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第四十話 アンジェ、化けの皮が剝がれる

 お父様とハイド伯爵にウィルビス侯爵は、そのまま執務室へ入っていった。

 私は、やる事なしである。

 ささやかな晩餐まで、引きこもって久しぶりの余暇を過ごす事にした。

(それにしても暇よねー。誰か、遊び相手が欲しい所だわ。

 今日は、無理だな。お偉いさんが来ているし、大人しくしていればアンスが上手い物を作ってくれる。

 でもでも、何時もの様に食べていては、失礼にならないの?

 腹八分って言葉がある。大体、いつも食べ過ぎなんだよ。

(え~。空腹で眠れなくなるじゃない。死んだら、どうするのよ。残念どころか、そんな羞恥には、流石に耐えられないわ。

 いやいや、そんな事では死なないからな。空腹で、眠れないのは分かるがな。)

「そうだわ。何か作って貰いましょう。

 今から、食いだめしていれば、大丈夫よね。」


 アンジェは、厨房に張り出すが、たどり着く前にステフに捕まった。

「アンジェ、何をそんなに急いでいるのかしら?」

「あら、お母様。

 (わたくし)、いいことを思いついたのです。

 今から、アンスに言って食事をお願いするところですわ。

 これで、失礼のない晩餐ができるのよ。

 ねっ。いい案でしょう。」

 ステフは、頭を抱えながら壁に手を付くと倒れるのを持ちこたえた。

「アンジェ。」

 ステフは、私の頭から足まで『ぺちぺち』と触りながら、首をかしげる。

「あなたの食べた物は、いつも何処に行くのかしら?

 太った様子もないけど、羨ましいわ。」

「そっちかい!

『ん、んん。』失礼しました。

 (わたくし)も、そういう体質じゃないかと、そして食べれるときに飛べるのが、心情なので。」

 鼻息を『フンス、フンス』と上げながら、小さな胸を張るアンジェ。

「アンジェ、そこは威張って言い張る事ではありませんよ。

 それだから、残根など言われるのですよ。」

 ステフは、堪えられずに膝を付き、倒れこむ。

「お母様、お気を確かに!」

「誰のせいですか!

 何時もいつも、貴女は斜め上の事ばかり言って、それと侍女を連れてないなんて、今日は病にかかるような気がしますわ。」

 ステフは、いつも以上に気が気でないようだ。

(おかしいわ。私の、完璧な作戦のはずが、『はっ』そうなのね。余りにも隙も無い作戦にお母様は、ビックリしたのね。

『ノ~。』お前は、何言っちゃてるの。お馬鹿なのは、その腹だけにしておけ!

 また、馬鹿って。・・)


「さぁ、召し上がれ。」

 ステフは、諦めた。

 それはもう、綺麗さっぱりと、『仕方ない。』侯爵様方に粗相を見られるくらいなら、お腹を満たしておけばいいのである。

 あのお二人が、ただ視察で来たと思えない。

 きっと、これを機にアンジェを見に来られたに違いないとステフは考えていた。

 お茶をすると言って、アンジェの部屋でロッテとモーラが準備をしていた。


 でも、何故ここなのか?

「お母様、お茶ならここで無くても・・。」

「あら、嫌だわ。ここなら、お料理の臭いが染みつくのはアンジェの部屋で済みますもの。」

「あらあら、それでは私の部屋なら大丈夫なのかしら?」

「あらあらあら、それ以外の意味に聞こえたのかしら。」

『ムムム、解せぬ。』アンジェは、ステフの言葉に憤りを感じていた。


「『ピキッ』それでは、食堂でもお庭でもよかったのでわ。」

「何を言っているの、食堂は晩餐の準備で無理ですのよ、それに庭では、エド達に見つかってしまうでしょう。」

(アンジェ、ポッと思いついたことでは、ちっぱいお前では勝てないよ。

 ノブ、いつか殺す。

 いやぁ、戦力的に負けてるなぁ~、なんて思ったり考えたりって、へへ。

 なぁにが、へへだよ。成長期なんだよ。仕方ないでしょ。)


「それは、諦めるしかありませんね。

 でも、折角ですし、料理に罪はありませんし美味しく頂きましょう。」

「そうね。今の内に、食べておきなさい。」

 キラキラと目を輝かせながら、アンジの手は止まらない。

 ステフは、悟った。

『なんて、不憫な子なの。』


『コンコン』

「アンジェ、ちょっといいか。」

 お父様の声が聞こえたが、返事をする前に扉は開かれた。

「あっ。」

「えっ。」

「ああっ」

「ええっ。」

 アンジェは、咄嗟にテーブルの前に立ちふさがった。

 しかし、エドの顔は引きつっている。

 そして、ステフは硬直している。

 エドの後ろには、侯爵と伯爵の姿が見えた。

『はぁ。』

「アンジェよ、私は、もう見てしまったから手遅れだ。

 それに、随分と美味しそうな香りが漂っているな。」

 お父様は、諦めた。

 額に、手をあて肩を落とす。

「エド、どうしたのだ。

 早く、アンジェリカに会わせんか。」

 後ろから、声がかかると、二人はお父様を横に姿を現した。

 アンジェの顔も曇るが、何とか挨拶をする。

「アンジェリカ、其方はステファニーとお茶をしていたのでないのか?

 何故、食事をしているのだ。」

「其方、そんなにお腹がすいていたのか。」

 二人からの声に、何とか答えようと懸命に考える。

 目を回す位に、動揺を隠せないアンジェは、ステフに助けを求め振り返るが。

 ステフは、未だに硬直したままで、再起動できていない。

「ああ。あっ。これは、マナーの練習でお母様に見てもらっていたのですわ。」

 マナーの練習とは、思えない程の料理の量に皆があり得ないと言わんばかりの視線をアンジェに向ける。


「あ、あれ~。おかしいですわね。

 しっかり、覚えようといつの間にか、食べ過ぎていたようですわ。」

 アンジェの後ろのテーブルには、積み重なったお皿が見えてしまっている。

 アンジェは、何とか話を逸らそうと必死だった。

「それで、お父様方のご用はなんでしたの。」


 エドは、気を取り直してアンジェを見つめる。

「いや、なに。

 今後の事で、合わせておこうと思ってな。」

 エドの苦しそうな言葉に、侯爵は肩に手を置き前に出る。


「アンジェリカよ。

 其方に会うのは、久しいのだが期待通りで何よりであった。」

 ん!何故に過去形なのか・・。

「その、金色の瞳は見たことがない。

 其方に会ってから、エドには将来は我が家かセシルの子に婚約をと話しておった。」

「アンジェリカには、不思議と感じることがあったから、折角の機会に会いに来たのが目的の一つなのだよ。」


「叔父上、セシル 残念だがアンジェは、上級遺族の様に気品は無い。

 それどころか、このありさまなのだ。」

 なんか、お父様が私を侮辱しているように聞こえるのだが、気のせいかな?

 それに、婚約って・・

 私の知らない内に、決まっていたのかしら。

(男は、ごめん被るよ。

 貴族の結婚なんてこんなもんでしょ。こんなに、早くから婚約の話がくるとは思わなかったけど。

 いやいやいや、俺は男だからな、男に抱かれるなんて、無理無理無理。

 な なにを、想像しているのよ。不敬罪だわ。)


「まぁ、まだ早い。

 これから、ゆっくりと考えていけばよい。」

「そうだな、これから私の息子にも会うこともあるだろう。」

 あら、でも聞いた話じゃ、小さいと何とか聞いたような?

 それにしても、そんなにこの目が珍しいのかしら。

 そんなことで、婚約まで決めるなんて、『ん~』分からない事は、仕方がない!

 私は、今が良ければそれでいいわ。

「侯爵様に伯爵様におかれましては、ご期待に応えられるよう・・」

「良い。

 アンジェリカも、その様な堅苦しい挨拶は不要。

 まあ、先ずはその食欲をなんとかせねばな。

 エドもステファニーも、もう隠さなくてよい。」

 お父様も、お母様も恥ずかしそうにしている。

 きっと、私のせいなのだろうが、バレてしまっては仕方がない。

 開きなるアンジェは、呼び名を考える。

 モルドレッド爺さん?ん~長い。

 レッド・・何たら戦隊みたいでカッコいいかもしれないけど。

 まあ、大叔父様とセシル様が無難だろう。

 まあ、なんてできた私なのだろうと自身満々で、自分を褒める。

(おいおい、無難におさまっただけだろ。

 えっ、じゃあお養父(とう)(さま)って言った方が良いのかしら?

 きっと、喜ぶとは思うが、エドが悲しむからやめておけよ。)


 お母様が、いつの間にか元気になっているのが見えた。

 ロッテもモーラも、ホッとしている。

 なんか、納得がいかないのだけど、結果が良ければいいか。

いつも、ありがとうございます。


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