少女が森を抜けるまで
ちょっと気持ち悪い表現が入りますのでご注意を
~数日前~
結局悪臭で凌ぐ作戦に決めた
他はどうやっても分の悪い賭けになるし、どの道このまま汚い場所に居たら病気になる気がするし、いつか家が崩壊するかもしれないから諦めて決行するしかなかった
⋯⋯するしか無かったんだが
「⋯くっさ」
さすがに悪臭の元をそのまま身体に塗りたくるのは危なそうだから、家に残ってたボロい外套を腐った卵や牛乳に漬け込んでみたんだが、どうせならと家の中に生えた雑草等の臭いのあるものも入れてみたところ、予想の数倍酷い臭いになった
⋯⋯これ悪臭袋よりキツいんだが、羽織っていって大丈夫かこれ
一応移動する準備は整った
少し食べて減ったハチミツとビンに入れた乾燥豆が一瓶ずつとちょっと痺れる水が三瓶、ビンにさえ入れればインベントリに容れられたので持ち運びは問題無くなった
衣類として古い子供用のワンピースが二着と下着、両方女性用しか無かったので仕方なく着用、予備はインベントリに
移動用の装備に這いずり移動をする為の手袋と麻袋を複数、後は悪臭が染み付いたボロ外套とまだ形が整っている外套
後はお守り程度だが武器として手作りガラスナイフと錆びたフォークを三本
これが用意出来る全て、力さえあればまだ武器として持てるものはあったけど、元々持っていた武器以外は使えないからなのかインベントリに容れられなかったので断念した
準備を整え、休息を取り体調を出来る限り良くした
そのお陰で傷は痛まなくなったが相変わらず頭痛は治らない
⋯仕方なくこのまま出ることにした
玄関の扉の前で準備をする
麻袋を胸から下を覆う形で収め、手袋をして外套を羽織る
外套を取り出した時点で酷い臭いに気絶しかけたけど、安全の為にフードもしっかりと深く被り覚悟を決めた
そして俺は、初日振りに外に出る
進む方向は正面のホワイトウルフが逃げた方
そこからまっすぐ進んで安全な場所を探す
最初のスピードは早く順調だった
少しずつ休みながら進んで、家が見えなくなった頃
想定外の事態に見舞われた
腐った臭いに釣られたのか大量の虫が群がってきた
対応として綺麗な方の外套を少し破いてマスク替わりにして、なるべく目を閉じて進むことにした
虫が群がってきてからは大変だった
綺麗な外套を利用してなんとか栄養補給や水分補給は出来たが、睡眠は這い回る虫に気が休まらず一切とることが出来なかった
⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
前を見ずに進んでどれ程の時間が経ったのか
トイレなんてあるわけ無い森の中、何度も漏らした
プライドなんてとうに捨てた
地べたを這いつくばってて色んなものを失った気がした
腕も痛いし頭も痛い、身体が怠くなり熱も出てきた
寝たい
辛い
諦めたい
⋯⋯食料と水が尽きた
⋯⋯⋯⋯⋯頭がぼーっとする
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯いたい
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯おと、ない
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ、げんか⋯⋯い⋯⋯
「おーいそこの人、生きてって臭っ!とりあえずってあ!みゃーこが気絶してる!?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯?