第938話 占領処理
魔人たちが総出で王城を探しまくったが、火神がどこにも見当たらない。そこで王都内まで捜索範囲を広げたが、それっぽいのはどこにもいなかった。
俺がヴァルキリーを脱いで、集まったみんなと話し合いをしていた。
ギレザムが言う。
「まさか、瓦礫に埋もれて死にましたかね? 危険な気配も全くありません」
「まあ、神に死ぬって言う概念が当てはまるか分からんけど、その可能性もあるかも。でも死体的なものがあっても良さそうなもんだしなあ…やっぱ逃げた線が可能性高いんじゃない?」
「そうですね」
魔人がこれだけ探し回っていないのだから、王城から逃げた可能性は高い。
オージェが腕組みをしながら俺に言った。
「だけど、神ならば俺達のように何らかの特殊能力が備わってるよな。全部の神に何らかの力が宿っているし、火の一族ゼクスペルと、火神という名前的な属性が一致しているのも気になる」
「アブドゥルが使ったインフェルノって獄炎の魔法も火だしな」
「危険な感じはするが、逃げたとなるとどうしようも無い。もっと脅威になるかと思ったが、まさか逃げの一手を打つとは思わなかった」
「フェアラートが死ぬ前に、アナミスの力で詳細を聞きだすんだった」
「ラウルは、モーリス先生と過去弟子の別れを邪魔したくなかったんだろ?」
「そうだよ。甘いか?」
「いや。お前のそう言うところが気に入っている」
「そうかよ」
崩壊したモエニタの王城は、復旧に相当の時間がかかりそうだ。そもそも王がいない都市がどうなるのかと言えば、恐らく経済も麻痺し治安も悪くなってしまうだろう。
どうすればいいかと言えば、シュラーデンやユークリットのように暫定的な政府を置くぐらいしか方法が浮かばない。むしろ暫定と言いつつ永久的なものになりそうだ。あと居なくなったという王を探して、戻す事も方法としてはあるが、どこに行ったか分からないというのであればどうしようもない。
「さあて、この都市どうすっかな」
「前世の某国みたいに、人の国の政府を壊しておいて、あとヨロシクーでは人としてどうかと思う」
「まあ、俺は魔人だけどな」
「俺は龍人だ」
うーん。
「豊穣神か死神か雷神かが、やってくんねえかな」
「…多分無理っぽい。能力無いだろ彼女ら」
「だよなあ」
俺は少し考え込んで言う。
「んじゃあ」
俺が魔人達を見渡すと、皆が目を合わせないようにどっかを見ている。
まあ俺も、直属を手放したくはないから却下。
とりあえず瓦礫の王城から外に出ると、モーリス先生たちが来ていた。聖女リシェルと日本人の五人も集まっている。ミゼッタとゴーグはあっちの方で、二人で談笑しているようだ。
「おー、みんな集まったようだな」
モーリス先生が王城を見て言う。
「しかし見事に潰れてしもうたの」
「はい。フェアラートの巨大アーティファクトが地下から出て来まして、全てを潰しました」
「ふぅ…残念じゃった」
「そうですね…」
だがそこで俺は、ふと良い事を思いついた。
「そうだ!」
「なんじゃ?」
俺はキリヤとハルトとマコを見て言う。
「いいね。いい感じだ!」
キリヤがポカンとした表情で俺に言う。
「どうされました? ラウル様」
「あ、お前、モエニタの王やれ」
「王…でございますか?」
「そう、王」
「いやいや無理です! そんな大それたことは!」
「あー、んじゃ。キリヤとハルトとマコで男気じゃんけん。勝った奴が王な」
三人が焦った顔をする。魂核をいじっているとはいえ、普通に思考するのだから当然だ。
そして俺が言う。
「さーいしょはグー!」
流石は日本人、そう言われると体が反応するのか、拳を突き出した。
「じゃーんけーんポン!」
チョキ チョキ グー
「あ…」
グーを出したのはハルトだった。
「よーし! ハルトが王な! 凄い剣の技を持つから、剣王ハルトということにしよう」
「あ、ありがたく受けさせていただきます!」
俺の決めた事は絶対だからな。
キリヤとマコがホッとした顔をしている。
「じゃ、次! 宰相を決める! さーいしょはグー!」
キリヤとマコが慌てて拳を突きだす。やっぱ日本人だ。
「じゃーんけーんぽん!」
パー チョキ
「おお、キリヤ。お前が宰相だ! この国を切り盛りしてくれ」
「えっと…わかりました!」
そしてマコがホッとした顔をしている。
「じゃ、残ったマコとナンバーズの二十人は、近衛騎士団な」
「あ、ああ…わかりました。謹んでお受けいたします」
んー! スパスパ決まっていいなあ。気分がいい!
俺がエド・ハイラに目配せすると、彼女は魂核をいじってないので、分かりやすく無視をした。
最後にキチョウ・カナデを見て言う。
「で、カナデは彼らを陰で守護をしてくれ。魔人達とどっか行って、強力なドラゴンを使役してこい」
「わかりました」
どう? どこぞの小説みたいな布陣でしょ? いいねいいね。
と、勝手に俺が内心盛り上がりつつ、シャーミリアに言う。
「あとはエミルと一緒に、ミニファントムの三体をもってくるぞ。あれが王城の護衛をすればいい」
「仰せのままに」
「で、ミニファントムは、どうやって使役させよう?」
「それは、私奴めに考えがございます」
「おっ! そう?」
「お任せください」
やり方は分からないが、何とか出来るらしい。
その時、モーリス先生が言った。
「あの! 話の途中で悪いんじゃが、フェアラートを手厚く葬ってやりたいのじゃが!」
だがなぜか、シャーミリアが慌てだした。
「そ、それでは恩師様! 私奴が責任をもって葬る事に致しましょう!」
「おお。シャーミリア嬢がやってくれるか、それじゃあお任せしようとするかのう」
「は!」
バシュッ!
シャーミリアがどこかに飛んで行った。
あいつ…何慌ててんだ?
そこでアナミスが俺に言う。
「ですが、日本人とナンバーズだけでは手数が足りません」
「確かにな」
「出来ましたらラウル様、モエニタ城で眠っている使用人達を…書き換えましょう」
その言葉を聞いて、オージェは嫌な顔をし、グレースとエミルはやれやれといった顔をする。
「…あれ、キッツイんだよなあ」
「日を改めますか?」
「いや今日やる。まず一旦みんなの駐留地を確保する。大型のテントを出すから、王城の敷地内にテント村を作ってくれ」
「「「「「「「「は!」」」」」」」」
そして俺は次々に、自衛隊の大型テントと野外入浴セット2型を召喚した。どんどんと出される資材を持って、魔人達は王城の庭にテント村を作っていく。
「エミル」
「あー、水…だろ?」
「そ、水」
「了解」
「ラーズ! ミノス! ドラン!」
「「「は!」」」
「エミルと一緒に、飲料水になる水を大量確保してきてくれ!」
「「「は!」」」
俺は早速、チヌークヘリと大型の貯水タンクを召喚する。
「んじゃ! よろしく頼む」
「了解だ。精霊にうんと綺麗な水を探させる」
エミル達は水を求めて飛んで行った。そしてグレースに言う。
「都市の生存者の為に、堰き止めた川を開放しよう。スラガ! ゴーグ! グレースと一緒に川を開放するんだ。ルフラはそのままグレースと行ってくれ」
「は!」
「はい」
「かしこまりました」
「ティラ達ゴブリン隊も言ってくれるか?」
「「「「「はい!」」」」」
そして俺は軍用車両のハンヴィーを二台召喚した。彼らはそれに乗って堰き止めた川へと向かう。
モーリス先生が俺に聞いて来た。
「ここは手薄にならんかのう?」
「僕とオージェ、トライトンとファントム、ギレザム、ガザム、カララ。それにマキーナ、ルピア、アナミス、セイラがいるんですよ。すでに魔人達が周辺を探索して、危険を確認していますから」
「なるほどのう」
するとそこに、のこのこと、デメール、アンジュ、雷神、死神がやって来た。
「ウチらもいるからねえ」
「そやねん」
「ですねぇー」
うーん。アンジュ以外あんまり役に立たん。
「そうですね」
すると雷神が騒ぐ。
「なんやねん。そのそっけない態度! わしらが役に立たんとでも思うとるんちゃうのか?」
くそ、えせ関西人め。
「いえいえ。神様達にはいてもらわないといけないのです。そうだよなアウロラ?」
「はい。そのように神託がでてるから」
「だそうです」
「アトム神の事ばかり信用しおって、そこで変に兄弟ぶるでないわ」
「でも、話を聞いてきて、いい方向に向かってるんで」
「わしらが受体したら、次は味方だとは限らんのじゃが?」
「まあ…その時はその時で」
そしてブリッツが言う。
「僕は味方ですよ。神を受体しても意識はのこるんですよね?」
「そうだね。俺達五人が残ってるから問題ないと思う」
「ならいいんですが」
アナミスが俺に言う。
「では。ラウル様。早速、使用人たちの施術を行いましょう」
なんか急かすなあ。
「それじゃあ先生たちは魔人たちと居てください。僕とアナミスとカララはやる事がありますんで」
「わかったのじゃ」
俺達三人は皆と離れ生存者の所に向かい、生存者達の最初の一人にアナミスが触れる。
「この者から」
「了解」
俺は魔力を活性化させて、アナミスと一緒に使用人たちの魂核を書き換えていくのだった。
この作業は…グールに入って人を食う作業の、次ぐらいに辛い作業だった。人間の螺旋にかかわる精神の根幹に触るのはげっそりする。
それでも、ここまでの戦いで俺の力はだいぶ上がっていて、前よりもつらさは無いようだった。だが次々に魂の書き換えをしているうちに…フラフラして来る。それでも全ての生存者の魂を書き換えて、まだ俺の精神は保たれていた。
「ふう」
さすがに俺が座り込むとカララが言う。
「お疲れ様でございました」
「こればっかりは慣れない。もう限界だな」
「必要な事でございましたので、致し方の無い事かと」
「歩くのもしんどいよ」
「それでは私がお運びいたします。アナミス」
「ええ」
プツッ。
油断した。意識を刈り取られた…。
そして気が付けば、俺は自衛隊式浴場「野外入浴セット2型」の浴槽に横たわっていた。
んー。温かい…気持ちええ。
ぼんやりとしながら、俺が何故、湯船に沈んでいないかを考える。
むにゅ。
ああ…この慣れ親しんだ感覚。幼少の頃からこれが楽しみで…。
はっ!
はっきりしてわかった。俺は裸のマリアに抱かれているのである。そして右手をカトリーヌがマッサージしており、左手をミーシャがマッサージしていた。二人とも全裸である。
満たされていく…。
よく見れば足元にはシャーミリアとカララ、アナミスとルピアがいる。たわわな胸がお湯に浮かび、俺の腰がシャーミリアの膝の上、カララが太ももをマッサージしており、アナミスとルピアが両足をマッサージしていた。マキーナが控えめに二人の後ろで見ている。
「うん…」
するとだんだんと自分の体の状態に気が付いて来る。
あ、いや。まて。俺の…マグナムくん一号が! 大変な事に!
ピクッ!
するとカトリーヌがポツリと言った。
「アナミス…起きたようよ」
「さすがはラウル様…回復が随分早くなりました」
すぅっとアナミスから赤紫の靄を見たのが最後だった。
俺は女達に囲まれたまま、深い深い眠りに落ちていくのだった。




