全てを奪われた日(下)
2月の土曜日、4月には高3になる俺は午後から始まるボスラッシュイベントに備えて用事を済ませ、後はログインするだけの所まで来ていた。
「さてと飯は食ったし課題は済ませた、あいつは用事で来れないから2人での戦闘か」
「そういやReversalWorldを始めて5年か⋯最初は皆全く信じてなかった上に全く遊ばずにクソゲー扱いしてたのに、今や誰もが神ゲー扱いか⋯」
「んじゃ早めに⋯ん?あー美崎のやつ気が早いっての。まあ今から入る俺が言えたことじゃないんだけどさ」
「それじゃ、行きますか」
「くっ、無念⋯」
妹の美崎ことユウキが繰り出した突きによって、9体目のボス【最後の侍・アヅチ】のHPはゼロになり、戦闘は終了した。
「よし、これで⋯何体目だったっけ、スカイ君?」
「9体目だ、残り1だな」
いつも行ってる数の確認の後、戦闘の疲れか地面に座り込んだユウキ(ちなみに男キャラ)は俺を見上げながら、何かが気になるのかじっと見つめてきた。
「⋯何か付いてるか?」
「いや、現実のおにいに比べてやっぱり違和感しか無くて⋯その、身長差が激しくて」
妹の言いたい事は分かる
確かに多少現実と比べて盛った
うん多少さ、多少(20cm以上)
その結果ちょっと見上げる事にはなっただろうし現実との差で違和感を感じる事は仕方の無い事だ
「⋯おにい、やっぱり身長の事になると面倒臭いな」
「さて、情報通りなら次が最後だが準備は万端か?」
「うん、行けるよスカイ君」
あの後少し休憩した俺達2人は、装備の耐久値やアイテムの確認を終えて最後のボス部屋に続くテレポーターの前まで来ていた。
⋯この後、2人で最後のボス部屋に突入したのだが、何故か戦闘中の記憶が抜け落ちていて、覚えているのは戦闘が終わり負けていたらしく、倒れたまま動けない中で帝王を名乗る男とそれに付き従う女に肉体を作り替えられ、背中に何かしら刻まれたり胸を貫かれ何かを入れられたり大量の針で足を潰されたりして激痛を感じて気絶し、次に気が付いた時には全く知らない森の中に居たんだ。
補足
スカイの本名は緋月 空
身長158cm、背が低いのを気にしていて指摘されると無言で急に黙って指摘した人をじっと見つめてくる
手は出さないし何か文句を言ってくる事もないけど、無表情で見てくるので地味に怖い
ちなみに当分本名は出て来ない模様