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第94話 グラドラム戦再び

夜の空に巨大な魔石が浮かんでいる。


真っ赤に染まった魔石から、グラドラムの魔法陣に光が注がれているようだ。


《魔石にこんな使い方があるとはな・・ルゼミア王が危険と言っていた意味をやっと理解した。俺の失敗だ・・》




グラドラムの都市全体が赤い光を帯び始めているようだ。


「ゴボッ」


また血を吐いた。


「ご・・主人様!ご主人様!」


「シャーミリア。少しばかり毒が効いたようだ。」


「私が消滅してもお救い致します!」


「ま、まて!それはダメだ!これからもお前が必要なんだよ!」


「で・・ですが!」


シャーミリアが慌てふためいている。まずは落ち着いてもらおう。


「ゴホッゴホゴホ」


「ああ、ご主人様!」


「それならば私が!私が消えてもシャーミリア様さえいれば!」


「ダメダメ、ダメ絶対!マキーナも必要なんだよ。ちょっとまてよ!」


「ゴボッ!」


「ああ!」

「そんな!」


吐血しても意識ははっきりしている。おそらく魔人側の部分がやられているのだろう・・魔力が消耗していくのがわかった。体から魔力が抜けてしぼんでいく感覚。おそらく俺に人間側の部分が無ければ動く事すら難しかったかもしれない。ハイブリッドの体に感謝だ。


「とにかく、お前たちもこの家を囲む光の結界から出なければまずい!」


「私奴・・の事などどうでもよいのです!ご主人様さえ生き延びられれば」


「おまえたち!冷静になれ。大丈夫だ!」


光の結界はヴァンパイアにはかなりきついようだった、シャーミリアとマキーナが動かなくなってきた。こころなしか・・灰になりかけている!?




するとポール邸の中からおさげ髪の少女が出てきた。


「あの・・誰もいません。」


「誰もいない?」


「はい、走って中を見ましたが誰もどこにも見当たりません。」


「えっと・・君の名前は?」


「カトリーヌです。」


「カトリーヌ、君はどうして屋敷に入れてもらえなかった?」


「私が本当は貴族だったからかもしれません・・」


「貴族?」


「はい、戦争でユークリットが滅んだときに、ある方からかくまってもらい、町民に預けられ普通の子として育てられました・・・」


「それが・・ばれた?」


「それを仲の良い使用人の数人に話してしまいましたから・・・」




《どういうことだ、でも今はそれどころではない・・・》


「どうして俺に正直に言う?」


「わかりません・・あなた様には正直に話していいような気がしました。」


「そうか・・」



まずはここを突破してみんなのところに合流するのが先決だった。マリアに無線機で連絡してみる。


「マリア!聞こえるか?」


「はい!」


前世の機器である無線機は魔力で作られた結界には何の干渉もされず連絡できた。


「やつらは完全にこの機会をまっていたな・・」


「この機会?」


「ああ、完全な罠だ。まんまとはめられたよ。ポール王はそこにいるか?」


「はい」


ポール王が慌てたように通信機に叫ぶ。


「そちらからも見えておりますか!?町の中央に大きな赤い光が・・!」


「ああ、見えている。」


「これはなんでしょう。」


「おそらく街ごと罠になっているようだ。それよりも、デイブ宰相と使用人たちがいなくなっているんだが、何かしっているか?」


「デイブが?いえ、屋敷にいるはずですが・・」


「もぬけの殻だったよ」


《どっちだ?こいつは・・どっちなんだ?敵なのか味方なのか・・だがこちらの体力的にもそろそろ限界だった、動かねば死んでしまう。シャーミリアとマキーナも這いつくばってしまった。》


「では一体彼らはどこに?」


逆にポールに質問される。


「わからない。」


《いやいや!こっちが知りたいわ!》


「わ、わわ!」


ドゴーン、シュバーア、ゴパーン


無線機の向こう側から爆発音が聞こえてきた。


「どうした?」


「て、敵の魔法師団がこちらに魔法攻撃をしておるようです。」


《やばいなこの最悪のタイミングで敵の主力部隊が動き出したか。》


俺は全員に向かって総攻撃の指示を出す。


「全員、攻撃開始だ!すぐ行く!まっててくれ!」


「「「「は!」」」」



動く前にティラに連絡する。船が離れたか確認せねばならない。沈められでもしたら俺達に逃げ場はない。


「ティラ!今はどうなっている?」


ガガッ


「船は岸・・離れ沖に向・ガッ・ています。」


どうやら船が沖の方に向かっているらしく、通信が途切れ途切れになる。距離が開いているんだろう。


「とにかく距離をおくんだ!」


ズッガガッ


「わか・ま・ガッ・・」


切れた。




シャーミリアとマキーナが虫の息だ。


《ちと体と魔力に不安があるが、脱出しなくてはならん。俺にはこれしかないんだ!俺の体・・もってくれよ!》


「うっ、がぁぁぁぁ」


ズゥウウンン!


俺達の前に鉄の塊が出てきた・・


「ハァハァ、で・・出た!召喚できた」


ポタポタと口元からま血がしたたる。


「ご主人様・・大丈夫・・ですか・・」


「俺は問題ない・・というかお前たちのほうが深刻だろう‥」


「いえ・・」


《いやいや・・だってなんかちょっと崩れてきているし・・》


「とにかくこれに乗り込め。」


俺は、それ(・・)の天井に乗ってハッチを開ける。


「シャーミリア手を!」


シャーミリアに手を伸ばす!シャーミリアを引っ張り上げて天井の入り口から中にいれた。手が取れなくてよかった・・次はマキーナだ。


「マキーナ手を出せ!」


マキーナを引き上げ入り口から中に入れた。


するとカトリーヌが、どうしたらいいのか分からないような顔をして、俺を見ていた。


「こい!」


カトリーヌも天井に引っ張り上げて入り口に入れる。最後に俺が乗り込んで閉めた。


《さて・・あれだけ魔人の国の山脈で人知れず、これの操縦を練習したんだ。乗りこなすようになるまで本当に苦労した・・車と似たような装甲車とは操作系統が全く違う。前世でも乗った事なんかなかったからな。》


「ごほっごほ」


血がしたたる。


「ご主人様・・」


シャーミリアとマキーナが俺を心配そうに見ているので、親指を立ててみせた。


俺はそれを稼働させる。


グォオオオオン


こいつ・・・動くぞ!


まあプチネタはやめておこう。



俺達が乗るそれ(・・)は前進し始めた。すると光の結界ははじけ割れるように消え、物ともせずに突き進んで行くのだった。


「ご主人様!」

「治療を!」


光の結界を抜けてシャーミリアとマキーナがあっさり復活した。俺を心配している。


《ヴァンパイアすげえ!》


「問題ない。体は動く。」


ポール邸の周辺には魔石からの魔力で発動する、光の結界の魔法陣が書いてあったのだろう。


《魔石にはこんな使い方があるのか・・街の全域に書かれた巨大な魔法陣は何の魔法なんだ?赤く光っているようだが、シャーミリアとマキーナに影響がないところをみると・・光属性じゃないな・・なんだ?》



魔法陣のブービートラップの正体がわからないまま、味方のいる元へひた走っていく。




魔導士軍団からの魔法攻撃が威力を増してきた。


「迎え撃つ!」


ラウルから攻撃の指示が出たマリアは魔人に号令をかける。魔法師団の前方には騎士が盾を持って防御の陣形をとっていた。後方の魔法使いからは火、氷、雷、岩が魔法により飛んでくる。


バーン!

ガシャン!

シュパーッ!

ボズゥーン!


遠距離から飛んでくる魔法攻撃だったが、街を囲む岩壁がそれを防いでいた。


「おそらくは岩壁を突き破って都市の内部まで攻撃されることは無いだろう。魔法で先制して騎士が都市内に突入してくる作戦だ!」


ギレザムが皆にそう伝える。


全員がそうだろうと認識を持っていた。正門を突破されるわけにはいかない。


「私が魔法使いを殺る、みんなは前方の騎士団を!」


「「「了解!」」」


マリアのマクミランtac-50スナイパーライフルが火を吹いた。


ズドン!


バシュ!


魔法使いが頭から血煙をあげて倒れる。


「次」


ズドン!


バシュ!


マリアの狙撃は寸分の狂いもなく魔法使いの眉間をうちぬいた。


しかし・・敵はいつものように怯まなかった・・。


自分達の命などお構いなしと言わんばかりに、魔法師団は魔法を撃ち続け、騎士は前進してくる。


「どういうこと?あんなに撃ち続けたら、いくらファートリア神聖国の魔法使いでも、じきに魔力がつきてしまうわ。」


マリアは疑問に思いながらも次弾を放つ。


ズドン!


バシュ!


また1人死んだ。


また前方の騎士団も盾をかまえてはいるが、後ろで倒れる魔法使いに臆することなく進んでくる。


騎士が射程に入ったのでルピアのM240中機関銃も火を吹いた!


ガガガガガガガガガガガガ



スラガがマズルから受け継いで搬送しマリアが設置した、M 134ミニガンの一門をルフラがもう一門をアナミスが打ち始める。


魔人にはどうにもM134ミニガンの設置は難しいらしく、手先の器用なマリアがバッテリーと弾丸ケースをつないで設置したのだった。



キュイィィィィン


ズダダダダダダダダダ

ズダダダダダダダダダ


騎士団たちは盾を構えた先頭のものから、将棋倒しに倒れていく。隠れるところもなくなすすべなく死んでいくのだった。


ギレザム、ガザム、ゴーグ、ダラムバ、ジーグ、スラガが、FN スカー自動小銃を撃ちこんで敵を倒して行った。


パラララララララ


極めつけはファントムが装備したM61バルカン砲だった。M61バルカンを土台ごと担ぎ、超重量のバッテリーと弾丸ケースを背負いながら、砲先をふりまわした。騎士団が粉微塵になって吹き飛んで行った。


ズドドドドドドドド


戦場には近代兵器の暴威が吹き荒れ、あっという間に2000の将兵は数を減らして行った。異世界の騎士や魔法使いは、凶暴な銃火器の前では無意味だった。


俺の兵器が仲間の手によって千の敵を撃つことにより、エネルギーが俺に注ぎ込んできた。魔力が爆発的に拡大していき、毒にやられていた体が急速に回復するのがわかった。


《兵器を使って人間を殺している間は、驚異の回復力があるみたいだな》



そんな中、味方達に疑問が浮かんできた。


「どうしたことだ?」


ギレザムがつぶやく。


「敵が引かない・・?」


ガザムも疑問に思っていた。


「必死に我々を足止めしている?」


ダラムバも不思議に感じていた。


「おかしいわ、このままでは全滅するというのに、侵攻をやめない。」


マリアもその違和感に気づいていた。


いくら攻撃をしても敵主力部隊の突撃行動が止まらない。




キュラキュラキュラキュラキュラ


皆が疑問で攻撃を止めた。街の中から不思議な鉄の乗り物が出てきた。こんな物を出せるのはこの世に1人しかいない。


現れたのは、ロシアのBMP-T テルミナートル、通称ターミネーター戦闘車両だ。


30mm機関砲x2、対戦車ミサイル 連装発射機x2、7.62mm機関銃x1、30mm自動擲弾発射機x2という武装をもった、戦車とは違う対人戦闘に特化した戦闘車両だ。戦車を改良して作られたこれは、人間から見れば化け物そのものだった。


俺が天井ハッチを開けて顔をだす。


「ラウル様!」

「ラウル様なにかおかしいのです!」

「敵がひきません!」

「何か狙いがありそうなのです!」


全員から無線機ごしに報告が入った。


「どうしたんだ?」


すると魔人達の容赦ない攻撃に圧倒されていたポール王がはっと我にかえり、俺の所に近づいてきて代表して伝えてくる。


「ラウル様!配下様達の苛烈な攻撃を受けても、敵兵があゆみを止めないのです。自殺行為ともとれるような!何か思惑があるのでは?」


「いったい・・なんなんだ・・巨大魔法陣といいタイミングを合わせたように・・」



すると、カリスト・クルス神父が後ろの2人の神父に話かけていた。


「どうしたのですか?あなた達。」


後ろの2人の神父が、俺たちを見てガタガタと震えているのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦況的には五分五分な感じではありますが、状況的には罠に嵌められ・決死の覚悟でその場に繋ぎ止められている分、ラウル君側が不利…そんな感じでしょうか? 弱っている状況ながらも召喚術で(・・)を…
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