1,個々は何処 貴女は誰
ーー気づけばいつの間にか堕ちていたーー
小学生の頃から可もなく不可もない人生を歩んでいた俺。いつかビックになってやる、なんて
夢は、もうとうの昔に置いてきた。上ばかりを見て進んできた人生。周りを見ると自分は上に
登ってるんじゃなくて、落ちてることに気がついた。くそが……
「……はぁ」
毎日10時間をゆうに越える長時間労働を終え、帰る場所はボロいアパートだ。ただいまなんて
最後に言ったのいつだろうな……
「寝る、か……」
ベットに横たわるといつもの後悔が襲ってくる。
ゲーム実況やプロゲーマー。そんな夢物語のような職業を目指していたけれど、実際には
社畜として彩の欠片もない人生を淡々と生きている。なんか…もうどうでも良いや……
社会の犬を辞めて人生におさらばしよう。そう思ってロープの首輪を着ける俺は、実に滑稽なんだろう。
じゃあさようなら。来世があるなら、まともな人生をよろしく。
ーー気づけば落ちていたーー
「うああ!?」
なんだ、夢か…とんでもない悪夢を見てた気がする。首吊り自殺とか想像するだけで鳥肌が止まらないな…
う、ん?それにしても、ここは何処だ?明らかに俺の部屋ではないな。見知らぬ天井ってやつだ。異世界転生…するにしても死ぬ原因がないからな…。とりあえずこういう時は探索でもするのが定石だろう。
俺はベットから腰を上げ起きあがる。なんか…体が重い?感じがする。主に胸あたりが
「え、あ、…は!?」
胸がある。ありえないありえない。胸がある……!!
これ、揉んでみても…いや駄目だ駄目だ。まずは探索をしろ馬鹿!
まわりを見渡すと、石造りの部屋に質素なベットがひとつ付いてるだけの簡素な部屋、ていうより
牢屋か?よく見たら鉄格子っぽいのあるぞ。……体つきが変わったのもこんな訳がわからない分からない場所に居るのも納得できる理由が異世界転生くらいしか俺の頭だと思いつかない。
「あ、あの!誰か居ませんか!?」
さっきまではテンパってて気づかなかったが、これ声まで女になってる!?らんまみたいなことになってんの!?誰か助けに、って俺が頼る人なんて誰も居ないか。牢屋の外に聞こえるように叫んだつもりだったけど
誰も来ないな。看守とか居ないのだろうか?
ーーそれにしても今は朝なのか?こんな真っ暗な所だと時間感覚が狂う。
どう、しよう。急に眠くなってきた。もしかしたら一回寝たらなんか起きるかもしんないし、
一旦、寝ようかな。瞼が……
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「起きろ!!朝だぞ馬鹿野郎!」
うるさいなぁ……。こっちは毎日朝の5時には……休みの日くらい……
というか、朝起こされたの久しぶりだな…なんか涙でそう。多分看守とかそこらへんの人だろうけど。
仕方ない。おはよう童貞を奪ってくれた看守さんに朝の挨拶でもするか。
瞼を開け…開かない!?
どういうことだ!?金縛りになったみたいに動かないぞ!?
「早く起きろ!!殺されたいのか!?」
いや違うんです起きたいんだけど体が動かないんですって!ああ口も動かないからなにも言えないぃ!
「うっさいわね阿呆。ぴーぴー鳴く暇があったら仕事に戻りなさい」
誰の声……だ?確か昨日聞いたような……
ーー瞼が開き目に光が入ってくる。
どうなってんだよいったい……体が今度は勝手に動き出したぞ…。
もうなすがままになーれ!
『あんた、なに一人で喋ってんの?心の声にしたって配慮が欠けてんでしょ。死ぬか黙るか選びなさい』
今度は口は動いていないのに、同じような声が聞こえてくる。
『あとその解説口調みたいなのうざいから辞めてくれる?』
これは明らかに、
俺と会話してるのか…?




