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第四十二話 10年前の悲劇

 もう、頼みの綱は、アニー達ね。


 (すが)る思いで、振り向こうとしたとき。

「侯爵様、伯爵様

 恐れながら、申し上げたい事があります。」


 侯爵と伯爵の、態度が少し緩む。

 これは、流石だわ。

 アニーは、出来る子だわ。

 これは、切り抜けるチャンスよ。

 やっておやり、アニー~。

 と、思っていた頃もありましたわ。


 今、私は大叔父たちを前に、正座をしている。

「それで、何をしておったのだ。

 話すにしても、場所を変えて欲しいとの希望は叶えてやったぞ。」


 アニーは、(すが)ったのだ。

 ただ、私の希望では無かった。

 ここではと、場所を移しただけで何も状況は変わらない。

 しかし、おかしいは、何故に私だけ正座なの。

 私は、お父様を見て『ここに、おいで』と訴えると、『任せておけ』とばかりに話を始めた。


「実は、アンジェには街への見学を兼ねて自由にしてよいと言っておりまして・・」

 歯切れが悪いわ。

 もう少し、言い方ってないのかしら。

 しかも、私の思いが伝わってないわ、


「ほう。お忍を許しておるのか。

 全く、甘過ぎるようだな。

 子を、思い大事にすることと甘やかすことは、同義ではない。」

「アンジェリカ、今日は好奇心があったとしても、迂闊すぎる。

 今の、バルムの外は何が起こるか分からないのだぞ。」


 叔父は、怒っているが、その顔は心配してくれている様に思えた。

 しかし、頭が上がらないってこういう事なのね。

 何時ものお父様が、こんなにも困っているなんて。

 まあ、ここには大叔父と叔父にお母様とお父様、そして私しかいないからね。

 多少の事は、バレもしない。


「して、アンジェリカ。

 何故、その様な事をしておる。」

 叔父が目を細めてアンジェを見つめる。


「これは、最近ですが、我が家にできた新しい謝罪の姿勢でございます。

 お父様が、怒られてお母様に謝られていた時に教わりましたわゎゎゎ。」

 はっ、と口を紡いだ時にはちょっと遅かった。

 お父様にそそがれる視線に、私は助け舟をだした。

『とんとん』

 笑顔で私は、手を横の床を軽く叩いて、お父様をみる。

 そうなのよ。

 やはり、お手本があった方が良いわよね。


 肩を落とすと、お父様が私の横にやって来た。

 床に座ると、今度はお母様の顔色が悪くなっている。

 体調でも悪かったのかしら、ここはやはり私が気遣っていけないとやらなければ。


「お母様、ご気分が優れないようですわ。

 お部屋で、少しお休みなられてわ。」


 なんて、出来た子なの。

 お母様への気配りが出来るなんてっ。

(アンジェ、それは違うと思う。

 あらノブ、久しぶりね。見てたかしら、これで、私の心象も変わって人気も、うなぎのぼりね。ってウナギって何なのかしら?

 何の人気か分からんが、人の機微もっと学んだ方が良いよ。)


「ステファニー、利発であった其方らしくないでわないか。

 もうよい、先ず二人ともそこにかけなさい。」

 大叔父様、マジ感謝。

 そろそろ、(ひざ)(すね)(すね)も足首も限界で危ない所だったわ。


「ここからは、堅苦しいのは無しで話そうか。

 エド、ステフよ。

 アンジェに何を教えている。

 貴族の息女としての教育どうしている。

 これでは、表に出すことは出来ないと思はないのか。

 どうなのだ。」

「叔父貴、ここは領民と近い関係を築けているし、アンジェも悪気があって言っている訳じゃない。

 エドを見て育ったら、それが普通になると思は無いか。」


 なにやら、この場を収めようと言ってくれている、セルシ叔父様だけどディスられてない?

 酷いは、こうなったら私が頑張らなくちゃ。


「叔父様、ありがとうございますわ。

 まだ、至らない所もありますが、これからは、今以上に勉学に励みたいと思います。

 お忍びも、我慢しますし・・」

 こんな時に、横のお父様からまた口が塞がれる。

「いやいや、視察を兼ねて街の様子を見に行ってた事だよな。」


 嗚呼、そうか言い方が悪かったののね。

 何てことかしら、私ってたまに正直に話してしまうのよね。

 危ない危ない。


「ほう。

 お忍びに、視察と様子と来たか。

 アンジェよ、儂らと鉢合わせてしまっては、お忍びにならんじゃろう。

 なあ、エド セルシ。そうだった、な ステフ。

 街の様子など、早くないか?」


『うっ』

『はっ』

 身に覚えがあるのか、ぐうの音も出ないみたい。

 いやもう、出ているけどね。

 まさか、お母様まで思い当たることがあるなんて。

 流石、二人の子としてなるべくしてなったのね。

(残念なアンジェ。

 なによ、皆して私のどこがよ。

 全部だよ!)


「して、何故あの場所にいたのだ。

 今、あの場所が危ないとは、思わなかったのか。

 止めるものも、いなかったのか。」


 その通り。

 私を、止められる者はもうここにはいない。

「それは、わかっている つもりでした。

 でも、確認しないわけにはいかないのです

 捕虜とはいえ、敵には違いないのです。

 私たちは、それを忘れることは出来ません。

 ですが、私は彼らを救いたいとも思っています。」


「まだ、聞いてはおらぬのか?」

「アンジェは、まだ子供なので早いと思い話していません。」

「愚か者が!

 お前の、父を、儂の子をあの戦いで亡くしておいて、早いだと!」

 お父様も、お母様も、そしてセルシ叔父様もだんまりしているわ。

 何があったのかしらね。

 それに、亡くしたって。


「お父様、もういいでしょ。

 教えてもらえないかしら。」


 エドは、険しい表情を隠そうともしない。

 少しの時間が、長くも感じられた時、エドから驚きの内容が話された。


「アンジェ、アゼリアの戦いとして、知らない者はいない。

 今から、10年前 ここアゼリアを中心にリヒタル領は、帝国の8将の第一の将マルタン将軍に攻められて劣勢を強いられていた。

 ツベル戦い ツベルの悲劇として誰もが忘れることはない。

 私もセルシの父も、参戦し指揮を執っていた。

 王国の総力を挙げての防衛線だった、戦線を維持するので精一杯だったが陛下を始め王国を守るため戦い抜いた結果、多くの戦死者をだしたが辛うじて退けることが出来た。

 奇策が功を奏して、マルタン将軍を討ち取りはしたが、その他大勢と聞いての通り我が父もセルシの父も高見えと逝ってしまったのだ。

 今では、英雄として語られている。

 民が、叔父や私たちを心から受け入れているのは、最後まで戦い抜き見捨てることがなかったことも大きいのだ。」


 暫くの沈黙の後、モルドレッド侯爵は悔やみながら語り始めた。


「儂の、兄弟も子も失った。

 遺恨は無くならぬ。

 だが、それと同時に国力は低下し持ち直すのも、ままならぬ状況が今に至っている。

 だから、あの場にいて驚きもした。

 連れの者は、何も話さなかったのか。」


(そんなことがあったのね。

 知らなかったのだから、仕方も無いが、知らない事は時として罪だ。

 えー、でも知らない事は仕方がないわ。

 それによって、傷つく人もいてもか。失ったものが大きすぎる。俺も、軽率だった。)


「そうだわ。

 帝国は、7将と聞いていたのですが。」

「今はじゃ。

 あの戦いで、一人討ち取ったからの。

 皇帝の信頼の厚い将軍を亡くしたことで、今では本格的な進攻は無くなった。

 油断は出来ないが、時間は稼げる。

 今は、国力も人的にも上げていかねば、次は敗北しかない。」


 私にも、覚えがある。

 そう、ここの指揮官も文官も少ないし若い。年寄りが余りいないのだ。

 まあ、まだ5歳の子供に言っても普通は何の事やらと思うよね。

 でも、敵のことを擦り込んでおきたいことは、分かったわ。

 でも、いつまでも憎しみ合っても、大国の帝国に勝てる気はしないわね。

 ここは、バラックみたいな集落を作らせて捕虜たちが、進攻の邪魔になって思うような作戦が取れなくなることに期待しましょう。

 私 グッジョブだわ。

 いざとなれば、もろとも焼きはらってやるつもりだったしね。

(元は俺たちだがな。

 良いのよ。実行したのはこの私なのだからね。)


「まあ、皇帝が腹心をなくして今は、大人しくなっているのは好都合だがな。

 油断はできない。」

 セルシ爺は、私の方を見て話しかける。


「でじゃ、聞きたいことがまだある。」


 もう逃げる事も出来ないわ。

 嗚呼、お父様もお母様も、何とか誤魔化してくれるよね。

 内緒なんでしょ。

 カルビンもアニーもワイズもいない。

 もしかして、私って劣勢じゃない。

 ウー、お肉が食べたい。

 頭が回らいわ。

(この期に及んで、腹減ったは、十分に余力があるってことだ。

 でも、何か食べたいなんて言える状況じゃないことは分かるわ。)


 まだ少し、時間がかかる話し合いに思わぬ結果にアンジェが項垂(うなだ)れるまであと少し。


いつも、読んでいただきありがとうございます(*‘∀‘)

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