね。」


 エリアが、門兵に声をかけると、そのまま馬車は中に入っていく。

 横で、入城待ちに時間を取られなかったのは、良かったとホッとする。


 やっと、セルシ伯父様に会えるわね。

 これで、やっと半分よ。

 私も、戦えればもっと、旅も楽しくなるのに。

 あれも駄目、これも駄目って、過保護すぎるのよね。

 折角の剣も、お飾りになっては不機嫌になるに違いないわ。


 中央の塔?ってお城じゃない。



 初めての旅、初めての要塞、そして中央の城にビックリし興奮収まらないアンジェであった。


いつも、読んでいただきありがとうございます。

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