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第三十五話 王国の起源

 7月になってからのアンジェはお父様からの指示で、王国とお父様の家系についてアニーとミリーにたまに、ロッテまでやって来ては、話を聞かされる。

 でも、名前を聞いても顔がわからないとやる気も覚える気も湧いてこない。

 そこそこ、興味を持ったノブ達が、嬉しそうだ。

(ノブ達は、王国の歴史が面白いの?

 それほどでも

 嘘ね。真面目に聞いているでしょう。

 いや、だって知らない世界だよ。お約束の中世くらいに、魔法みたいな力があるんだよ。なんで、何処からそんな物があるのか、ワクワクもするだろ。

 教会で、啓示だったかしら、を受ければいいんでしょ。

 そこだよ。それに、アンジェの力って普通じゃないよね。記憶が蘇ると若干だけど底上げするけど、此処では記憶意外にも俺たちも会話も一時的にアンジェの体を動かすこともできるのって、今まで無かったんだよ。

 良かったじゃない。生きてるってことでしょ。体は、無いけど。『クククッ。』

 それって、いつまでいられるのかなぁ。本当に、このままでいいのか?アンジェの邪魔じゃないのか。

 それって、今の歴史や家系で分かる事じゃないでしょう。別に、邪魔じゃないし。ムカつくことも凄く多いけど、清らかで広い心を持っているわたくしに(ひざまず)いて感謝するといいわ。

『ハハハッ』清らかな心を持つ人間は、そんなこと言わない。

 そうかもね。でも、此処では、これが当たり前かもしれないじゃない。

 それはない!)


 あれから、1週間も経つのに、何をそんなに教わらないといけないのだろう。

 アンジェは、既に聞いている振りもしていない。

 駄目な奴なのだ。

 せめて、笑って聞いている振りだけでもとノブに言われたが、『ニコッ』とすると目を閉じて『スピーズピー』と寝るし。


「アンジェ様、またですか。」

 ミリーからの小言で、目をこすりながらあくびまでする。

 もう、限界だわ。この授業は中々に難題だわ。

 仕方ないわね。最終兵器を出すしかないようね。

(ノブ先生、ミリーを、この授業を終わらせて下さい。

 何言ってんの?やるわけないじゃん。

『チッ』ノブも、他に知りたいこともあるでしょ。今なら、ちょっとくらいなら、変わってあげてもいいのよ。

 不要だ。あと、舌打ちも止めろよ。現実に出してる時あるからな、こっちがコエーよ。皆から教えてもらっていること以上になると、今の俺たちの存在に関わるし、アンジェの為にならん。)


 アンジェの目は、血走っていた。

 あれから、毎晩のように、ノブが夜な夜な語ってくるので、寝不足の上に、昼間は容赦なく、覚えているか確認の質問が待っている。

 いい迷惑だ、枕元に立つとは、このことだったのか。

 いや、いつもいるから違うのかな。でももう、いい加減に開放してほしいわ。

 そうしてアンジェの、この願いはようやく叶おうとしていた。

 〔今更だが、エストラン王国の建国は、チェンダール帝国から人間至上主義を唱え独立した事による と。

 帝国は、他種族国家で人族以外も多くいるらしい。また、奴隷制もあり、王国はそれに反発した人族国家で奴隷制もない と。

 エストラン家は、地方の領主で仲間を集め決起した時に、ウィルビス家も参戦したと。

 この独立戦争で、活躍し侯爵を賜ったのが初代 で。

 国王は、4代目でエストラン・カルロス陛下で3代目の時に国王の弟君にバズール公爵を賜った と。

 ウィルビス候モルドレッドは、お父様とハイド伯セルシの叔父にあたる と。

 わたくしのお爺様たちは、帝国との戦争で戦死、セルシ叔父様はハイド伯領に婿入りして、お父様は、リヒタル領を受継ぎ、大叔父の、モルドレッド爺さんの反対を押しのけカルメン男爵家のステフお嬢様を迎えた と。『んんっ、お母様?』

(やるわね、お母様も、流れからいってお父様が狼になったのね。

 いやいや、狼になっては無いよ。それにまたかね、またなのかねアンジェ君。順番も違うよね。

 ぇ、でも私がここに・・・おおう、結婚ね。

 そうそうって、その前に、もう一越え~。

 ん~、『ピンッ』お付合いね。お父様ったら、お母様に何を伝えたのかしら。『ハッ』もしや、ここで狼になって無理やり・・

 アンジェいい加減にしな、エドが気の毒だ。なんで、狼にしたがる。

 そうよね、二人とも、凄く仲が良くて私も安心できるのよ。

 じゃ、話を戻すぞ。)

 大叔父のウィルビス家は、婚姻関係で領地の貴族を親戚縁者にして、領地の安定と拡大をしてきた と。

 王国の侯爵家は、あと一つ、シュナイダー侯爵、王国の海側に領地を持つ中立派で国王に忠誠を捧げる点では信頼できらしい と。

 単独での伯爵家は、4つある と。

 公爵と侯爵のところには、お抱えの伯爵家がいるし、その下にもここのリヒタル子爵のように貴族家はある と。

 王国の右下で隣接している、バストール王国とは友好的な関係を築き帝国へ牽制をしている と。

 バストールは、他種族国家で独立の際に支援を受けていた と。

 王国の右上にチェンダール帝国があり、帝国8将とその軍は有名な話 と。

 帝国とバストール王国の間に、小国ながらアルダート王国があり神殿が多くあって、宗教的に中立国として帝国からの交易もある と。〕


 疲れるわ、と思いながらアンジェは教わったことを整理した。

 王国は、思っていたような国ではなかったわね。

 人族主義って、ノブの世界で物語に出てきていたわね。

 モフモフとか、フワフワとか。

 私もあるのなら、触ってみたいわ。会話が出来るのなら、お茶会でも開いてね。

 妄想の世界に、浸ってニマニマと顔が緩んでいると、『コツッ コツッ』と足音が近づいてくる。

 アニーが、確認の為に最後の授業が始まる。


「アンジェ様、大変良く出来ていらっしゃいましたよ。

 私たちは、分かっておりました。

 エド様とステフ様へは、お伝えしておきます。」

 嬉しそうに、書室出て行った。


 詰め込んだ量は、アンジェにとっては、多かったようで目を瞑ると突っ伏して机に頭をのせる。

 甘いものが食べたいわ。

 日課の鍛錬も、午後の授業も終わったわ。

 今日から、ぐっすり眠れるわ。

 もう、ノブが睡眠学習と言って出て来ることもないわね。

(いや、まだだよアンジェ。これから、8将の事も、王国の事情も詰め込まなきゃ。

 なんでよ。もう無理よ。やる気が出ないわ。大体、なんでそこまで覚えなきゃならないの。

 アンジェは、モフモフやフワフワとお茶したいんだろ。なら、王国では叶わない夢物語だ。それに、国王は、変革に満足しているのか、現状からの動きがない。ウィルビス候の爺さんだけが、身を削り領地の拡大を考えていると思うぞ。

 なんで、そんな事がわかるのよ。

 戦争で、何が怖いか。敵は、勿論だが味方の反旗が致命傷になる。規模にもよるけど、お金もかかるし、人の命もかかってるんだ。税や兵士が戦争にとられると反発がたまる。だから爺さんは、領内の一族化を進めて反発の起きにくい領地運営をしていると思われる。それから一方では、帝国とも国境でしのぎ合っている。爺さんが、国王の協力と言っても、今回の捕虜の事を受けたのも、借りをため込んでいるんじゃないのかって考えられる。国王なら、命令ならば、従わらずをえない。でも、協力だぞ。もしかして、頭が上がらないんじゃないの と予想もできる。

 そうね、私なら『嫌』って言い切るわね。最近は、抵抗しても無駄ですけどねっ。私を、駄々甘やかせてくれる侍女も護衛もいなくなったわ。『ヒーヒッヒ』

 そこっ!不気味な笑いは止めなさい。それに、そこは頑張れよ。引っ張っていく立場だろ。それに、アニー達は十分、アンジェに優しいじゃないか。皆とお茶会もできたじゃないか。

 いーえ。それ以上に、期待されるのが増していくのが耐えられないのよ。どーして、こーなったの。私は、普通にのんびりしていたいだけなのに。

『ククク、ハーッハハ』アンジェったら、自分でぶち壊しといて、普通なんて、手遅れだよ。)


 暫く、アンジェはノブ達と話しながら、王国について話し合った。

 後は、帝国の思惑と8将について、子守歌の様に、しっかり覚えて貰わなければとノブは思った。

 もう、7月も中を過ぎ遊びに行きたくてたまらなくなっているアンジェに、良い知らせと悪い知らせがもたらされた。


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