辺境の街と冒険者ギルド(上)
どうにか恐怖で震えたシエルを魔法や飴を食べさせる事で落ち着かせ、少し寄り道をした後
どうかトゥールが出てこない様にと願いつつ、俺は落ち着いた様子のシエルを連れて冒険者ギルドに来ていた
「ようこそ冒険者ギルドへ!今日はどの様なご用件でしょうか?」
「今日はトゥール⋯と一緒に行動しているこの子を連れてきた、彼は今どこに?」
あいつに会う気は更々無いので設定として俺は、顔見知り程度の女が手助けとして名も知らない少女を連れてきた、という事にしている
「トゥールさんと一緒に⋯ですか、失礼ですが貴女はどちらで知ったのでしょうか?」
「あー⋯⋯実はトゥールがこの街から出る際に冒険道具を売ってる店で言っていたのを聞いて、友人が以前世話になってたのと、無龍が近くに出現したのを聞いてな、正直詳しくは知らない」
嘘は言ってない
あいつは本当に言っていたのを(猫の姿で)聞いていたし、(自称友人だが)友人の世話になったてるし、無龍も(その場で)出現したのを聞いていたから嘘ではない
「⋯嘘はついてませんね、分かりました。ではトゥールさんはギルド長との話でまだ戻ってきていませんので、戻ってくるまでの間は待合室でお待ち下さい」
よし、どっかの世界で異世界の勇者が生み出した嘘発見器に引っ掛からなくて良かった
別に悪い事をしてる訳じゃねーから問題は無いが、嘘認定されたら面倒な事になるのは確定だからな、下手すりゃトゥールの野郎に出くわす可能性もあるし
⋯何はともあれ
「悪いが私はこれにて失礼するよ、この後用事があって長く居られないのでね」
あいつの気配が動き始めたし、これ以上この姿で居たら絶対出くわすからな、逃げるに限る
「え、ちょっと待って下さい、まだ名前も聞いてませんし、この子の事についてもまだ!⋯ああもう行っちゃった」
「仕方ないわ、とりあえずこの子は待合室に連れていかないと⋯そういえばこの子、さっきから一言も喋ってないけど、もしかして寝てる?」
「おはよう、もう昼だよ」
気が付くと、ちょっと豪華そうな部屋のソファーで寝かせられていた
⋯トゥールさんがいる所から、多分冒険者ギルドに着いたらしい
「本当は僕が迎えに行く筈だったんだけど、優しい人がいてくれて良かったよ。⋯でも受付嬢さんに聞いたけど、真っ赤な魔法使いには覚えがないし、名乗らなかったらしいからちょっと警戒しないと」
そういえばみゃーこの人の姿ってトゥールは知らないんだっけ?⋯なんか面倒臭い事になったなー
「ねえシエルちゃん、ここに連れてきた赤い人について何か聞いた?」
⋯仕方ない、知られたくないらしいし誤魔化すか
一応ミエからは話を聞いたからその通りに言えば問題はないはず
「道具屋で話している所を聞いて、友人が世話になってたのと無龍の出現を聞いて来たって言ってた」
「あー⋯やっぱりあそこかー⋯⋯受付嬢さんもそう聞いたらしいし、見た目だけなら小さい子供のシエルちゃんにもそう言ったのならそうなのかな?」
「んーまあいいや、特に何かされていた様子は無いし、悪意は無さそうだから一旦置いておこうか」
是非そうしてやってくれ
「それでここは?他に誰も見えないけど、まさかトゥールさんの部屋?」
「いや、この部屋は違うよ」
「ここはギルドマスターの部屋でね、マスターは僕と話した後にシエルちゃんを連れてきてからまた会う予定だったんだけど、予想以上に早く戻ってきてしまったからね」
「多分今はまだ無龍についての指示で戻って来ないんじゃないかな、僕は向かってきてはない筈だって言ったけど、用心深い人だから偵察依頼でも出ると思うよ」
へー⋯
「シエルちゃん⋯君、興味無いでしょ」
「人についてはあまり⋯正直そのギルドマスターって人の部屋に何で来る事になったのかが疑問なんだけど」
普通こういうのって強い奴が話をしたいからってギルドマスターに呼ばれるんじゃないのか?
現状貧弱な俺が呼ばれる理由がよく分からないんだよね
「なんかまたネガティブな方に考えている気がするけど、ここに来た理由はシエルちゃんがトッププレイヤーだったから」
「それと、帝国に対して覚えてないとはいっても戦う意志があるからだね」
⋯それは確かに、出来る事ならこの手で帝王をぶっ倒したい程度には
「だからここに来たんだ、表向きには冒険者ギルドとして、そして裏では帝王の排除を掲げる打倒帝国連合に」
「詳しい話は彼⋯もしくは彼女なギルドマスターにして貰うから、少し待とうか」




