第五十話 帰還と目覚め
アンジェの体が、帰り着く前のこと。
「この声は、なんだ。
何が起きた?」
「大佐、急報です。
敵中央からアインハウル少将閣下がうちとられたと歓声が上がっております。」
「何だと。
第七軍団の中でも、猛将で知られた閣下が・・
誤報ではないのか。」
「確認した兵によると、本陣の閣下と側近たちの首を掲げてこちらに、突撃しているとのことです。」
「王国に、本陣にまわす余力があったのか
今、挟撃されては陣形が維持できない。
ここは、退却する。
私が、ここを抑えている間に
右翼と左翼から、オイコン要塞へ退け。」
「マクミラン団長
敵は、退却していく模様です。
追撃戦に移行します。」
「エリア、無理はしなくていい。
殿は、あの獣人部隊のトルーガ大佐だ。
11年前に我々を、追い詰めた将の一人だ。」
「各隊に掃討戦に移行
敵の退却を確認後に、我々も陣へ戻る。」
「了解しました。」
本陣からも、帝国が後方へ退いていくのが確認できた。
「よし、我々も、行くぞ
皆、我に続け・」
エドワードの掛け声で、歓声と共に出撃していく。
そうして、今!
本陣に戻った面々は、ホッと安堵する者と眉をひそめ困惑する者たちで分かれていた。
「リヒタル閣下、先ずは戦勝おめでとうございます。」
「皆の奮戦があってこそだ。
ご苦労であった。」
「閣下、一つ宜しいか?
此度は、帝国第七軍団の部隊だったと知らせを聞いた。
アインハウルにトルーガと言えば、11年前の敵将にいたはずだが。
それと、空から降りて来た者のことですが。」
「リンデン殿、いやあ、あれは・・・
分からぬ。敵ではないようだが、それ以上の事は我々にも分からぬ。」
「しかし、アレに救われたな。
包囲も出来ず、消耗戦で決め手が無かった、我々はあのままでは、押し返されていただろう。」
「申し訳ありませんでした。
此度の失態はいかようにも処罰を・・」
「よい、もうよいのだ。
今は、これからの事を話そう。」
エドワードは、言われた通りに秘密にすることにした。
「あの少女の事で、語れることは殆どない。
何処の誰かも。
それから、あの出来事について、少女は自分の事は秘密にして欲しいと言われた。」
「いやいやいや
無理 無理 無理」
「万人が見ている状況で、何が秘密だ。」
「箝口令を敷く。
それしかあるまい。」
「少し残念ですね。
ア あの子の活躍が埋もれてしまうことが 」
「イリス、口を慎みなさい。
ア あの子のことは・・」
うっかりが、うつっているイリスとエリアは、赤面し俯く。
「ワザとか、ワザとなんだろ。
そうだと言えー!」
「お前たち、ちょっとは自重しろ。
では、閣下の言を伝えるよう指示してきます。」
「だが、一人の少女が戦局を変えたなど、信じられない話だ。
それに、この戦いは我々で勝利したとしなければならない。
それなりに我々も損害がでている以上は、民衆に示しがつかないだろう。」
「これで、引き下がるとお思いで」
「可能性は、かなり低いだろう。
リンデン殿、戻ってから対策は想定しておかねばならないだろう。
が、帝国の7軍団が相手では、一領地ではもう抵抗することは困難に等しい。
ハイド伯爵とモルドレッド公爵にも、使いをだして備えを強化していただかなければと思っている。」
「それでしたら、私の方でも戻り報告をしておきましょう。
陛下にも進言して、兵力の差を少しでも補わなければな。」
会議を終わらせると、帰投の準備に取り掛かる。
「アニール」
マクミランは、小さく呟いた。
※※ ※
光が瞼にかかり、淡い赤色が目に映る。
アンジェは、ゆっくりと目を開ける。
体を起こそうとしたが、言うことを聞かない。
「いたっ
いたたた
何事なの? 体中が痛いわよ。」
「お目覚めになられましたか。
良かった。 ステフ様に、お伝えしてきます。」
あー、昨日は、色々あり過ぎてアニーの事で心がめちゃめちゃにかき乱されてしまった。
私の部屋に運んでくれたのね。
「ミリー・・・アニーは」
「部屋に、寝かせています。」
目頭が赤くなっている。
きっと、遅くまで泣いていたのだろう。
それにしても? なにか ちょっと ね
「会いに行くわ。
着替えを手伝って・・何故か、体中が痛いの。筋肉痛かしら。」
着替えを手伝ってもらうのは、久しぶりだ。
準備はしてもらってたけど
「それにしても、痛いわね。」
顰めっ面では、皆にも余計な心配をかけてしまうわ。
がまん がまん
部屋を出て、他の使用人たちにも会った。
なんの違和感なのかしら?
皆の様子が、何時もと違うような。
『ガチャ』
「あっ、アンジェ様。」
ドアを開けると、モーラが振り返り、私の名前を呼んだ。
その後ろには、布に包まれた人の姿が見て取れる。
「モーラ、私もいいかしら。」
本当は、眠っているだけなのでは
ゆっくりと近づくと
唇には微かな微笑が残り、夢の続きを見ているかのようだった
「綺麗ねっ
アニー、もうお寝坊さんなのね。
は はやく 起きてちょうだい」
私は、優しく髪に触れると、アニーに声をかける。
「今日は、何かしたいことはないかしら
貴女と話がしたの・・
声を聞かせて・・・」
静寂と沈黙だけが部屋を包み込む。
涙が零れていく
「アンジェ様、今はアニーの側にいてあげてください。
私たちは、エド様とステフ様にご報告をしてきますので。」
「分かったわ。」
振り返って、返事を返すと
モーラも いつもと違う ような?
二人が、部屋を出た後も、私は語りかける。
懐かしい思い出と
「なぜ、わたしを庇ったの」
[それが、私の務めですから]
「それは、私の務めなのよ。
貴方達を、守ることを私から奪うなんて」
[いいえ、ここで主を守らない者は仕える者として失格ですよ。]
「アニーらしいわね。」
これは、幻聴だ。
アニーだったら、こんなことを答えてくれるんじゃないかって、勝手に私が思い込んでいるのね。
[アンジェ様の傍に入られて幸せだった。
でも、ミリーもモーラもいる。エリアとイリスも。
何時までも、泣いているのは駄目ですよ。]
「でも
アニーのいない世界は、寂しくて」
[ありがとう。
私を、こんなにも思ってくれて]
「私の方こそ、ありがとうよ。」
アニーに、くちゃくちゃな笑顔を見せる。
「少し、元気が出た感じだ。」
『ガチャ』
部屋に、お父様とお母様を連れて戻って来たミリーとモーラは、そわそわしている様だ。
って、何故 今 ここに お父様がいるの?
まだ、寝ぼけているのかしら
『ゴシゴシ』
目を擦ってみたが、幻が見える
『パンパン』
頬を叩いてみたが、夢が覚めい
頬っぺたをつねってみたが、痛いだけだった。
「お お お かえり なさ い」
「アンジェなのね。
目が覚めたって、二人が教えてくれて。」
「私は私よ。
もう、なにをおしゃっているのお母様。」
「目が覚めて、何よりだ。」
「その前に、お父様はいつ戻られたのですか?
早いと思うのは、私だけなのでしょうか?」
「そうだな、アンジェだけだと思うが。
体とかに違和感はないのだな。」
「ええ、そうですね。
筋肉痛で、体中が痛い他には
それより、場所を変えません事。
アニーも、ゆっくり休んでいたいでしょうから。」
何があったの
私が、何をしたのよ
「アンジェ、心して聞いてくれ。
いいかい。」
う~ん~
「はい」
「お前は、もうすぐ7歳になる。」
「・・・はっあーーー。
なになに そんな冗談を・・」
言ってなさそうな表情だわ。 次っ
「アンジェ、1年近くも眠ったままだったのですよ。」
「あ あ あり ありえ ない
おおお お父様も おおおお 母様も 何を」
「事実だ。」
「本当よ。」
おかしい。
ミリーとモーラにも、聞いて見よう。
「本当でございます。」×2
うわぁーん
マジかー
何で、毒でも盛られたか
あれっ、ならここに、お父様がいてもおかしくない。
んっ、でも ここにいるアニーは?
訳が分からない。
家の人たちに、違和感や
そもそも、ミリーやモーラに感じた違和感って
私が、綺麗だからって、だけではなかったということか。
(なーにが綺麗だ! はよ、整理せんかい。気の毒に思った俺の気持ちを返せよ。
あらあら、ノブじゃない。寝ている間に、勝手に動いてないわよね。
してねーよ。ってか、良いご身分だよ 全く、こっちの・・『ゴホッゴホッ』
なによ。
何でもねーよ。)
「どうして
お父様、何が起こったのですか?」
「色々、調べて貰ったのだが、分からなかった。
ただ、眠っていると
いつ目を覚ますのか、覚めないかもしれない状態が続いた。」
「でも、貴女が目覚めたって聞いて、変わらない様子と聞いて安心したわ。」
ミリーとモーラまで、ウルウルしちぇって
何が起こった?
「お前が目を覚ますまでと アニーをあの時のまま寝かせた。
カンタール男爵も、アンジェの為にと
すまなかったな。」
「いえ、私の方こそ、申し訳ありませんでした。」
「これからの事は、また話すとして、今日は、ミリーとモーラと過ごしなさい。
二人は、アンジェとアニーの世話をずっとしていたのだから。」
これから、色々と知らなければならないようね。
いつも、ありがとうございます(*‘∀‘)
50話になりました。パチパチッ
また、来週もよろしくお願いします。




