全てを奪われた日(上)
始まりは5年前
VR機器がある程度普及し始めた頃、何の情報もない無名の企業から現在の技術では作れる筈が無いあり得ないゲームが発売された。
そのゲームのジャンルはフルダイブ型VRMMORPG
それも現実と区別が付かない程にグラフィックは綺麗で、NPCも人と何ら変わりなく接する事が出来るというし、何とそのゲームはVR機器なら何でも良く回線さえ適当なものでも問題無くプレイ出来ると断言していた。
当時は殆ど信じる人は居なかった。
それは当たり前でフルダイブ技術はおろかグラフィックやAIの技術もそれには遠く及ばないのに無名の企業が作ったゲーム等信憑性が無かったからだ。
とはいえ何にでも可能性があれば試す奴は多少出てくるもので「ちょっと金をドブに捨ててくるw」とSNSに書き込み購入する輩が存在してたのもあり、紹介用の画像や映像の真偽はすぐに判明する事になった。
正しかったのだ
それも例え数千円で買った安いVRゴーグルでも何ら問題無く、一切の遅延も起こらずにプレイ出来たのもあり、これまでのゲームと比べ物にならないレベルから新時代が来たとまで言われる程に完璧だった。
そこからだ
今考えればおかしい勢いでプレイ人口は跳ね上がり、他のゲームの売り上げがほぼゼロになる位に人気になり、瞬く間に人気1位を圧倒的差で獲得した。
その後5年の間、多数のゲーム会社が潰れる中で変わらず人気を独占していたこのゲームは、ちょうど5年が経った日に超大型アップデートを発表、その前日に前夜祭として一度きりのボスラッシュイベントが行われる事になったのだった。