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第五十六話 侯爵領へ4

 村に着くと、私はすることがないので、ミリーに声をかけた。

 そう、お出かけである。

 伯爵領の境にある為か、そこそこに品ぞろえの様に感じる。

 なんたって、活気があるが、ここホントに村かっ。


「それでね。 ちょっと、お出かけをしたいのだけど。

 退屈しのぎに、付き合ってよ。」


「今日は、ここで宿泊ですから、色々と調整がいるのですよ。

 アンジェ様も、お嬢様らしく、大人しくなさっていて下さい。」


 あえなく、ミリーに撃沈された私は、今度はモーラとエルに声をかけた。


「ねえねえ、少しだけ、散策をしたいのだけど、付き合って貰えないかしら。

 ミリーは、忙しそうで。」


「私は、無理でございます。

 エルも、仕事を覚える機会ですから、ダメでございます。

 お嬢様、お部屋を先に用意いたしますので、ゆっくりしてくださいませ。」


「そうよ、アンジェ。

 バルムじゃないんだから、一人で出かけようなんてしたら駄目よ。」


 とうとう、エルにまでダメ出しをされて、シュンとなる。

 しかし、エルはまだ慣れていないことが分かった。

 すかさず、モーラに注意を受けているが、お嬢様ねぇ。

(背筋が、ムズムズしてたまらないんだが。

 虫にでも、刺されたの?

 おまえが、お嬢様なんて呼ばれるからだろ!

 分かっていた事でしょ。 バルムを出れば、変わるって言われていたでしょ。

 よく、切り替えられるな。 ちょっと、感心したよ。)


 しかし、良く50人も受け入れられる宿があるのね。

 賊は、馬小屋でいいとしても、村で対応できることに感心するわ。

 と、思ったところで、やはり、

「危険が無いか、見て回るのは必要よね。」

 こっそり、でれば見つからないと思うのよ。


 私は、宿の入口を確認するが、エリアと兵が数人いて、すり抜けられそうになかった。

 仕方なく、裏の厨房から抜け出そうと向かった。

 ここなら、ちょっとごめんなさいねで、行けると思ったのがまさかである。


「お嬢様、こんな所に何の用でございましょう。」


「少し、外の様子を確認に出ようかと思いまして・・。

 皆には、内緒ですよ。アハハハ」


 そこにいた、料理人を始め、皆が驚き、そして青ざめる。

「お お嬢様、待ってください。

 お付きの方は、何処にいらっしゃるのですか。

 それに、表から出かければ宜しいのでわ。」


 至極真っ当な言葉で、止められる。

(当り前じゃないか。 黙って、聞いていれば、馬鹿なの もう。

 内緒って言えば行けるかと・・・)


「みんなは、忙しいようだから、私だけよ。」


 更に青ざめる料理人たち。

「おやめください。

 もし何かあれば、私たちには責任の取りようがありません。」


 真っ当な反論だ。

 困ったなぁ。


「それに、もしもの事があれば、私どもの首が飛ぶことになります。」


 もう、泣きそうなくらいに、止めようとする。

 いや、困った。そこまでは、考えていなかったし

 少し大げさなのでわ? と思わずにいられなかった。

 私が、少し戸惑っている隙に、一人の女性がさっと出ていき駆けていった。

 や や やばいわ。


『カッカッカッ』と駆けてくる足音に、ミリー達じゃないと分かった。


「お嬢様、何をなさっているのですか!」


 来たのは、イリスだったが、顔つきから激おこであることが直ぐにわかった。

 楯も無い、逃げ道もない! ごめんで済むかしら。

 ここは、機先を制するしかなさそうね。

 私は、我が家秘伝の土下座で


「ごめんなさい。 ちょっとだけ、外が見たくて、イリスゥ~。」

 渾身の上目遣いで、誠心誠意の謝罪を試みたが


「この、お馬鹿がぁ~。

 ミリーからも、言われたでしょう。

 なんで、こそこそ動くの、ダメなものはダメでしょ。

 分からないなら、今から朝まで教えて差し上げましょうか!」


「イ イリ ス、そんなに、怒らなくても・・・

 お嬢様なんでしょ・・ね。

 もう、威厳とかお淑やかってイメージが無くなるわよ・・・」


 私のこの一言が不味かったようだと、イリスが赤鬼の様に赤面になる。

「おじょうさま、威厳~お淑やか~・・。

 意味が分かっておいでですかぁ?

 従者の言っていることが、分からないのに、こそこそと抜け出そうなんて!

 どの口が言っているのやら!」


 止まらないイリスの赤鬼バージョンに、足が痺れて来た。ピーンチ!

 会った頃は、あんなに可愛かったのに、今ではお母様の様だ。


「ちゃんと、聞いているのですか!

 もうここでは、迷惑になりますから、お部屋へ戻りますよ。」

 なんと、イリスは私の襟首を持つと、そのまま持ち上げる。

『あう』思わず声が出てしまった。


「あの、イリスさん。 もう、威厳とかお淑やかなんて、飛んでいったように感じるのだけど。 気のせいかしら?」


「お嬢様が、ここにいらした時から、既にそんなものはありません!」


 なんと。衝撃の事実が・・・。

 力強いなぁ、なんて持ち上げられながら、料理人たちにイリスと謝り。

 それから、そのまま部屋へ連行される私って、『グスッ』部屋は2階、エリアにもミリーやモーラ、エル、その他の大勢に見られて羞恥心で顔を掌で隠す事しかできなかった。

(いやー、面白いものを見せてもらったよ。最近で一番のできだよ。

 あんたも、怒られるのよ、いいの、ねえ。

 別に、俺たちは聞き流せばいい事だし。

 裏切者~)


「アンジェ様、何で分かっていただけないのでしょうか?

 ここは、領都ではないのですよ。

 万が一にでも、さらわれたり危害を犯す者がいないとも限りません。」


 イリス渾身の、お小言が始まった。

 はいはいと、頷いていると、怒られる。

 自分は、結婚が嫌で逃げてきている癖に、鏡で良く自分の顔を見ればいいのに、そうだわ。

 鏡よ、ふふふ、この私に説教なんて10年早いわ!


 私は、荷物から手持ち鏡を取り出すと、椅子に座りなおして、イリスを映し出す。


「何ですか、鏡なんて持ち出して。」


「よく見て、私に説教をしている貴方は、どうなのかしら?

 婚約や結婚から逃げて、ここまで来たんじゃないかしら?」


「うっ。 そ それとこれは違います。」


「そうかしら、連れ戻されない様に、わざわざ隣のリヒタル領にまで来たのに~。」

(よし、あと一押しだわ。)


「何をしているの。

 下は、片付いたわよ。イリスの荷物は運んどいたわよ。」


「ええ。ありがとう エリア。

 今、ここを抜け出そうとしていた、アンジェ様とお話をしていたのよ。」


 キッとした視線を向けるエリアが参戦してきた。

「もう、何を二人ともむきになって~。

 ちょっと、お外の雰囲気を感じたいと思っただけじゃない。」


 再び、ドアが開く。

「あら、ミリーじゃない。そてにエルまで、どうしたの?」

 殆ど、皆が揃ってしまったわ。

 バルムから、妙に厳しいエリアとイリス、ミリーは、前にもまして厳しい・・・。

 あー、わたしの壁役はもう、モーラとエルしかいないわ。


「なにやら、ここを抜け出そうとした不届き者がいると聞いたもので、どうしたものか伺ったのですが。

 もうその必要は、ないようですね。」


 駄目だわ。ミリーの弱点が思いつかない。

「そうよ、ミリーは、ハンスとイチャイチャ出来ないからって、腹が立っているのね。

 そうよね、エリアたちと違って、お相手はいるけど、暫くは、何もできないもの。

 分かるけど、人に八つ当たりは駄目よ。」


 あれ、三人の顔がみるみる赤くなっていくわ。

(馬鹿だろ、もう取り繕うことも出来やしない。)


「今、なにか仰いましたか!

 さらに、お二人の事まで、これは罰が必要ですね。

 せっかく、アンジェ様がお好きなお食事でも と思っていましたのに。

 ああ、残念でなりませんこと。」


「そんなぁ。 ハンスに抱きしめられたり、キスをしたり出来ないからって、酷すぎると思うのよ。」


 何故か、ミリーが噴火寸前にまで・・・

 本当のこと言っただけじゃないの。

(空気を読む、以前の問題だな。)


「アンジェ~!」



 噴火した。つられて二つのお山も噴火したでござる。

 しかたない、ここは新人のエル君に壁になって貰おう。


「エルゥ~」

 場を察したのか、エルは静かにドアを閉めたのが見えた。

 私は、四面楚歌って、言葉の意味が分かったわ。

 あれだけ、私に期待の目を向けていたミリー達がバルムを出てから、人が変わったように、よそよそしかったり、呼び捨てなんてしたことなかったんじゃないかしら。


「今日は、お食事は無しで、私たちの話を一晩じっくり聞かせてあげましょう。」


「そ そんな、殺生な! お慈悲わ。」


「そんなもん、あるかー!」


「酷い、人が食べる回数なんて決まっているのよ。

 その、貴重な一食を取り上げるなんて!}


「早く、その口を閉じなさい。」


 お母さんである。もう、怒ったお母様だ。

 ロッテがいると、さんざんなのだが、ここの三人も同じに見える。



 アンジェの、長い夜が始まった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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