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8. ノノ


 放課後に居残って、わいわい練習をかさねて。

 そしてむかえた、舞台当日。


 ボスの衣装に着がえた私は、楽屋の奥にじんどって……。

 鏡にうつった自分の姿を、うっとりとながめてた。




 ーー今宵、私が身にまとうのは。

 黒いベルベットの、ドレス。


 スポットライトに照らされて、あちらこちらに

散らされた、小さな白いダイヤモンドが……夜空の星のように、きらめく。


 そんな豪華で、華麗なドレスだ。




 胸元を大きく開けた、大胆なデザインは。

 セクシーなのに、上品で。


 舞台の上で、くるりと回ると。


 肩のところにつけられた、透け感のある黒いベールが……マントのようにひるがえる。




 このドレスを、まとった私は……。


 ーー美しき、悪の女王様。


 そんな感じじゃないかしら?




 期待以上の衣装の出来に、上機嫌になった私は、鏡の前でくるっと回って、劇のセリフを言ってみた。


「鏡よ、鏡。

 世界で一番、美しいのは誰?


 …………。


 それはもちろん、この私!

 ロザリンド・フェンサー様よ!!


 オーホッホッホッホッホー!」




 お姫さま役のヒロインは、めっちゃ素直に

私をほめた。


「でも、本当に……。

 すごく、きれいです。


 ロザリンドさん、色白でスタイルいいから……その衣装、すごく似合いますよね」




「あんがと、サクラ。

 そう言うあんたも、めっちゃキュートよ。


 まあ、世界で二番目に……。


 つまり、私の次にだけどね!」




 私とダチが、女同士でほめ合って、キャッキャウフフと、盛り上がってると。


 空気の読めないチビの従者が、楽屋のドアをノックした。


「……すみません。


 衣装のティアラを、お持ちしました。

 今、入ってもよろしいでしょうか?」




「いいですよー」と、ヒロインが言うと。


 チビは、ガチャリとドアを開け……。

 そのまま、ピシリと固まった。


 ブカブカの黒いローブをはおって、豪華なティアラを持ってるチビは。


 ドアノブを手で持ったまま、ぼうぜんと突っ立っている。




 シェイドの黒い左目は、すぐそばのヒロインではなく。


 ……なぜか、私にくぎづけで。


 それなのに、いつもみたいな説教は、まったく口からとびでて来ない。




 黒髪の従者は、ただ、じっとだまって……。


 目を、大きく見開いている。


 どうやら何かに驚いて、口が利けなくなってるようだ。




 私は、「おーい」と手をふって、言った。


「あんた、なにボーッとしてんの?


 ……ははーん。

 さては、私のきれいさに、ポーッとみとれてやがるわね?


 それとも、ナニか?

 この胸の谷間に、目がくぎつけか?


 ハッ、これだから思春期のガキは……」




 石になっていた従者は、急に正気にかえりやがった。


「なんですぐ、そういう下品な方向に、持っていこうとするんです!!


 それとも、そういう下品なジョークを言うのが……野蛮人の社会では、正しいマナーなんですか?」


「……っだと、このチビ!

 やつ裂きにすんぞ!!」




 清楚で可憐なヒロインが、突然、ちっちゃな悲鳴を上げた。


「……あっ!


 あの……。

 えっと……。


 …………。




 そろそろ、舞台に出ませんか?


 わたし、本番前にちょっとだけ、練習をしたいので……。


 もし、よろしかったら、お二人とも……。

 練習につきあってもらえませんか?」





「……ちっ。

 今日は、ダチの顔に免じて、殺らないでおいてあげるわ。


 サクラの愛くるしさに、感謝すんのね」


「そちらこそ。

 レディ・サクラの寛大なお心に、せいぜい感謝なさるんですね。


 でなければ、とっくにあなたと友達をやめて、絶交してるでしょうから」




「……っだと、てめえ!!

 やっぱり、殺るか!?」


「ロザリンドさん、落ちついてください!


 ……ほら!

 はやく舞台に行きましょう!」




 聖女さまの、みちびきにより。


 私とチビは舞台に立つと、コブシと剣を取り出して、劇のリハーサルを始めた。


 舞台の幕が開くときには、私とチビのテンションは、完ぺきにととのっていた。



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