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【第一部・完結】ゴリラじゃなくて、ご令嬢! ~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~  作者: 牧野ジジ
第3章 〜〜 大国の皇太子さまを好きになったけど、身分違いなので、あきらめます! 〜〜
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40. ノノ


「暗殺された」と、思わせといて。

……普通に、火事で死んでた伯爵。


伯爵様が大好きすぎて、帝国にケンカふっかけた……。

頭の悪すぎる、モブたち。





そして。


クソゲーのアホな市民に誤解され、暗殺疑惑をかけられた女帝 = ヘタレのお母様。







しかし、この火事の裏には。


まだ、世間に知られていない秘密があった。






……なんと!

伯爵家の人間は、全員死んでいなかった!!


しかも、火事場から消えた「そいつ」は……。


なぜか、この国にいたのだ。







…………。


それにしても、この王子様。


なんで、こんなに、くわしいの?







まさか当時、現場にいらして。


火事場ドロボーされてたなんて……。


いくらなんでも、あるはずないし。







……と、そこまで考えて。

私は思わず、ハッとした。




「火事場からドロンした、その人物って、誰ですの?


……!!

まさか、ミハエル様、あなた……!!」


「…………」








もしかして、あの火事は……。


やっぱり、帝国の放火で。

ミハエル様の正体は……。


暗殺された、伯爵の息子!?






……いや。

さすがに、それはないでしょ。


だって、火事が起きたのは……20年も前なのよ?


19歳のミハエル様が……。

息子さんなわけ、ないじゃない。







……気がつくと。

なんでだか手が、ふるえてる。



私はガタガタ言っている手を……サッと、すばやく背中にかくし。


動揺しまくっちゃってることを、「なかったこと」にしようとしたが。


今度はヒザが、ふるえ出す。







金髪碧眼の王子は。


復讐キャラにありがちな、激しい怒りをまったく見せず。


とても涼やかなお声で、「そいつ」について、お語りになる。






「……生存者の名前は、アンヌ。


当時は、16歳の少女で……。

金髪に青い瞳の……清楚な美貌の持ち主だった。






アンヌは、城に仕えるコックに、ほのかな思いを抱いていたが。


『自分は、伯爵家の娘。

いずれは、どこかの貴族のもとに、嫁いでいくべき立場だから』と。


平民の男への恋を、ひっそりと胸に秘めていた。






そして、コックの男の方も……。


身分違いの令嬢に、かなわぬ恋をしていることを、誰にも言おうとしなかった。






そのまま、何事もなければ。


アンヌは貴族の妻となり、コックは平民の女性と、家庭を築くはずだった。


しかし、あの火事の日に……。

二人の運命は、変わった。







炎と煙に包まれて、自らの死を覚悟したとき。


アンヌの前に、現れたのは……。


愛するコック、その人だった。







背中にやけどを負いながら、コックは愛する女性を抱いて、炎の中を懸命に進み……。


二人で生きて、外に出た。


九死に一生を得たアンヌは、コックの勇気に感動し、自分の気持ちを打ち明けた。





……こうして、二人の思いは通じ。


アンヌは貴族の身分を捨てて、平民のコックの妻になることにした。


『めでたし、めでたし』というわけだね」







なかなか終わらない話に、私はかわいくツッコミを入れた。


「……はあ、そうなんですの。


どっかの清楚な聖女さまとか、夢見る乙女が大好きそうな……テンプレすぎる展開ですわね?


で?

その、ながーいお話が、私のダチのかけ落ちに、どう関係してくるんですの?」







私のキュートなツッコミを、王子はクールに受け流し、テキパキと、先にお進みになる。


「二人は、船でこの国に渡り……。

グラトニー・グリーン村の『鍛冶屋』を目指すことにした。


そこではお金さえ払えば、面倒な手続きもなしに、5分で式が終わるから。


身分違いの恋人たちに、一番人気の式場なんだ。







……なんて、説明しなくても。


君は『鍛治屋』のからくりを、当然、知ってるはずだよね?」







「あっ、ハイ。

それは知ってます。


法律の抜け穴、バンザイ!

札束ビンタ、バンザーイ!!


ですわ。







だから、私はヘタレとダチを……。

あそこに行かせましたのよ?


あなたに、邪魔されましたけど」







私はお嬢様らしく、お上品に嫌みを言ったが。

王子は涼しい顔をして、話を先に、お進めになる。


「火事の混乱に乗じて、国を抜け出した二人は……。グラトニー・グリーンの『鍛治屋』で、ひっそりと式を挙げた。





こうして夫婦となった二人は、仲むつまじく、平凡に暮らし。


二人の開いた弁当の店は……。

知る人ぞ知る、名店となった。







そうして、年月が経ち。


やがて、二人の間には……。

かわいらしい娘が生まれた。





ヤマトン生まれだったコックは、初めての子の誕生を、子供のように喜んで……。


大声で叫びながら、ご近所中を駆け回り、妻に大いに恥をかかせた。






妻にやんわり叱られて、頭の冷えた父親は、その年の大晦日まで、頭をかかえて悩んだ末に。


自分の故郷の花にちなんで……。

生まれた娘を、サクラと名付けた」





「…………。

それって、つまり……。


どういうことですの?」






「つまり、サクラちゃんは……。

貴族の令嬢だったんだ」



「な……っ。なんですってー!?」








「彼女の本当の名前は……。

サクラ・ミヤモト・サンドリヨン。


平民のための政治を行い、『領主の中の領主』と呼ばれた、サンドリヨン伯爵の孫で……。


サンドリヨン伯爵領の、本来の持ち主なんだ」







私は、マジでおどろいた。


「……ええっ!

マジですの、それ!?」






そんな、都合のよすぎる設定……。


原作のクソなゲームでは、完全スルーされてたし。


どう見ても、雑に作ったくさい……。

【初回特典ファンブック】にも、載ってなかったんですけど!?








「サンドリヨン伯爵家は、ロワンス王家にも連なる、由緒ある家柄で……。


あの『伝説の聖女』の、子孫だという説もある。


さらに、その領地には、聖女信仰の聖地と……。

良質の魔法燃料が、豊富にとれる鉱山がある。






帝国は、領地を伯爵家に返し、紛争をおさめた上で……。


タイミングを見はからい、お二人の関係を、メディアにわざと『スクープ』させる。





ルシフェル殿下の母君は、はじめは二人の結婚に、反対しているフリをする。



『平民育ちの令嬢を、皇太子妃にするなんて!

おまけに、相手の令嬢は、よりにもよって、あの伯爵家の娘だなんて……。


そんなロミジュリすぎる結婚……。

お母さんは許しませんよっ!!』





……と。

こんなコメントを、記者会見で発表し。


伯爵領の住民と、一般市民の反感を買って……。


世間一般の市民が、二人の肩をもつように、世論をうまく操作する。







マスコミの報道によって、世間が二人の味方になったら、二人がかけ落ち騒動を起こす。


ルシフェル殿下の母君は、『そこまで気持ちが固いのなら……』と、しぶしぶ二人の仲を認めて、結婚させるフリをする。







こうすれば、伯爵領には、平和が戻り。


帝国は、サンドリヨンの鉱山と、聖地を有効活用できる。



……というシナリオを、公務のついでに提案したら、女帝陛下はお笑いになって、こんな手紙をたくされた。






この手紙の受取人は、もちろん、サクラちゃんだけど。


彼女の親友の君には、特別に見せてもいいと、陛下の許可が下りている。



……さあ。中を読んでごらん」







私は親友あての手紙を、賞状みたいに受け取ると。


封筒を派手にビリビリと裂き、中の手紙を取り出した。







=============


サクラ・ミヤモト・サンドリヨン様



あなたたちの結婚について、打ち合わせがしたいから、今度こっそりお話ししましょ。





ただし、このことは、うちの息子には内緒ね。


あの子って……。

ほんと頭も根性もなくて、嘘をつくのがド下手なの。


だから、話し合いには、あなた一人で来てちょうだいね。







あなたのことは、ミハエル殿下から聞いたわ。

サクラちゃん、あなたって……。


そのへんの普通の男を、自分の信者にしちゃうスキルを、チートレベルで持ってるそうね。


きっと、じっくり育てたら……。

カリスマ皇妃になると思うわ。






政治と戦争のしかたは、やさしく教えてあげるから。


うちのポンコツのかわりに、しっかり国をおさめてね。


あなたが息子の嫁になるのが、今からとっても楽しみよ♪






あなたの未来のお母様より







P. S.

この手紙、読んだらすぐに燃やしてね。

こういう素敵な陰謀は、バレないように、やるのがコツよ☆






じゃあ、また今度。近いうちに会いましょう。


チャオ!




=============



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