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32. ノノ …………1章・完結

推しのスピーチが終わると。


私は式を抜け出して、東門までダッシュした。






「式の途中で、抜け出すなんて……。

あなたは、何を考えてるんです!



説教好きの、ガキを無視して。


私は門のまわりを歩き、王子の上に落ちてくる、鉄骨がないか確かめた。






……ふぅ。

どうやら、大丈夫みたいね。



死亡フラグも、折ったことだし。


あとは、王子様と一緒に、仲よく下校するだけね。







従者のうるさい説教を、いつも通りにスルーして、ポンポン、メイクを直していると。



王子様の姿が見えた。







たまらなく嬉しくなって、私はブンブン、手を振った。


王子様は、慣れた手つきで、私にそっと、手を振り返す。






ああ……。


なんだろう、私いま、すっごい幸せ。



もしかして、これが……。


前世じゃとんと縁がなかった、青春ってやつなのかしら。






ーーしかし、そのとき。


ゴウン、ゴウンと、音が鳴り。


入道雲の向こうから、飛行機が飛んできた。






ドクロマークのついた、飛行機は。


王子様の真上に来ると……。


ポロッと、何かを落っことす。






私はヒールを脱ぎ捨てて、死ぬ気になって駆け出した。


……うおおお!!

間に合え! 間に合え!!


お願い!

もう、なんでもいいから……とにかく、なんとか間に合って!!!






私は、ただ……。

大好きな推しと、幸せになりたいだけなの。


愛する人が、ケチャップになったところは、絶対に見たくない……けなげで恋する、乙女なの。


そんなささやかな願いも、叶わないって言うのなら……。こんなクソゲー、やめてやる。






だからお願い! 間に合って!


神様、仏様、悪魔様!!

私に推しを、救わせろォオオオ!!!!!






ーーそして私は、風になった。







ーーーーーーーー


気がつくと、私はベッドに寝かされていた。


……あれっ。

ここって一体、どこなのかしら。


なんだかちょっと薬品くさいし、病院の中とかじゃないかしら。






…………!!


それより、ミハエル様は?


ミハエル様は、どうなっちゃったの?









私の視界のすみっこに、愛しい人のお顔が映り込んだ。


「あっ、気がついたみたいだね」






ミハエル様……。

よかった、生きてた。


ケチャップにならないで、ちゃんと人間のままだわ。



「……ん? あれっ……」


そこで私は、ようやく自分の置かれている状況に気がついた。






私、いま……。


ベッドの上で、推しに膝枕されてる!?






私はパニックになって、勢いよく、はね起きた。


勢いがつきすぎて、ベッドから転げ落ち、背中を床に打ちつけた。






「み、みみみみ……ミハエル様!?

なんで膝枕……。ていうか、ここは誰? 私はどこ?」



ミハエル様は、落ち着き払った声でおっしゃった。


「ここは、保健室だよ。

君はぼくにタックルをして、そのまま意識を失ったから、タンカで運び込まれたんだ。


それに、ぼくの方も……背中を少し、ケガしたし」







「……ミハエル様が、背中におケガを!?

そんなけしからんことしやがったのは、どこのどいつなんですの?」


「うん。それはここにいる、君だね」



二人きりの部屋に、気まずい沈黙が訪れた。







「えっと、その……。

私、そんなつもりじゃなくて……。

とにかく、ごめんなさいでした」


「いいよ。そんなに大したケガでもないし。

君につけられたと思えば……この痛みも悪くない」






……あの、ミハエル様。


あなた、ちょっと、その言い方……。

なんか変な意味に聞こえるんですけど。


ひょっとして、わざとやってます?







「それにしても、見事なタックルだったね。

まるで君がワープして、突然、ぼくの目の前に、現れたように見えたよ。


……さて。

君も目が覚めたことだし、先生を呼びに行こうかな。


だけど、その前に……君に聞きたいことがあるんだ。いいかな、ロザリンド?」






私は思わず同意した。


「えっ? あっ、ハイ。何でもどうぞ」


「君は今朝、西門には近づくな、東門に来てくれと、いやに熱心に言ってたね。


……ひょっとして、ぼくを殺すつもりだったのかな?」






私の背中を、汗がダラダラ、伝わりだした。






いや、違います、ミハエル様。


私はあなたを助けようとして……。


でも、状況だけ見ると……。確かに、そう見えなくもないかも。






ミハエル様は容赦なく畳みかけた。


「もう1回くり返すよ。馬車を降りたとき、君は東門に来るように言ったね。


君はなぜ、東門にこだわったんだい?


まさか、鉄骨が落ちてくるのを、前もって知っていたわけじゃないよね」






えっと、その……。おっしゃる通りなんですけど、ちょっと手違いがあったというか……。


「どうして理由を言わないの? 黙ってないで、なんとか言ったら?」


「東門にこだわった理由は……」

「理由は?」







女らしく覚悟を決めて、私はハッタリをかました。



「……東門に、こだわった理由は。


恋愛運アップの方角が……東だったからですわ!!!!」






すっかり腹をくくった私は、次から次へと、嘘をつく。


「私、実は、今日……。

キスまで進むつもりでしたの!


だから、バッチリおしゃれして、あなたを待ってたんですけど……。





ぼんやりお空を見ていたら、鉄骨が落ちてくるのを、ぐうぜん目撃しましたの。

だから、走って助けに行きましたの。


……これが、事件の真相ですわ!!」







王子は、すかさず突っ込んだ。


「最後だけは本当だけど、他は全くのデタラメだね。それじゃあ、もう1回聞くよ。どうして東門にこだわったんだい?」


「それは……」

「それは?」






「女の子の秘密です!

もし罰を受けても、絶対、理由は吐きません!」


「……へえ。

君がその気なら、こっちにも考えがあるけどね」


「こうなりゃ、ヤケです! なんでもかかって来いですわ!!」






王子様の美しい顔が、突然、グッと寄ってきて。


私のくちびるに……。

柔らかいものが、ふにっと、触れた。



「……助けてくれて、ありがとう。

君にケガがなくて、よかった」







「えっ……。

やっ、私はその……。えっと……」



私がワタワタしていると、腹黒ドSなプリンスは、一段と笑みを深くした。





「それで、君はなぜ、ぼくに危険がせまっていると

、あらかじめ知っていたのかな?


他にも、知りたいことがある。

君はどうして、突然魔力を持ったんだろう。


本当に……心当たりは、ないのかな?」






「……言いません!

絶っ対、言わない! それについては、死んでもノーコメントしますわよ!」


「じゃあ、もう1回、キスしてもいい?」






私はあわてた。


「いや、ちょっ……。待って! 待ってください!!

して欲しいけど、ちょっと今は、心の準備が……。

ていうか、黙秘するための精神力が、足りなくなるから……」


「じゃあ、精神力が尽きるまで、させてもらおうかな」






ひえー。


この王子様、腹が黒いよー。


知りたいことがあるからって……。

気のない女に、ここまでするか!?






ーーそのとき、ドアがガラリと開いて。

保健室に、従者が入ってきた。


「失礼します、ミハエル様。


……うちのゴリラ、まだ寝てますか? これ以上起きないようなら、頭の医者を呼びましょう」







一瞬の、スキをつき。

私は王子の魔の手から、命からがら抜け出した。



窓から外に、飛び降りて……ガシッと、地面に降り立つと。


裸足のままで、夕陽に向かって駆け出した。






「ガラスの弁償」と言う従者の声が、後ろから追いかけてきた。


こうして、私の第二の人生……。


死亡フラグと、イケメンと、トラブルだらけの学園生活が、ババンと幕を開けたのだった。






【1章・完】




ここまで読んでくださった方、ブクマしてくださった方、評価をつけてくださった方、本当にありがとうございました。


もし、よろしければ、

下の「☆☆☆☆☆」から評価をいただけますと、作者が泣いて喜びます。





2章の投稿開始は、

2022年の2月~3月の予定です。


皆さま、どうぞ良いお年を!






ーーーーーーーー

(2022.2.12 追記)


ブクマや評価をくださった方、本当にありがとうございます。

皆様のブクマや評価が、続きを執筆するうえで、大変はげみになっております。



2章の投稿開始は、【3月下旬】になる予定です。

連載が再開するまで、もうしばらくお待ちください。





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