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【第一部・完結】ゴリラじゃなくて、ご令嬢! ~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~  作者: 牧野ジジ
第3章 〜〜 大国の皇太子さまを好きになったけど、身分違いなので、あきらめます! 〜〜
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46. ノノ




王子様の、浮気を知って。


めちゃくちゃ落ち込んだ私は、とってもお嬢様らしく、酒をがぶがぶ、飲みまくり。


しつこくカラんでくるチビを、どーんと押し倒してやった。







背中を打ったチビの従者は、私の下で、ブチ切れた。


「猛獣なみの筋力で、急にタックルするなんて……。

あなたは、おれを殺す気ですか!?


だいたい、あなたという人は……。

いつもいつも、無茶ばかりして……!!」






ほっぺの赤いチビ助は、一滴も飲んでないのに、なぜか説教し始めた。


私は、チビの説教を、右から左にスルーした。







…………。

………………。


…………………………………………。







「つまり、…………。

と、いうことなのですが。


ただいまの説明で、ご理解いただけたでしょうか?」




「ああ、うん。

ご理解できたわよ。



えっと。

なんだっけ、確か……。


伝説の武器を探しに、アマゾンの奥地にとんで……」







「分かってないじゃないですか!!!!」






「あっはっは!


そりゃそうよ。

だって、聞く気もなかったし」







スルーくらったチビ助は、めげずに説教を続ける。



「……いいですか、お嬢様。


お嬢様はもう、18ですよ?


普通、18ともなれば。

どんなに、おてんばだった人でも、すっかり立派なレディになって、感心されるものなのに……。






それなのに、あなたときたら!


子供のゴリラだった頃から、さっぱり何の進歩もなくて……。


むしろ、どんどん退化するのは、一体、どうしてなんですか!!







こんな情けないことでは……。

ミハエル様に、いつか愛想をつかされますよ!!」







ちっちゃな奴の大きなお世話を、私は鼻で笑ってやった。



「……ふんっ!

お子様のくせに、えらそうな口、きいちゃって……。


初恋もまだの童貞が、大人の女の恋愛に、イチャモンつけてくんじゃないわよ!!」







子供みたいなチビ助は、ヘンテコな寝技を使って、ポジションをひっくり返し。


私の上に、乗りやがる。





「…………。

子ども子どもって……いい加減、しつこいですよ。


おれは、もう……15です。


いつまでも、小さな子供じゃありません」







意外と顔のいいチビは。

せっぱつまった顔をして、私をじっと、見つめてる。


その目は、妙に真剣で、切ない熱を帯びていて……。






めちゃくちゃ、うがった目で見れば。


ずっと好きだった女が、弟としか見てくれなくて……。


ブチギレちゃったみたいに見える。







これが、乙女ゲームだったら。


鈍感だったヒロインが、やっと男の気持ちに気づいて、盛り上がるはずのシーンなんだが。



しかし、私の頭の中は……。






「前髪、切りてぇ」という気持ちで、パンクしそうになっていた。







「……お嬢様。

聞いていらっしゃいますか?


おれは子供ではなくて、男だと言ってるんですよ?」






私は、心のハサミを捨てて、ガキの相手をしてやった。



「うん、そうね。

そういや、あんたも男よね。


……で?

それが一体、どうしたの?」





チビ助は、絶句した。


「な……っ!」






「……だって、あんたって。


酔って抵抗できない女に、乱暴するって、キャラじゃないじゃん。


むしろ、人畜無害じゃないの?

口だけは、やたら小うるさいけど」







カルシウム不足のチビは、大声でキレちらかすのを、必死にこらえるように言う。



「……信用していただけて、何よりです。


ですが、おれも人間ですからね。

あまり挑発をされると、つい魔が差すということも……」






「ないない。そんなの、絶対にない。


あんたは自分がほれた女に、すっぱだかで乗られても……。


そいつが寝オチかましたら、毛布をかけて、ベッドにのせて、自分は床で寝るタイプでしょ?


想像しなくても分かるわ」







自称「男」の「いい人」は、苦渋に満ちた顔をして、屈辱そうにつぶやいた。



「…………。


そうですね……。

この件に関しては、あなたが正しいようですね……」


「でしょー?

あんたって、やっぱ意気地なしよねー!!」







私は、ケラケラ笑って言った。


おひとよし過ぎる従者は、「はぁ~……」と深く、ため息をついた。







「ねえ、シェイド」


「…………。

なんですか、お嬢様……」





「プロレスごっこしよっ!!」


「バカ言ってないで、立ちなさい!!!!






……ほら、早く立って!


水を飲んで、酔いをさまして……。


とっとと、家に帰りなさい!!!!」







つき合いの悪い従者は、勝手に私の上からどいて、レディの腕をひっぱった。


私は当然、逆らった。



「やだ。

家に帰るの、めんどくさい。


それより、プロレスごっこがしたい」







薄情すぎるお子様は、酔っぱらったレディを置いて、ひとりで家に帰ろうとした。



「お嬢様のからみ酒には、もう、つき合いきれません!


おれは、一人で帰ります!!


明日、具合が悪くなっても……。

看病なんて、しませんからね!!!!」







シッポをまいて逃げた獲物に、私は、すばやくとびついた。



「……うわっ!


離せ! この酔っぱらい!

バカ力! ゴリラ!!」







「嫌よ。

ぜっったい、離さない。


あんたが、試合を拒否るなら……。

無理やり、リングに立たせてやるわ」






私は、従者の弱点に……すかさず、ニュッと手を伸ばし。

くすぐり地獄に、落とそうとした。



従者は、すばやく腰をひねって、弱点をガードした。






「……いい加減にしてください!!


これ以上、ダダをこねると……。


力ずくで、だまらせますよ!!」







「はんっ!

やれるもんなら、やってみなさい!!」



「…………。

警告は、しましたからね」







ーードスッ!!







私は、首にチョップをくらい。


目の前が、

まっくらになった。





うすれゆく意識の中で、

私が、最後に聞いたのは、


「…………。疲れた…………」


という、従者の悲痛な声だった…………。







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