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【第一部・完結】ゴリラじゃなくて、ご令嬢! ~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~  作者: 牧野ジジ
第3章 〜〜 大国の皇太子さまを好きになったけど、身分違いなので、あきらめます! 〜〜
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45. ワインセラーで従者とワルツを


聖なる夜に、起きた奇跡に。


私はうっとり、酔っていた。





ミハエル様って、やっぱり素敵。

まるで、白馬の王子様みたい。


あんなにカッコいい人と、イブにダンスを踊れたなんて……。


まるで現実じゃなくって、ゲームの中にいるみたい。






おまけに、今日はあの人に、おやすみのキスも、してもらえたし。


こんなセリフも、言われちゃったし……。







『君って時々、失礼だよね。

ぼくにも、大事な人ぐらいいるよ。


君と、セバスチャンと、おばあ様。


あと、もう1人いるけれど……。君は知らない人だから』





ですってよ。

うっふっふ……。


……って、あれ?


気のせいか、最後の方に、なんか変なのついてるような……。







私は王子様のセリフを、キュルキュルキュルッと、巻き戻し。


頭の中で、リピートしてみた。




『…………。

君と、セバスチャンと、おばあ様。


あと、もう1人いるけれど……。


君は知らない人だから』







つまり。


私=お友達

セバスチャン=家来

おばあ様=家族


私が知らないどっかの女 = そいつが本命の女!?






……さんざん、期待させといて。

結局、こんなオチなんて……。


こんな、誰得すぎる展開…………。


酒飲まないで、やってられるか!!!!







私は、指をパチンとやって、使えない従者を呼んだ。


「おい、チビ。

酒を持ってこい」







しかし、従者は返事をしない。


どうやら、主人の許可も得ず、どっかにトンズラしたようだ。







「……もういい!


お前が来ないなら……。

こっちから、取りに行ってやる!!」







私は廊下をダッシュして、食堂のすぐそばにある、ワインセラーの前まで来ると。


ヒールで、ドアをやぶった。






ーーーーーーー


ーーワインの眠る、地下室は。


どっしりとした石壁で、ほんのり暗い空間に、ランプの明かりがゆらめいて……。


隠れ家系のバーっぽい、オシャレで大人なムードが出てる。







棚には、高そうなワインが。


ずらずらずらっと、並べられ。


私が飲んでくれるのを……今か今かと、待っている。






「待ってなさいね、ワインちゃんたち!


いま、グルメのロザリンドさんが……全員カラにしてあげるからね!」



そこで私は、はたと気づいた。







……そういえば、栓抜きがないわ。


えっと、栓抜きどこかしら……。


そう思って、キョロキョロすると。

おかしなタルが、目に入る。







その変テコな大ダルは、なぜか、蛇口がついていて。


ヤケ酒をかっくらうのに、ちょうど良さそうな感じだ。






私は食器棚をあさって、一番でっかいグラスをとると。


ドカッと、床に座り込み。


タルについてる蛇口をひねって、グラスにワインを、なみなみと注ぐ。






1杯、1杯、もう1杯と。


グイグイ酒を、あおっていくと。


頭の中が、ふわふわになって……。





まだちょっとある、借金だとか。


愛する推しの、本命だとか。


そういう困ったアレコレが、きれいさっぱり、ぜーんぶ消えて、なんか楽しくなってくる。








私は、絶好調になり。


どんどん、酒を注いでいったが。


タルのワインが尽きたので、どっこいしょ、と立ち上がり……ワインの棚の前に立つ。






ラベルをざっと、見わたして。


一番高そうなワインを、ガシッと1本、つかんだ途端。


誰かに、肩をつかまれた。






せっかく人が気持ちよく、酔っぱらってきたって時に……。


余計な水を差すなんて、なんてKYなのかしら。


さては、新手のナンパ師ね?






そう思って、ふり向くと。


うるさいチビが、立っていた。





「げっ。

シェイド……!!」






失敬すぎるチビ助は、ドロボーを見るような目を、貴族のレディに向けやがる。



「……なんであなたが、こんなところにいるんです。

ミハエル様と、お会いになるんじゃなかったんですか?」



「そう言う、シェイド、あんたこそ。

なんで、こんなとこにいんのよ」





黒髪黒目のチビ助は、仏頂ヅラでこう言った。


「おれは、使用人ですから。

給仕の仕事をしてるんですよ」







気の毒すぎるチビ助に、私は同情してやった。


「みんながイチャコラしてる日に 、召し使いのお仕事なんて……。

シンデレラに、マジそっくりね。


舞踏会に行けなくて、ぶっちゃけ、死ぬほどみじめでしょ?」




ウェイター姿のチビは、むっつりとした顔で言う。


「…………。


舞踏会は、苦手ですから。

女性とダンスするよりは、仕事の方が楽ですよ」








まったく素直じゃない奴を、私はやさしく、からかった。



「……とか、なんとか言っちゃって~。

ほんとは一緒に踊る女が、見つからなかっただけじゃない?



だって、ほら。

あんたって、チビだから。


あんたと踊ってくれるのは、小学生か、赤ちゃんか、ミジンコのメスぐらいだもんね~~」







チビは、ニコッと笑顔を見せた。


「……そうおっしゃる、お嬢様こそ。

しばらくお目にかからないうちに、またご成長なさいましたね。


おめでとうございます。

その調子なら、きっとすぐ、立派な巨人になれますね!!」







私はチビに、なぐりかかった。


人にケンカを売っといて、チビは、アタフタしやがった。





「……うわっ!


こんなところで、暴れないでくださいよ!

その棚のワイン、いくらすると思ってるんです!!」



「ワインをダメに、されたくなけりゃ……。

おとなしく、私のコブシを受けなさい!


たぁっ! らぁっ!!

うりゃっ!!


……あれっ?」






急なめまいに、おそわれて。

私はクラッと、よろめいた。


なんとか、めまいがおさまって……。


ハッと気がついた時には、私はチビの腕の中にいた。






チビは、あきれた声で言う。


「一体、どれだけ飲んだんですか……。


……ほら。

しっかりしてください。




水を持ってきますから。

あなたは、あそこのイスに座って、大人しく『待て』してるんですよ。


頭の悪いゴリラでも、そのぐらいは出来ますね?」







失礼なこと、言うチビに。

私は顔を近づけて、思いきり、ガンをくれてやる。


ーーと。


根性のないチビ助は、あわてて後ろに飛びのいて、顔を遠ざけようとした。






私は、従者の小さな顔を、しっかり両手でつかまえて。


すっかり見なれた地味顔を……食い入るように、ジッと見た。






日本人っぽい、黒い目は。

小さめだけど、形がよくて。


鼻筋は意外にも、スッと、きれいに通ってて。


ちょっと薄めの唇は、笑うと、ちょっと可愛くて…………。






超イケメンで華がある、攻略キャラと比べると。


あっさりしてて、地味だけど。

(※ただし、ソードはのぞく)



その辺のモブと比べると、明らかに顔が整っている。





…………。


こいつって、素材は悪くないんだよなぁ。


悪くないっていうか、むしろ。

かなりいいセン、いってるような……。





ただ、なんていうか、髪型が……。


鬼太郎みたいで、猛烈にダサい。







うざったすぎる前髪を、私はペロッと、まくり上げ。


チビの両目を、出してみた。





「……うん。

この方が、まだいいわ。


ついでに、ここも、もう少し……」






ファッションセンスの、なさすぎるチビを。


ちょっとでも、マシに近づけようと……あちこちいじり回していると。


チビが、文句をつけてきた。





「……何なんですか、さっきから!


人の体を、妙な手つきで……。

なで回さないでくださいよ!!」







大人のお姉さんな、私は。

ガキの言うこと、スルーして。


ベタッと、ほっぺに触れてやる。






「……あれっ。

ほっぺが熱くなってきた。


ははーん。

さては、あんた……。



私に、ほれてやがるわね?」







チビは私を、つき飛ばし。

真っ赤になって、キレだした。





「……バカじゃないですか!?


おれが、あなたに……どうこうなんて……。


そんな、非常識なこと……。

あるわけないじゃないですか!!





それを、そんな……。

そんな、○×■△!!


…………。


とにかく、バカじゃないですか!?」







いつもスカした顔したチビが、ド派手に舌をかんだので。


なんとなく楽しくなって、ふざけてドーン! とタックルしたら。


ちっちゃなチビは、見事によろけ。







私たちは、二人まとめて、ドサッと床に倒れこみ……。


チビは、私の下敷きになった。







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