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第五十三話 侯爵領へ1

 ともあれ、出立の準備のはずが。

 ミリーとエリアでいいでしょ。

 よ、この一言が争いの原因になってしまった。

 モーラとエルが食い下がる。

 そして、イリスも駄々をこねる。

 こんなキャラだったかしら?

 余り大勢では、失礼だし信用していないと思われるかもしれない。


 何やら、エリアが剣で勝負とか言ってる。

 卑怯極まりない。

 ミリーたちが、適う筈がない。


「素人に、剣で勝負なんて恥ずかしいと思わないの。」


 いや、全くその通りだわ。


「あのね、私の従者は護衛一人に侍女一人で十分なのよ。

 それに、兵士たちも来るから、道中の安全は確保できるわ。」


 まだ、食い下がるモーラは諦めが悪いのか

「お料理対決で決めましょう。」


 困った。エリアもイリスもこの手は苦手なのだ。

 そもそも、出来る女性なら結婚をしようとするはずなのだ。

(おいおい、エリアとイリスはミリーとモーラ、エルとは別だろ。何故、五人で争ってんだよ。

 そうか、言われてみれば、その通りね。私としたことが。

 いつものことさ。で、色々と言いたいことがあるけど。

 また今度ね、今は、それどころじゃないのよ。)


「いいかしら、なんで五人が争っているの。

 護衛と侍女は別でしょ。」


『はっ』

「そういえば、そうでしたね。

 私としたことが、アンジェ様に感化されるところでしたわ。」


 私は、ミリーを見つめる。

 何も、私を引き合いに出さなくてもいいじゃない。

 だが、虚しくもミリーには私の訴えは届かなかった。

 シュンとする私に、イリスが声をかけてくれた。


「アンジェ様、別にミリーは悪く言ったのではございませんよ。

 そ そお、これはあれなんです。」


 あれって、なんだよ。


「感じる ん 感じるところ んー」


「何も出ないなら、言わなくていいんじゃないかしら。

 おかしなことになってるわよ。

 どうせ、私なんかいいとこの一つもありませんよ。」


「何やら、騒がしいが、遊ぶなら外に出かけた方がいいんじゃないか?」


「遊びではありません。」

 五人が、息ぴったりに返す。


 少し怯みながらも


「なら何を、言い合ってるんだい。」

 おー紳士。

 領主なら、私に向かってとか、言いそうなものだが我が家では滅多に怒らない。

 と言うか起こったことがない。

 お母様に怒られることはあってもね。

 家の序列は、お母様、私でお父様が一番下だ。

 時には、ロッテにも制される。可哀そうなお父様なのだ。


「今、、旅にお付きを決める重要な所です。」

 ミリーは真剣な表情で、お父様に返す。


「なら、五人とも付いて行けばいいじゃないか・・」


「えっ」


 それまでの、空気が和み。


「よろしいのでしょうか。」


「ああ、かまわないよ。」


「使いだけじゃなく、アンジェもいるのだし三人増えたところで何の問題も無い。

 ミリーも、交代できるだろう。

 折角だ、街の見学でもすると良い。」


 なぜか、機嫌いいお父様だが何か裏があるのだろうか?

 気になるけど、そう簡単には話してくれないだろう。

 ここの守りは、エリアとイリスを連れていけるのは嬉しいけど、何も思いつかない。

 私は、諦めが早いのよ。

 想い違いよ、きっと。



 ※※ ※

「皇帝陛下、この度の失態はオイコン要塞を預かるエルランド公爵とヴァルテン伯爵の

 責であることは明白。

 これまでの様に、沈黙し黙っていることは敵に利する行為と具申します。」


「我もそれは分かっている。

 第一軍団を指揮する、アレハンドロ将軍の言いたいことは分かった。

 しかし、あの者達はこれまで、帝国に忠心を尽くしてきた者達でもある。

 もう一度、汚名を挽回する機会を与えようと思う。」


 アレハンドロは、拳を力強く握りしめ

「陛下が、そこまで仰るのであれば、私奴に異存はございません。」

 甘すぎる。かの者達では荷が重すぎるのではないか。

 陛下も、変わられた。

 我々に任せてもらえれば、エストラン王国など直ぐに落として見せるものを、やはり8将が

 マルタン将軍を失ったことが原因か。

 此度の会議は、荒れそうだな。



「それで、陛下は立ち上がるのか。

 それとも、今まで通りなのか?」


 久しぶりの、7将会議で、第7軍団長のグスタフが怒りを込めて口を開く。

 陛下の命で、派遣した獣人部隊の損害を考えれば、怒り心頭だろう。


「グスタフ将軍、口が過ぎるぞ。」


「けっ、俺の配下の部隊がやられたんだ。

 落ち着いて、話を聞くだけなら、後で紙切れにでも書いて送るんだな。」


「少しは、落ち着いたらどうなんだい。

 わたしゃ、忙しいんだよ。」

 第3軍団のラシェル将軍が、間から口を挟む。


「いいですか。

 みなさん、それぞれの戦地から来ているのですから、無駄な時間は取られたくないでしょう。

 ああ、第一軍団のアレハンドロ将軍は、帝都の要でしたね。」

 第4軍団長のフェルナンデスが、制しに入る。


「それより、陛下は何と仰っていたのですか。」

 第6軍団長のジアンナは、爪にマニキュアを塗りながら、答えを急かせる。


「我々に、ご命令は無い。

 要塞の二人に、責があると具申したが却下され、再度の汚名挽回の機会を与えるそうだ。」


「馬鹿なっ!」


「こんな事が許されるなら、帝国で罪をとわれる者なんていなくなるわ。」


「汚名挽回の機会を、得ただけだ。

 別に、許されたわけじゃない。」


「甘い、甘すぎる!

 もう11年だぞ。いつまで、過去の事を引きずってやがる。」


「グスタフ将軍、もう一度だけ言いますよ。口を包みなさい。」


「けっ、わかったよ。

 だが、挽回などと、どうなっても知らんぞ。

 俺の預かる軍からは、一切の要請を断る。

 無駄に、屍を増やすだけだろうからな。」


「あら、珍しく意見が合ったわね。

 アレハンドロ、私もお断りしますわ。」


『はぁ』

「諸君らの意見は、みな同じか?」

 沈黙の時が、肯定を意味していた。


「では、陛下には私の方からお伝えしておく。」



 ※※ ※

「アンジェ様、準備は、忘れ物は無いですか?」

 ミリーとモーラにエルが、口うるさい朝を迎えた。

 今日は、ヘリアンサス城郭都市へ出発する日なのだが、お母様が二人増えたようにお節介を焼いてくる。


「私の事はいいから、それより貴女達は大丈夫なの?

 私に、構ってばかりでいいのかしら。」


「問題ありません。」


 息ぴったりに返って来たよ。

 もー、少しは静かにいたいのに。


「アンジェ様、準備は大丈夫ですか?」

 エリアとイリスが来て早々に、またこれか。

 お母様が、また二人増えたようだ。

 付いて来るのだから、そこまで言わなくてもって思うのよね。

 もし忘れても、買えばいいのよ。

 城郭都市なんだから、ここより何でもあるはずよ。

 まあ、値段もそれなりにするのだろうとは思うけど。


「なんだか、小さいお母様が五人になった様で、気が休まらないじゃない。」


「小さいとは、何ですか。」


 そこに食いつくのか。

 全く、話が通じないわ。


「若いお母様の間違いだったわ。」

『ふぅー』

 こいつらは・・・


「あらアンジェ、では私は年寄りのお母様なのかしら。」


『はっ』

 振り向くとお母様が、見送りに出てきたところだった。

 タイミングが悪い。悪すぎるというか、面倒なお母様たちだ。

 ここで、お母様を若いとか言ったら、ミリー達は、私たちは子供になるのですか。とか言ってくる気がする。

 やっぱり、二人で十分じゃないかしら。

(お前が、ミリー達をお母様に例えたからだろ。

 だって、ぱっと思いついたのよ。それを、話したところで、こんなに話が絡まってしまうなんて!

 うんうん、自業自得だな。)


 結局、予想通りの反応を返すお母様たちに、頭を悩まされ出発前から疲れ果てる事になった。


 気分は、少々疲れているが、楽しみでもある。

 きっと、獣や魔獣に盗賊とか出て来るだろう。

 見てみたい、好奇心が抑えられないわ。


 5月1日、晴れて7歳になった私は、初めての旅に出る。


いつも、ありがとうございます。

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