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【第一部・完結】ゴリラじゃなくて、ご令嬢! ~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~  作者: 牧野ジジ
第3章 〜〜 大国の皇太子さまを好きになったけど、身分違いなので、あきらめます! 〜〜
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47. 冬、朝チュン、酒くさいベッドにて。 …………第一部・完結


ーー舞踏会の、たぶん翌日。


私は、豪華なベッドの上で、パッチリと目を覚ます。







ごきげんな午後のひざしが……。

お部屋の中を、クリアに照らし。


二日酔いのズキズキが……思考回路をにぶらせる。







…………。


私ったら、いつの間に……。


実家に、帰ってきてるのかしら?






ミハエル様とダンスして、キスしてもらったとこまでは。

ぼんやり、記憶に残ってるけど。


それから、何があったのか……。


さっぱり、思い出せないわ。







ふんわり、ふかふかのベッドで。

ぷっつり切れた、記憶の糸を……一生懸命、ひっぱってると。


ドアがコンコン、ノックされ。


不機嫌そうなチビ助が、お盆を持って、やって来た。







いつもの服を着たチビは、不機嫌オーラMAXの、作り笑いでこう言った。



「おはようございます、お嬢様。

本日は、ずいぶんお早いお目覚めですね。


お嬢様におかれましては、今朝も、ご機嫌うるわしいようで……(きょう)(えつ)()(ごく)に存じます」







京都のテンプレみたいな嫌味を、ネチネチ言ってきやがる、チビを。


私は、お嬢様らしく、しかり飛ばしてやることにした。



「あんたねぇ……。

……んぁっ!」








だが、しかし。


こめかみのすぐ横に……ズキッと、するどい痛みが刺して。


私は、ベッドにつっぷした。






「う~〜……。

頭が痛い……。


今日は、紅茶の気分じゃないから、しじみの()()(しる)、持ってきて……」





「そう、おっしゃるだろうと思って。


本日の『朝食』は……。

玉子焼きと、おにぎりと、しじみの味噌汁にしました」






とっても寛大な私は、態度の悪いクソガキを、お嬢様っぽくほめてやる。



「……へぇ。

あんたにしては、気が利くじゃない。


貧乏人の朝メシが、レディの口に合うわけないけど。

とりあえず食べてやるから、せいぜい感謝しなさいよ」




「……では、どうぞ。

冷めないうちに、ご賞味ください」







そう言うと。

チビは、お盆をテーブルに置き。


銀のカバーを、カパッと取った。






……すると、そこには。


めっちゃ、うまそうな和食が……ビシッと、きれいに並んでた。







つやつや光る、おわんのフタを。

ちょっとひねって、カパッと取ると。


おだしと味噌の、やさしい香りが……。

ふんわり、湯気と一緒に立って。


私の鼻を、くすぐった。







両手で、おわんを持ち上げて。

グイッと一気に飲み干すと、腹の底から声が出る。


「あ~、うまいっ!

胃袋に、しみる味だわ~~」




まったく愛想のない奴は、そっけなく言い捨てた。


「そうですか。

それは、よかったです」






私は質素な「朝食」を、ぺろりと、全部たいらげた。


チビは、急須にお湯をつぎ、食後のお茶を用意した。




あったかいほうじ茶を……私はズズッと、一気にすすり。

さっそく、ベッドに戻ろうとすると。


召し使いが、命令してきた。





「おれは、部屋を出ていきますから。


その酒くさいドレスを脱いで、ネグリジェに着がえてください。


今すぐ、クリーニングしないと……。

シミが落ちなくなりますよ」







そう言われて、鏡を見ると。

私は、昨日の赤いドレスを、着たままなのに気がついた。




「えっ、私……。


なんで、ドレスを着てんのよ?


っていうことは、もしかして……。





メイク、落とさずに寝ちゃった?




……や~ん!

ニキビが出来たら、どうしよう~~!!」








空気の読めないチビ助は、レディのグチを、スルーして。

主人をしつこく、せっついた。


「いいから、さっさと着がえてください。

洗濯係のアンさんが、朝から困ってるんですよ」




「……あんたねぇ。

あんたの大事なご主人様が、お肌のことでグチってるのよ?




あんた、仮にも家来だったら……。


『あらまあ、それは大変ですねぇ。


……でも。

ご主人様なら、大丈夫。


ニキビが出来ても、きれいです!』





……とか。

思ってなくても、言ったらどうなの?」







ご主人様のおしかりを、ガキは、まるっとスルーして。

食器を、ササッと片づけた。



「……では、失礼いたします。


ドアのところに、洗濯カゴがございますので。

お着がえがお済みになったら、ベルを鳴らして、お呼びください。


洗濯物を、取りにまいります」






そっけなく、そう言うと。

チビは、お盆を手に持って、トンズラここうとしやがった。






……そのとき、ふっと。


私の頭に……。


変な映像が、浮かんだ。






私は、頭を手でおさえ。

脳内の変な動画に、しごく、まともなコメントをする。



「…………。


そういや、確か……。


夢の中に、あんたが出てきて。

私に、デレデレしていたような……。






でも、そんな気色の悪い夢……。

この私が、見るはずないし。


もしかして、マジだったのかしら……?」







かわいげのないチビ助は、ご主人様のご意見を、バッサリ、冷たく切りすてた。



「おれが、あなたにデレデレなんて……。

するわけないじゃないですか。


そんな気持ちの悪い夢、勝手に見ないでくれますか?」







予想通りの返答に、私はぷいっと、そっぽを向いた。



「……ふんっ!

ジョークの通じない奴ね。



安心しなさいよ。


あんたみたいな堅物が、身分違いの恋するなんて……。

これっぽっちも、思ってないから。


あんな気色の悪い夢、ぜっっったい、夢に決まってるわよ」








かわいげのないクソガキは、この期におよんで、嫌みをたれた。



「きちんとご理解いただけて、こちらとしても安心しました。


では、今度こそ……失礼させていただきます。


どうぞ、頭もお体も、お大事になさってください」







いやしい庶民にあるまじき、暴言を吐きすてて。


従者は、部屋を出ていった。






召し使いの態度の悪さに、ぷっつん切れちゃった私は。


枕をビリッと引きさいて、お部屋に羽根をばらまくと。

ドレスを、床に脱ぎすてて……。


ブラとパンツとキャミ1枚で、ボフッと、ベッドにとび乗った。






「……ふぅ。


やっとスッキリ、サッパリしたわ。


さーて。

今日のダーリン情報は……」






ベッドの横に置いてある、ラジオのスイッチを入れると。


ヘタレとダチと姑が、記者会見をやっている。








ヘタレ野郎の母上は、世間の熱い応援と、二人の熱い気持ちに負けて……。


息子とダチの結婚を、「しぶしぶ」許可してやるらしい。






んでもって。


何も知らないモブどもは、愛し合ってるお二人が、無事ゴールインすることに……。


大歓声を送ってるらしい。







弁当屋の娘から、皇太子妃になるヒロインは。

ラジオの向こうの国民に向けて、堂々とスピーチをする。



『……わたしは、なんの取り柄もない、平凡な女の子でした。


そんなわたしが、殿下と結婚できるのは……。

やさしく応援してくださった、みなさんのおかげです。


ありがとうございます。

ほんとうに、感謝しています。







わたしには、足りないところが、いっぱいあります。

こんな、わたしでいいのかと、不安に思うこともあります。


でも、みなさんが……。

わたしを、応援してくれるから。


立派な妃になるために、一生けんめい、がんばります』







幸せそうな、マブダチの声に。


私は、すっかり満足し。


そのまま、そっと、目を閉じた。








ーーこうして、平民の聖女は、貴族のプリンセスになり。


愛する二人は、結ばれて……。


津波の危機は、だいたい去った。






使命をなしとげた、私は。


死亡フラグのまるでない、平和な学園生活を……。


一ヶ月ほど、送るのだけれど。







それは、また……今度の話。







ーーーーーーーー


ゴリラじゃなくて、ご令嬢!

~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~




【第一部・完】






〈3章最終話・あとがき〉


ここまで

読んでくださって、


本当に、ありがとうございました!!





もし、このお話を

気に入っていただけましたら、


下にある

【☆☆☆☆☆】や【ブックマークに追加】のボタンを

押してくださると、作者は、とってもうれしいです♪





第二部のスタートは、

【2023年・4〜8月ごろ】の予定です。


みなさま、どうぞ

来年も、よろしくお願いいたします!




ーーーーーーーー


(2023.2.21 追記)


3章の完結後、

何度も読み返してくださった方、

いいねを押してくださった方へ。


「がんばってね。続き待ってるよ」

と言われたようで、とてもうれしくなりました。


あたたかい応援、

本当に、ありがとうございます。

m(_ _)m





予想していたよりも、

原稿が早く書けているので、


【4章の公開は、4月〜6月】ごろになる予定です。


連載が再開するまで、もうしばらくお待ちください。



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