第四話
巨大な骸骨の腕が徐々に振り上げられる。そして羽虫を潰すかのように俺に振り下ろされる。この瞬間はとてもゆっくりに感じたのは走馬灯と言うやつかもしれない。
骸骨の手が眼前に迫りあまりの恐ろしさに目を閉じてしまった。
しかし、身構えていた痛みは無かった。ゆっくりと目を開くと俺を庇うように立ち骸骨の手を受け止めている人物がいた。
「なにぼさっとしてんだよ」
「い、犬飼」
そう、骸骨の手を受け止めている人物は先ほど見かけた犬飼廉だった。
そんな話をしているとこちらに向かってくる足音が聞こえる。
「見つけました!」
「狸ちゃんちょっと速すぎ」
「狗巻さんはもう少し運動してください!」
近づいてきた足音の主は先ほど見かけた狸塚ともう一人の狗巻と呼ばれた男性だった。
「と言うか犬飼さんはもう少し団体行動を意識してくださいよ!」
「うるせぇよ。お前らがもう少し早くすれば良いだけだろうが」
巨大な骸骨の前と言う非日常を前に日常的な会話が出来るこの人達に驚く。
「それよりも早く解析してくれ。待ってんだからよ」
いまだに叩きつけようとする腕を片手で防ぎながら犬飼は狸塚に言った。
「わかったわよ。狗巻さんは結界をよろしくね」
「了解」
真っ直ぐに巨大な骸骨に構えた。そうすると彼女を中心に不自然な風が吹き、同時に彼女から白いオーラのようなものが立ち上がる。
「おいで"芝衛門狸"!」
白色のオーラのようなものが彼女の頭上で形作り前に見たデフォルメされた狸の様なものに変化した。
「芝ちゃん。怪異解放」
狸はどこからともなく巻物を取り出し彼女に渡した。
「観測完了。妖怪名"がしゃどくろ"は腕に触ったものを握り潰す怪異ね」
「単純明快な怪異だな。変な能力が無い分楽で良いな」
「二人に任せていれば良いから僕も楽で良いよ」
「狗巻さんはサボりすぎですよ!今回は私たち以外に人がいるんですからせめて護るように力を使って下さい!」
「はいはいわかったよ。じゃ、おいで"送り犬""迎え犬"」
そう言うと狗巻と呼ばれる男性は狸塚と同じように白色のオーラが横に集まりハチと同じように半透明の犬が二匹現れる。ただ、ハチより一回り大きい。
「じゃ、妖怪もわかったし始めるか!」
犬飼から二人とは違う紫色のオーラを全身に纏いがしゃどくろと呼ばれる巨大な骸骨と対峙した。