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【第一部・完結】ゴリラじゃなくて、ご令嬢! ~~ 元ヤン悪役令嬢の、即死しそうな乙女ゲーライフ ~~  作者: 牧野ジジ
第3章 〜〜 大国の皇太子さまを好きになったけど、身分違いなので、あきらめます! 〜〜
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39. ノノ


さえないチビをからかって、銃で撃たれた私のもとに……。

白馬の王子が、現れた。


冷静沈着な王子は、キレやすいチビの魔の手から、フィアンセの私を守り。






「ヘタレと聖女は、あずかった。

てめえのチンケな計画も、これで完璧ポシャッたな」


……と。

勝利宣言をなさった。







私を好きだと、言うくせに。


ヒロインの恋を邪魔する方に……「なぜ、こんなことを、なさるのか」聞くと。



金髪碧眼の王子は、ついに動機を語り始めた。







「……20年前の、ある夜。


ロワンスのある城が、炎と煙に包まれた。

その城の持ち主は、ある有名な伯爵だった。


彼は領地をよくおさめ、住民たちから愛されていたが……。火事で、帰らぬ人となる。






伯爵の死後、その土地は……。

『ある帝国』の手に渡った。


伯爵を慕う民たちは、帝国に反感を持ち、大規模なデモを起こした。


そのデモの最中に、新米警官が発砲。

住民たちのリーダーは、その場で息を引き取った。






この事件が、決定打となり。


住民たちと帝国の、和解は絶望的になる。


両者は武器を持って争い、終わりの見えない戦いが、長きにわたって、くり広げられ……。






亡き伯爵の愛した、美しい町並みは……。


銃弾と血の雨に打たれて、見るも無残な姿となった」







唐突に、歴史の話をはじめた王子に、私は思わずツッコんだ。


「……あのぉ~~。

すみません、ミハエル様?


私、外国の歴史とか、ぜんぜん興味ないんですけど。


その難しいお話と、私のダチのかけ落ちに、一体なんの関係が……?」






キングストンのプリンスは、私の素朴な質問を、いとも優雅にスルーして、なぞのお話を続ける。



「火事が起こった直後から。

住民たちの間では、こんなうわさが、ささやかれていた。





『これは、帝国のしわざだ。


あの強欲な女帝は、この土地を手に入れるために、伯爵様とご家族を殺し……。


証拠を始末するために、城に放火しやがったんだ。






こんなことをする奴が、人間であるはずがない。

あの女は、魔女なんだ!


魔女のおさめる悪魔の国に、この土地は渡さない!


この土地の持ち主は……。

今でも、伯爵様なんだ!!』







こんな会話が、領内のいたるところで、昼夜を問わず交わされた結果……。


住民たちの頭の中では、

『伯爵は、帝国の魔女に殺された』


という、ただのうわさが、ほとんど事実になっていた。






結局、その後の調査によって、


『火事が起きた原因は、中庭に落ちた雷で、放火ではない』と分かったんだけど。



うわさを信じた住民たちは、

『こんな結果はデタラメだ。警察も消防も、帝国とグルなんだ』と、ますます怒りをつのらせた。






デマを信じた住民たちは、正義のために、デモを起こして……。


罪のない帝国兵を大勢殺し、自分たちも大勢死んだ」







「……へえ〜〜。そうなんですの」


まあ、そんなの死か恋の中じゃ……。

普通によくある話ですわね。


モブの頭が悪いのは、クソゲーのお約束だし。






端正な顔のプリンスは、どこか皮肉っぽく、笑い。

「ある帝国」の正体をバラす。



「ちなみに、その帝国の名は……。

エンペラドール。


ルシフェル殿下の、母国だよ」







私は、納得して言った。


「なるほど!

その領地の住民が、ヘタレの実家と、もめてますのね。


……でも。

それと、二人のかけ落ちが、何か関係ありますの?」







ーーほんの一瞬。


違和感のある、沈黙があった。







あれっ?

どうしちゃったのかしら。


もしかして、私……。

変なこと言った?







私が、オロオロしていると。


端正な顔のプリンスは、とっても、さわやかに笑って。


物分かりの悪い子どもに、やさしく言い聞かせるように……。ゆっくり、はっきり、おっしゃった。






「これから、君に聞かせる話は。


世間には、知られていない……あの火事の真実だ。


ぼくが『話していい』と、言うまで。

他の誰にも言わないと、約束してくれるかな?」







ーーそう言うと。


ミハエル様は少しかがんで、顔をこっちに近づけた。





サラサラとした、金髪が。

体の動きに合わせて、揺れて。


宝石みたいな緑の瞳に……私の姿が、小さく映る。








王子様の美しい顔が、目の前にアップでせまり。


私は思わず、ドキドキしたが。



王子様が、私を見る目は……。

氷みたいに、冷たくて。








ドキドキしたり。

ラブラブしたり。


はたまた、エロいことしたり。


……そんな場合じゃないことを、めちゃくちゃハッキリ、おっしゃっている。







「……もう一度、聞くよ。

ロザリンド、君は……。


秘密を守ると、約束できる?」




王子様の、目力に負けて。

私がコクンと、うなずくと。


冷たい瞳のプリンスは、話を先にお進めになった。







「伯爵家の人間は、あの火事が起きた日に、全員死んだと言われているけど。


……実は、生存者がいたんだ。





その人物は、ある目的をかなえるために、この国にやって来て……。


今日まで、ひっそり生きてきた」








「火事場からドロンした、その人物って、誰ですの?


……!!

まさか、ミハエル様、あなた……!!」


「…………」





フッと、かわいた笑いがもれて。







……王子様の、瞳の奥で。


冷たく燃える、青い炎が……。

ほんのわずかに、揺らめいた。







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