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【第一部・完結】ゴリラじゃなくて、ご令嬢! ~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~  作者: 牧野ジジ
第3章 〜〜 大国の皇太子さまを好きになったけど、身分違いなので、あきらめます! 〜〜
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41. ノノ


お城の火事から逃げのびて、生き残った令嬢は……。

ヒロインの母だった。


そして、私の親友は、超いいとこのお嬢様だった。




まったく自重しない女帝と、腹黒すぎるプリンスは、仕事の合間に手を組んで……。


ヘタレとダチの結婚を、成功させる準備をしていた。





あんまりすぎる展開に、私は思わず、目が点になった。


「……っていうことは、つまり。

私が何もしなくても、二人は結婚できたってこと?


そんな……。

だったら、そう言ってくれれば……」







「……ロザリンド。

ぼくの記憶が確かなら、


『君のやり方は、乱暴すぎて、うまくいかない。


だから、この件は、ぼくを信じて任せてほしい。

そうすれば、けして悪いようにはしない』と、伝えておいたはずなんだけど。


……もしかして、忘れてる?」




「……そういえば。

そんなようなセリフを、だいぶ昔に言われたような……」








「陛下との会談が、とてもなごやかに終わって、『これで全てうまくいった』と、一息ついた瞬間に、なんだか嫌な予感がしてね。


電報を何度打っても、君からの返事はないし。

電話をかけても、繋がらないし。


もしかしたら、君の身に何か起きたんじゃないかと、心配して帰ってきたら……。


こんな騒ぎが起きていたわけだ」



「…………」







私のセクシーな背中を、汗がダラダラと伝った。


白バラよりも優美な方は、氷点下よりも冷たく笑い。

優雅に、皮肉をおっしゃった。



「ロザリンド、君のおかげで……。

行きたかった学会に、行けなくなったよ。

ありがとう」





わー!!

王子様が、マジ・おこですわー!!!!





……ヤバい。

早く、ご機嫌とらなくちゃ。


でないと、マジで殺される。







私は、ふるえるヒザをしかって、必死に王子を持ち上げた。


「まっ……。

まあぁあ~~! そうでしたのぉ~~!!


それは、大変でしたわねぇ~~。





にしても、マジで、さすミハですわ。


オフクロさんの正体を、ズバリと見抜いただけでなく!


お仕事のついでに、お義母さまへの根回しまで、バッチリ

すませちゃうなんて……。






……いよっ! さすが、ミハエル殿下!


トームズよりも頭がよくて、政治家よりも腹が黒くて、電卓よりも計算がうまいっ!!!!


なのに、見た目は超☆さわやかで……。

白馬の王子の皮をかぶった、黒幕キャラになれそうですわ!」






私は、必死に手をもんで、ニヤニヤ、ヘラヘラ取り入った。


ラスボスオーラをお持ちの方は、美しく微笑んだまま、冷たい声でおっしゃった。


「……まさかとは思うけど。

それで、機嫌をとってるつもり?」






「うっ……。

何もかも、お見通しですのね……。

ひょっとして、テレパシーをお使いですの?」


「そんなもの使わなくても、君の顔を見れば分かるよ。

……ぼくを、誰だと思ってるんだい?」






私は、スーパー正直に言った。


「あなたはこの国の王子で、世界で一番イケメンで、何でもかんでもお出来になっちゃう、パーフェクトすぎるお方です」








金髪碧眼の王子は、真剣な顔をして言った。


「……ロザリンド。

ぼくは、君のフィアンセなんだよ?


大切な人のことなら、他の誰よりも分かるよ」




「……へっ?」







見えない壁が、なくなって。


王子様の美しい手が、すっと、こっちに伸ばされて……私の頬に、やさしく触れる。



突然、推しに触れられて。

私の体は、熱くなる。







ミハエル様の、金色の髪は。

サラサラしてて、柔らかそうで。


エメラルド色の瞳には……私が小さく、映ってて。




こうやって、見つめ合うだけで。

息が止まりそうになるほど、美しく整った顔が。


……ゆっくり、こっちに近づいてくる。







えっ。

これって、もしかして。


このまま、ここで……「する」流れ!?







私は、石になりかけて。

あわてて両目を、ギュッとつむった。


クスッと、笑う声がして。

吐息が、肌をくすぐって……。





ノーマークだったおでこに、柔らかいものが、そっと触れ……。


あっという間に、離れていった。







私はびっくりして、目を開けた。


金髪碧眼の王子は、とびきり甘く微笑んで言った。



「……今宵の続きは、満月の晩に」







……その時、ふっと。


突然に。


頭のすみの、すみのどこかで……。

何かが、妙に引っかかり。






ものすごく大事なことを、思い出せそうだったんだけど。


大切なその思い出は、あと少しってところで…… 。

またまた、どっかに行ってしまった。







「……ロザリンド?」


「ふぇっ!?


……あっ……。

ミハエル様……。




すみません……。

なんか今、ちょっと意識が遠くなってて……。


……えっと。

何のお話でしたっけ?」







王子様は、ため息をついた。


「……もういいよ。

期待したぼくが、バカだった」



私は何がなんだか分からず、とりあえず謝った。


「えっと……。

なんか、スンマセン……」








英国紳士みたいな人は。

端正な美しい顔に、おだやかな笑みをはりつけて……スッと、右手を差し出した。



「お望みでしたら、手を貸しますよ。

地面に座っていらっしゃる、レディ?」







地面に、尻餅ついてた私は。

王子様の手を借りて、どっこらしょっと、立ち上がり。


目の前にいるフィアンセを……不思議な気持ちで、まじまじと見る。







「考古学の研究が、何より大事」なこの人が。


大事な学会ほっぽりだして、とんで帰ってくるなんて……。


……もしかして、ミハエル様って。

わりと真面目に、私のこと好き……?








突然、肩を叩かれて。

私は、体がビクッとなった。


「……どぅおわっ!?」







「ほら。

そうやってまた、遠くに行かない。


君の『それ』に付き合ってたら……いつまで経っても、キリがないからね」



そう言うと。

王子は私の手を握り、グイッと強くひっぱった。







私は王子に、手を引かれ。

ヨロヨロヨロッと、歩き出し……。


突然、ふってわいた疑問を、ストレートに王子にぶつけた。


「……でも、どうして分かりましたの?

サクラのオフクロさんが、貴族のお嬢様だって……」






王子様が、足を止め。

私の顔を、まじまじと見た。


「……本当に分からない?」

「マジマジのマジで、分かりませんわ」







ディンドン一の名探偵は、「マジかよ」という顔をなさった。


けれど、王子はその顔を、笑顔の裏に引っこめて。

とっても優雅に、おかくしになると。


探偵っぽいセリフを吐かれた。






「……では。

レディのご期待に応えて、解説編を始めましょうか」




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