初めての採取
~辺境の森・入り口付近~
門から森の浅い所までは特に危険な動物や魔物に出会う事もなくたどり着いた
居たのはリスやウサギといった動物位で、見かけた動物達も近くを通った俺達に警戒することもなく自由に過ごしていた
「ここの動物は殆ど狩らないから人に対して警戒心が薄いんだよね。近付いたり攻撃しようとしたら逃げるけど、見てる分には全く逃げないから狩人の休憩場所になってるんだよ」
「へえー⋯⋯そういえば動物で思い出したけど、あの猫は?」
「猫?⋯ああみゃーこの事?」
「うんあの変な猫」
やたら人っぽい気味の悪い⋯は余計か
「みゃーこは気まぐれでね、重要な用事がある時は大体付いてくれるんだけど、それ以外の時はどこかに行っちゃって分からなくなるんだよ⋯村や街から出る日を言ったらその日には戻ってくるけど」
つまりどこに居るかは知らないんですね⋯
猫ってそこまでしっかりしてたっけ?
「それにいつもごはんをあげても食べようとしないんだよね⋯多分どこかで食べてきてるんだろうけど、出掛けてない時も食べようとしないから不安になるんだよ」
⋯何者だよその猫
普通餌を出されたら食べるんじゃないのか?
まあ居ないならいいや、何か不気味だし精神的に楽だから出来れば会いたくないし
謎猫の話を聞きつつ車椅子をトゥールさんに押してもらい進む事数分、動物の憩いの場から少し離れた所にある薬草の群生地に着いた
「それじゃあ私は周囲にゴブリンがいないか見回りに行ってくるから、トゥールくんとシエルちゃんは薬草採取頑張ってね」
「はい、シンシアさんもお気をつけて」
ここでシンシアさんとは別行動
というのも、この薬草の群生地は動物の嫌いな匂いのする薬草も生えているらしく、動物が寄り付かないので比較的安全に採取できる場所だかららしい
とはいえゴブリン等の魔物には特に効果もなく普通に現れるので、護衛としてトゥールさんに付いてもらっている
ところで何故戦わないで採取で経験値をと思うかもしれない
確かに経験値を溜めてレベルを上げるなら戦って敵を倒せば早く倒せる
トゥールさんかシンシアさんに弱らせてもらってトドメを差せば安全に上げられるだろう
けど駄目なんだ⋯
筋力強化とナイフを貰った時に、試しにと防具用に使われる丈夫な布の切れ端をナイフで突いてみたら、破れず穴が開かなかったんだよ⋯
ゲーム時代では寄生プレイ⋯つまり他人を利用して楽するプレイの仕方について、異様な程厳しかった
寄生した事が判明すると、一定時間経験値の極端な低下に始まり、アイテム入手不可にパーティー加入の不可、セーフティエリアの入場不可等々⋯
現実ではそんなものは無いかもしれないけど、他に選択肢がある中では試す気にならないレベルの厳しさだったんだ
まだ一撃で仕留められるなら、安全に倒す為のお膳立てをして貰っても寄生判定は無かったと思う
けど動けなくされた相手を手を借りて倒すしかない状態の自分だと確実に寄生判定を貰う羽目になるだろうから戦うのは今は無し
次の策として、生産職のみに許された採取と生産による経験値獲得でのレベル上げを狙う事になったのだ
⋯とはいえ
「これは⋯⋯⋯なんとなく錬金術で使ったやつと似てるけど⋯⋯」
ゲーム時代でもほぼ触ってこなかった薬草なんて全然見分けが付かない俺は、前に使った薬草を思い出し少しずつナイフで刈り取って採取していたのだが、似た物が大量に生えているこの場所では何がなにかを確認しながらだとかなり時間がかかってしまった
正直今刈り取った薬草も、本当に薬草なのか雑草なのか全く判別出来てないので、とりあえず採取してから安全な場所で確認してもらう事にはなっている
⋯一応薬草採取をよくやっているらしいトゥールさんに特徴を聞いてはみたんだけど
「あの錬金術に使った薬草かい?あれは他のより若干青っぽくて剣の刃の部分に似てるよ」
ってことらしいが、観察しても明らかに青い草があったり、同じ見た目の草がここには大量にありすぎて当てにならなかった
シンシアさんにも聞いてはみたけど、あの人は薬草には詳しくないらしく申し訳なさそうに
「ごめんなさい、美味しい木の実なら知ってるけど薬草については詳しくないの」
と言っていたのでこちらも不発
⋯こんな事なら予め薬屋にでも行っていくつか薬草の特徴を聞いてくるべきだったな
薬草採取を始めてしばらく経ち、薬草らしきものを刈り続けて纏めた30束をインベントリに収納してから数分が経っていた
体力が尽きた俺をトゥールさんに車椅子に座らせて貰い、草の汁で汚れたナイフを軽く布(突き破れなかったやつ)で拭き取り、シンシアさんが戻ってくるのを待っていると、疲れからか急に睡魔が襲い掛かってきた
座って楽な体勢になってるから凄く眠い⋯!
「シエルちゃん駄目だよ、やる事終わって疲れてるのは分かるけど、ここで寝るのは危ないから起きてないと」
「分かってる⋯⋯」
「そうは言っても目が閉じかけてるよ?」
「分かっ⋯てぇう⋯⋯⋯」
「⋯駄目だねこれ、絶対寝ちゃうね」
「わぁ⋯⋯ゆぅ⋯⋯⋯ゆ⋯⋯」
「仕方ない、ちょっと開けた場所で焚き火でもして待つとしますか」
「シエルちゃん、元々は男の子だと思うんだけど、まだ身体の変化に慣れてないからか限界を超えて作業しがちだね」
「僕が居たから良かったけど、下手すると死にかねないねこれじゃ⋯」
トゥールはシエルを小さな子供扱いしている!




