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15. ノノ


 盗んだ魔剣を、たずさえて。

 いにしえのドラゴンに、果敢に勝負をいどんだ私は。


 剣の威力をマックスにして、スバリと、ボスを切りさいた。




 しかし。

 いざ、ボスにトドメを刺そうとした瞬間。


 魔法の剣が、動かなくなって……。


 中から、妖精が出てきた。




 剣の中から、突然、出てきた妖精は。


 ゆるくカールした髪を、肩のところまで伸ばして、派手なローブをはおってて。


 髪とおんなじ明るさの、大きな茶色い目の下に、泣きボクロがチョンとついてる。




 顔立ちはめちゃくちゃ美形で、天使みたいに愛くるしいけど。


 人をバカにしたみたいな、腹の立つニヤニヤ笑いは……。


 どっかのクズな魔術師の、子どもみたいにそっくりだ。




 クズそっくりな妖精は、性格の悪そうな、ムカつく笑顔でこう言った。


「やあ、ドロボーのお嬢さん。

 私の作った魔法の剣は、気に入ってくれたかな?




 ……気に入ってくれた?


 そうか、それはうれしいな。

 ところで、ここで残念なお知らせがあるんだ。


 体験版の試用期間は、実はこれでおしまいなんだ。




 と、いうわけで。


 この剣をもっと使いたいなら、製品版を購入してね!

 価格は1億ゴールドで、私の口座番号は……」




 お支払い方法の、アナウンスが終了すると。

 私は、クズに向かってどなった。


「……ちょっと待ちなさいよ、クズ!!」




「なんだい、ゴリラのお嬢さん?」


「体験版って、どういうことよ。

 もし、試用期間が切れたら……。

 この剣は、どうなっちゃうのよ?」


「もちろん、使えなくなるよ。

 お金をはらわない人には、使わせなくて当然だろう?」




「〜〜……っ!!


 分かった、はらう!

 はらうから!!」




 クズは、うれしそうに笑った


「はらってくれるの?

 それはよかった。


 じゃあ、支払いが終わったら、受け取った解除キーをここにさしてね。


 それじゃ!」





 そう言うと。

 クズの姿は、パッと消え。


 魔法の剣は……。

 うんともすんとも、言わなくなった。




「てめ……。

 おい、ざけんなよ、クズ!


 金なら、はらうっつってんだろが!!

 さっさと戻って来いや、オラッ!!」




 私が、クズをののしってると。


 それまで、だまってた龍が、重々しく口を開いた。


『その剣は……。

 さては、小娘、貴様……。


 あの賢者の仲間だな?




 ……言え、小娘!

 私を封じた……あの男はどこにいる!?』




 私は、正直に言った。


「あんたが探してる賢者は、1000年前に死にました。


 つーわけで。

 あきらめて、死んでください」




『嘘をつくな、小娘!

 貴様……私を、愚弄する気か!?


 あの冷酷な男が……。


 私以外の者に、殺されるはずないではないか!!』



「ウソなんて、ついてませーん。

 賢者さまは、くたばりましたー」





 かつて、この地を苦しめた龍は。


 するどく、とがった銀色の爪を……。

 私の顔に、つきつけて。


 おどすように、こう言った。





『……もう一度聞くぞ、小娘。


 大賢者・ニコラスはどこにいる?


 正直に答えれば……。

 命だけは、助けてやるぞ』




 私は、正直に答えた。


「だから、賢者は死んだんだって。

 ひょっとして、あんた……ボケてんの?」





 ーー大魔王につかえた、龍は。


 銀色の瞳に……。

 憎悪に満ちた、冷たい殺気をにじませて。


 私の顔を、ジロリとにらんだ。




 龍の怒りが、濃くなるたびに。


 灰色だった湖の水が……。

 どんどん凍って、白くなり。


 霧と、冷気が強くなる。





『…………。


 人間は、やはり……。

 おろかで、みにくい生き物だ。




 舌の根だけで、いつわりだらけの真実を語り。


 友情や……。

 忠義さえをも、反故にする。





 貴様らのような、汚らわしい生き物は……。


 一匹残らず!

 この地上から、消し去ってくれる!!』




 ボスのビームが、飛んできたので。


 チビは、ふたたび私をかかえ、別の遺跡のかげにかくれた。


「……おお、サンキュ」




 レディのお礼を、スルーして。

 口うるさいチビの従者は、ご主人様を責めたてた。


「なぜ、本当のことを言ったんですか!


 適当なウソをついておけば、見逃してくれたかも知れないのに……!!」





 私は、堂々と答えた。


「あいつには、賢者様は死んだんだって、分からせないとマズいのよ。


 ミハエル様と死んだ賢者は、顔がそっくりなんだから。

 あいつが、ミハエル様に会ったら……。


 賢者様だとかんちがいして、全力で()ろうとするわよ?」




 うるさい従者は、納得しかけた。


「なるほど、それで……。

 いや、ちょっと待ってください。


 お嬢様はどうして、賢者の顔を知ってるんですか?

 その人が亡くなったのは、1000年も前のことなのに」




 私は、根も葉もついてないウソを、その場でテキトーにこさえた。


「ミハエル様と、賢者の顔がそっくりなのは、歴史オタクの間では、有名な話らしいわよ。


 ガイドのトムの話では、確か……。

 なんとかってー古いお城の、壁かけに描かれてる絵が……ミハエル様にそっくりらしいわ。




 つーわけで。


 ミハエル様が来る前に、サクッとケリをつけるわよ」





「でも、おれたちだけで、どうするんですか?

 魔法の剣も、使えないのに……」


「うるっさいわね!

 それを、いま考えてるの!!


 人が頭を使ってるときに、横からゴチャゴチャうるさく言うと……。


 この剣みたいに、こうしてやるわよ!!」




 私は、両手に力をこめて。

 剣を、ベキッとへし折ろうとした。


 ーーすると、突然。


 にぎってた剣の刃が……。

 炎みたいに、熱くなり。


 私は、剣を地面に落とした。




「……うあっち!!」





「ひどいなぁ。

 私の最高傑作を、勝手に折ろうとするなんて……」




 思わず、剣をまじまじ見ると。


 赤い宝石の中から……。

 ふたたび、クズが現れた。




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