第三十九話 あの日の後と来訪者
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女子会から、アニーが言っていたように、3倍鍛錬が続いていた頃。
やっと、労働力が領地へ続々とやって来た。
「やっと来たわね。
ワイズに、今後の事を聞いておかなきゃ。」
嬉しそうに、語るアンジェにモーラがやって来た。
そう、今日は、淑女の日ならぬ、作法の講義である。
女子会の後、アンジェは、マクミランとハンスにイリスの事をばらした。
アンジェなりに、オブラートに包み、それを台無しにするように、ぶっちゃけていた。
(そういえば、あの日のノブは大人しかったわね。
女の子の話に交じっても、何言っていいか分からないし、興味も無い。それより、やるべきことがあったのだ。これを、見るがいい。
ノブ、ダメだといたのに!なんて姿を・・。
おっと、間違えて平らな物が混じっていた様だ。これは、忘れてもいいだろう。
何ですって、私に向かって只では済まないわよ。覚えておきなさい。)
あれから、ひと月と半、イリスの刺繍はかなり上達していた。
ダンスの方も、エリアとイリスは社交界に出ても普通にステップが踏めるようになっていた。
もともと、出来ていたのが鍛錬で切れ味が鋭く、相手を振り回していた様だ。
「アンジェ様、おはようございます。」
エリアとイリスの、挨拶で『ふと』もうこの二人はここで学ばなくてもよいのではと、思い直す。
これからの領都運営に、この二人を付き合わせては損失の方が遥かに高い。
(アンジェにしては、真っ当な考えだな。軍属として団長たちの指揮下に戻した方が良いだろう。
そうね、捕虜が来たということは、そろそろあの方が来られるのでしょう。)
お昼のお茶を飲み人息をつくと、アンジェはワイズに会いに行った。
『ドタドタドタ、バーン』勢いよく部屋に入ると、アンジェの前に疲弊し目は虚ろな姿のワイズがいた。
「どうしたの、貴方が今からそれでは、困るのよ。」
「誰の所為だと、思っているのですかアンジェ様~『グスッ』。
もう、やることが多くて最近は寝る間も無いのですよ。」
うん。分かっていた。
前から思っていたけど、この領地の家臣は人手不足だ。
どうやら、10年前の帝国との戦が関係しているらしい。
まだ、教えてもらってないけど、8歳になればと言われている。
「まあ、仕方ないわ。
こうなることは、分かっていたでしょ。
それで、何処まで進んでいるの?」
ワイズが、地図を広げて説明をする。
「4か所です。選別は終わっています。
・最も国境付近へはこちらの話に全く傾けない者達。
・情報の真偽はともかく、会話をする者達。
・恭順を願う又は、考えている者達。
・女性の兵たち。
資材の搬入は、ほぼ完了しています。後はその者達にやらせることになっています。」
「そう。名簿は出来ているのでしょう。
後は、自主的に帰っていく者たちがいればいいのだけれど。
念のために、領都の前に簡易陣を準備しておいて、見張りの人員は、伯爵からの兵士に任せましょう。」
ワイズは、少し考えて頷くと。
「そうですね。
分かりました。そのように、手配いたします。」
※※ ※ ※
公爵領では、国王に謁見したが捕虜の件については却下されバズール公爵は戻ってから兵力の増力に力を入れていた。
「予定の変更ではあるが、致し方あるまい。」
「目的の変更と、挟撃の位置を変えなければなりませんな。」
ウィストリア伯爵と公爵の会話が続く。
「侯爵の力は、削いでおきたい。
ロベリアから出すのが良いかの。」
「クレマチス要塞からの方が、良いでしょう。数も隠せますし、練度上げるにはこちらの方が最適化かと。」
「分かった。
ヘルモンド伯爵と準備を進めてくれ。」
「『ハッ』畏まりました。」
バズール公爵は、ウィストリア伯爵に命じると、立ち上がり夕闇の落ちる空を眺める。
「クレマチス要塞のヘルモンド伯爵へ伝令準備を。」
ウィストリア伯爵は従者に命令すると、直ぐに準備に取り掛かる。
(ウィルビス候も、やってくれる。こちらの手配が後手に回されるとは。
これからの、王国には帝国と戦えるだけの強さが必要な時に、侯爵も分かっているはずだ。)
手紙を預け、家族の待つ家へと。
※※ ※ ※
リヒタル領に、貴族がやって来くる。
もう、冬が近いのか、陽が落ちるのが早くなった日。
夕食の時に、お父様から近いうちに、来客が来るらしい。
「お父様、前に言っていたウィルビス侯爵とハイド伯爵のことですか?」
「そうだよ。よく覚えていたね。
なら、分かっていると思うが、挨拶はしてなるべく黙っておくように。」
「も~、お母様からも言ってよ。
私は、そんな粗相なんかしないって。」
困った顔して、仕方ないと吹っ切ったように。
「エド、そんな風にアンジェを押さえつけないで下さい。
アンジェも、流石に・・・大丈夫よきっと、そう、ウッカリする事もあるけど、愛嬌もあって残念な面は隠れてしまいますわ~。」
アンジェを見て、『サァ~』と顔色が悪くなるステフだった。
「『プチッ』ねえ。お母様、全くフォローになってないよね!ね!
二人とも、失礼だと思うのだけど。もう少しくらい、信用してもいいじゃない。」
(日頃のアンジェの行いの結果だな。
ノブまで、そんなこと言うのね。)
お父様は、困った様な顔をしたが『フー』と息をつくと笑顔でアンジェ見る。
「仕方ない。参った、私も言い過ぎたようだ。
マナーをわきまえて、好きに過ごしていいよ。
アニー、ミリー、頼めるかな。」
アニーもミリーも、軽く頭をさげると嬉しそうに、お父様に挨拶をする。
「アンジェ様、起きてください。
準備を、いたしませんと、本日はいよいよ本番の日ですよ。」
アニーの、言葉でアンジェは、大きく背伸びしながら起き上がる。
「そうだったわ。
でも、直接ここに侯爵と伯爵がくるとはねー。普通なら代理もいいのに、何でかしら。」
最近のアニー達は、いつもに増して作法にうるさく言っていた。
流石に、上級貴族の不敬はさせてはいけないことである。
アンジェのことである、念には念にであろうが、いささか信用されていない事に不満を抱きながら準備をする。
到着の知らせが来て、お父様とお母様を始め総出で迎える。
そこに馬車から降りてきたのは、お父様と変わらないくらいだが、ザ・貴族と言わんばかりの男性に続き、歳こそ随分上だが風格が段違いで白髪の男性の二人である。
お父様の従兄弟にあたるハイド伯爵とお爺様のウィルビス侯爵だろう。
アンジェは、貴族はお父様みたいと思っていたが、それは誤りだったと思った。
別に、悪気があった訳ではない。聞かされてイメージが、それを超えていただけだ。
しかし、こんなに違うものかしと、見ながらも私には、今の方が気兼ねしなくて居心地がいいのは確かだと思うのだった。
(『ククク』ただの、田舎者だろ。
ノブもね。あんただって、『ホッ』としてるくせに。)
「この度は、ようこそお出で頂き・・」
「よい、そのような堅苦しい挨拶は無しじゃ。
ステファニー夫人も、壮健で何よりである。して、横におるのが」
お母様は、挨拶をすると、アンジェも続いて挨拶をする。
「初めまして、アンジェリカと申します。
本日は、お会いできる日を、心よりお待ちしておりました。」
「おお、其方がアンジェリカか、綺麗な瞳も変わらぬな。」
ハイド伯爵は、アンジェの顔を近くで見ると、満足そうにしている。
「セルシ、そのくらいにしておかないか。
話しなら、いつでも出来よう。」
ウィルビス候爵に、諌められて、抱き上げようとしていた手を引っ込める。
チョッと、俯きながら立ち上がる。
(恥ずかしかったのかしら。
だろうな。手が、抱き上げようとしていたしね。)
「取り敢えず、こちらえ。」
お父様が、向か入れると、後ろにいたアニーが、満足そうにしてた。
何故なんだ。これくらいで、失敗はしないのに、と少し不満なアンジェだった。




