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【第一部・完結】ゴリラじゃなくて、ご令嬢! ~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~  作者: 牧野ジジ
第3章 〜〜 大国の皇太子さまを好きになったけど、身分違いなので、あきらめます! 〜〜
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35. ノノ


邪魔な従者を、倒すため。


車を持ち上げた私は……。


がけっぷちでよろめいて、谷底に落ちそうになった。






いかにも、女の子らしく。

つい、うっかりドジをして、うっかり死にかけた私は。


愛し合う二人の仲を、邪魔しようとしてた従者に……。

がけっぷちで、押し倒された。







主人にタックル、かました奴は。

レディの上に乗ったまま、なぜか逆ギレし始めた。


「……あなたは、何をやってるんです!!


いくら、ゴリラだからって、車を武器にするなんて……。どこまで、ゴリラなんですか!?」







小さなドジをした、レディは。

ほっぺをかいて、ごましした。


「えへへへへ……。

いやぁ~。まあ、ぶっちゃけて言うと……。


いけるかなーと思ったんだけど。

ちょっと、無理だったみたいね。





だから、まあ……。

なんつーか、その……。


手間かけさせて、悪かったわね?」





そう言って。

私はそっと、腕を伸ばすと。


……従者の肩に、やさしく触れた。







従者の肩が、ピクッと動き。

私のたおやかな、右手は……。



一瞬で、ふり払われた。







思春期まっさかりな、奴は。

顔をプイッと横に向け、私から目を背けると。


不機嫌そうな顔をして。

なぜか、言い訳し始めた。






「かん違いしないでください。


おれは、ただ……。

お二人の安全のために、あなたにタックルしただけです。


あなたみたいな頑丈な人が、ケガをするとも思えませんしね」






……とか、なんとか言っちゃって。

怒ったような顔、してるけど。


ほっぺたは赤く、なってるし。

口元はちょっと、ゆるんでて……。


ぶっちゃけ、ちょっと、うれしそう。







あくまで、素直じゃない奴は。

ぶつぶつ説教しくさったあげく、わけの分からんクギを刺す。


「……そういうわけで。

あなたにタックルをしたのは、おれの仕事の一環であって……。


あなたのためじゃ、ありませんから」







私は、あきれを押し殺し。

大人のお姉さんらしく、お子様の労をねぎらってやる。


「……ううん。

あんたが助けてくれなかったら……。


私、崖から落っこちて、車と一緒に燃えてたわ。


だから私ね、本当に感謝してるのよ?






……あんたの甘さと、バカさにね!!」


「……えっ?」







私は従者を、突き飛ばし。

ゴロリと横に、転がった。


……よしっ! 間一髪!







従者の肩にくっついた、木の実のカラが、パキッと割れて。


ーー緑のツルが、ふき出した。







一人で照れていた、従者は。


今さら、私の狙いに気づき、あわてて木の実を取ろうしたが。


気づくのが、遅すぎた。








太くてウゾウゾ、うごめくツルは。

従者の細い胴体を、ギリギリギリッと、しめつける。


生意気な従者の顔が、苦痛と屈辱にゆがんで。

ジタバタあがく、抵抗も。


……きれいさっぱり、ムダになる。






触手みたいな、木のツルは。

ボワッと、白い煙をふくと。


鎖と南京錠に、変わった。







鎖で縛られた、従者は。

なすすべもなく、地面に倒れ。


頭のよすぎる令嬢を、殺意に満ちた目で、にらむ。







ウンザリするほど、ウザかった奴の。

無様な姿を、見下ろして。


おしとやかすぎる令嬢は、お嬢様らしく、あざ笑う。


「オーホッホッホッホッホ!!

でっかい口を叩いた割には、ずいぶんあっさり、やられたもんね。


ほら、鏡で見てみなさいよ。

今のあんた……まるで、イモ虫そっくりよ?」






イモ虫みたいな、従者のガキは。

お嬢様の言いつけに、背き。


生意気な目で、私を見上げた。






……ほほぅ。

チビ、貴様……。


この状況で、まだ逆らう元気があるのか。


なかなか、見上げた根性じゃねえか。








機嫌のよくなった私は、家来にほうびをくれてやる。


「冥土のみやげに、教えたげるけど。


そいつはあのクズ特製の、『マジカル☆ブービートラップ』よ。

あんたみたいな貧弱な奴にゃ、絶対、そいつは壊せないから。


……残念だけど、これで終わりね。





やっぱり、勝つのはこの私!


たかだかモブの分際で、この私にタテ突こうなんて……。

たくさん光年、早いのよ!!」







全身を縛られている従者は、意味不明なキレ方をした。


「光年は時間じゃないって……。

何度言ったら、分かるんですか!?」







「……はぁ? あんた、なに言ってんの?

光年つったら、時間でしょ。

そんなことも分かんないなんて……。


あんた、ひょっとして、バカなの?」




「光年は、時間じゃなくて、距離ですよ!

そんなことも分からないから……万年・赤点なんですよ!!」







まったく物を知らない奴を、私は華麗にスルーして。

ロミオとジュリエットを、つかむ。


「さぁーてと。

ウザい奴は、お片付けしたし。

あとは、あんたたち二人ね」







私に持ち上げられた、殿下は。

ととのった顔を、青ざめさせた。


「……待て、ロザリンド。まさか、お前……」







「……あら。

ボケッとしてるあんたにしては、めずらしく察しがいいわね。


乗りかかった船だから、向こう岸まで行かせてあげるわ。


つーわけで。

受け身はちゃんと取りなさいよ!」


「ギャーー!!!!」







私は、かけ落ちカップルを、崖の向こうに、放り投げると。


二人の無事を確認し、「サッサと行け」と手で示す。



ダチは笑顔で、うなずいて。

私にペコリと、お辞儀をすると。


ヘタレ野郎の手を引いて、式場の方へ向かって行った。






私はダチを、見送って。


……ほんのちょっぴり、しんみりすると。






グルグルにしばられて、身動きとれなくなってる従者に……真正面から向き合ってやる。


「さぁーて、どうしてくれようかしら?

あんたには今回も、さんざん邪魔されまくったものね。


それに、日頃のイライラも、空の上まで積み上がってるし。





まずは、このハイヒールで……。

思いっ切り顔を、踏みつけてやるわ!!」







しかし、私の高いヒールは。


……地面にグサリと、突き刺さり。



踏まれてるはずの、クソガキは。

自由の身になって、立ってた。






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