第925話 大量デモン駆除とデモナード住人との遭遇
俺達はフェアラートの策略によって、デモンの世界デモナードとやらに飛ばされてしまった。しかも、こともあろうにフェアラートとゼクスペルを逃してしまうという失態。また、この世界の住人ではない俺達に対しての反発なのか、こちらに向かってなんらかの気配が大量に迫ってきている。
「ご主人様、デモンです。かなり数が多いようです」
「まあデモンの奴らの世界だからね、めっちゃくちゃ居るだろうな」
するとギレザムがニヤリと笑って言う。
「と、言う事はラウル様。この世界は元の世界ではないという事。しかもデモンの世界というのなら、全く手加減をしなくて良いと言う事になりませんか?」
「そのとおりだギレザム君。いいところに気が付いたね」
「はい」
ズン!
俺はすぐにM110A2自走榴弾砲を召喚する。203mm榴弾を吐き出す大型の砲塔で俺が砲座に座った。その周りには、 M230 30mm チェーンガンを搭載したハンヴィー汎用軍用車を三台召喚し、ギレザムとガザムとゴーグに任せる。シャーミリアとファントムには携帯用M134ミニガンとバックパックを装着させた。
「カララは俺の側に! 砲弾の装填を頼む」
「はい」
「じゃ。先制攻撃すっかな、自衛隊じゃないから専守防衛とか関係ないし。シャーミリア! 上空で射弾観測を頼む」
「は!」
重量のあるM134ミニガンとバックパックを背負っても、軽々と上空に羽ばたくシャーミリア。
《二時の方向に調整してください》
ういいいいいいいん!
《射角三十度でお願いします》
ういいいいいいいん!
《いかがでしょう?》
《撃つよー》
ドン!
203㎜榴弾が勢いよく、迫ってきているデモンの群れの方角へと飛んで行った。
ヒュゥゥゥゥゥゥウ! ドゴン!
《ご主人様! 射角を二十九度へ、右に五十ほど調整を!》
《あいよ!》
ういいいいいいいん!
《お願いします》
ドン! ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! ドゴン!
《命中しました》
《よし》
「カララ! サーモバリック弾を充填するぞ」
「はい」
ガシャン! 俺が召喚したサーモバリック弾をカララが装填する。
「装填!」
「よし!」
ドン! ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! グバアアアアアンン!
《大量に吹き飛びました》
《んじゃ、じゃんじゃんやるか》
ドン! ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! ドン! ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
次々に飛んでいき、遠方でサーモバリックの恐ろしい爆発が広がっていく。そこで俺は気が付いた。
「ファントム! ちょっとこい!」
《ハイ》
ファントムが来た。
「装備を解除!」
《ハイ》
ファントムがM134ミニガンを外しバックパックを置く。そして俺は次にもっとバカでかい奴を召喚した。それはBLU-82/Bデイジーカッター、6.8トンの巨大爆弾だ。そして俺がファントムに言う。
「俺が撃った方向へ、これを投げろ!」
《はい》
ファントムがデイジーカッターを持ち上げて、二、三歩後ろに下がり、ダッ! と十メートルくらいダッシュしてデイジーカッターを放り投げた。バッシュゥゥゥゥゥ! と勢いよくデイジーカッターが飛んでいく。それが着弾する前にさらに五発ほど同じものを並べた。
「次々行け!」
《はい》
バシュッ! バシュッ! バシュッ! バシュッ! バシュッ!
デイジーカッターはまるで、サッカーボールのスローインのように投げられ次々に飛んで行った。
ゴッゴオオオオオ! ゴッゴオオオオオ! ゴッゴオオオオオ! ゴッゴオオオオオ! ゴッゴオオオオオ! ゴッゴオオオオオ!
まるで核弾頭が爆発したかのように、横一列にデイジーカッターが爆発していく。
《どうだ? シャーミリア!》
《ご主人様のお力は偉大でございます。群れの大半がちぎれ吹き飛びました!》
《他に何かあるか?》
《飛翔するデモンが来ました》
《陸は諦めたのかな?》
《そのようです》
「みんな! 飛ぶデモンが来るそうだ! 迎撃するぞ!」
「「「は!」」」
「ファントムはM134を再装備!」
《ハイ》
いやあ…ストレス発散になるわあ。こんな力いっぱい兵器が使えるなんて、なんてしあわせなんでしょう。南に来てからずっとフラストレーションを抱えてたから、めっちゃスッキリする。
俺はM110A2自走榴弾砲を降りて、隣にM113 ADATS自走発射機を召喚した。4連装ミサイル発射機を二基装備しており、ミサイルは俺が召喚し放題。
「じゃ、撃つか」
バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!
次々にミサイルが飛んでいく。とにかく弾幕を張って、飛ぶデモン達を寄せ付けないようにして見る。空中で爆発が横一列に並んだ。俺は次々にミサイルを召喚装填して、撃ち続ける。次々に射出されるミサイルで弾幕を作り、それに巻き込まれたデモンが落ちているようだ。
するとゴーグが言う
「ラウル様ぁ。こっちにぜんぜん来ませんよ?」
「来ない方が良いだろ? キモイし」
「まあ。そうですけど」
「暴れたいのか?」
「せっかくラウル様が召喚してくださった、コイツをぶっ放してみたいです」
「そっか。じゃあ待ってみるか」
「はい!」
しばらくするとボロボロになった、ハエタイプのデモンが飛んで来る。オーガ三人衆は嬉々として銃を撃ち始めた。
ドンドンドンドンドンドン!
ドンドンドンドンドンドン!
ドンドンドンドンドンドン!
良い音ぉ! やっぱ30㎜機関砲はいい!
シャーミリアとファントムはうち漏れたデモンを、適当に落とすだけにしている。
「ご主人様。地上のデモンもちらほらたどり着いてまいりました」
「ほんとだ」
フレイムデモンがふらふらになりながら、俺達のもとにたどり着いたようだ。だが、あっさりシャーミリアとファントムから撃たれて死ぬ。しばらくやっていると、とうとうデモンの進撃が止まった。
「シャーミリア! どのくらいやったかな?」
「一万体は駆除したかと」
「そっか。このあたりのデモンは一旦おちついたかな」
「そのようでございます」
そう言ってシャーミリアが俺の隣りに降りて来た。
「よーしみんな! デモンに兵器を渡すわけにいかないから、M110A2自走榴弾砲とM113 ADATS自走発射機を破壊してくれ!」
皆が兵器を破壊し跡形もなくなる。皆が俺の周りに集まって指示を待った。
「デモンの世界ってことは、都市とか村とかあるのかね?」
「申し訳ございません。そこまでは存じ上げません」
「ギレザムは?」
「我もそこまでは」
他の配下も首を振る。
「そっか。さてと、とりあえず移動するか。あっちの世界に戻る方法を見つけないとね」
「「「「「は!」」」」」
《ハイ》
「向こうで戦っている仲間が苦戦してるかもしれないから急がないと」
そこでギレザムが言う。
「では今、敵が出現した方角へ向かいましょう。出て来たと言う事はその先に何かがあるかもしれません」
「だね」
皆が三台のハンヴィーに乗り込み、銃座には俺とシャーミリアとカララがそれぞれ座る。
「ギレザム、ガザム、ゴーグ! 出発だ」
ハンヴィーが走り出し、落ちたデモンを踏み潰しながら荒野を進み始めた。ところどころに廃屋のような建物があり、あちこちから火が上がっている。見渡す限り森のような植物は見えず、都市なども見えてくる気配がない。空が赤いのが気持ち悪いが、暗い訳ではなく遠くまでよく見えた。
「これって、夜とかあるのかなあ」
「申し訳ございません。それも存じ上げません」
「陽が出ている感じはしないのに、明るいから不思議だよ」
「はい」
デモンの世界には生き物がいないし、魔獣などもいないようだ。ただひたすら荒廃した風景が続くだけ、俺達のハンヴィーが爆撃地点に近づくと、シャーミリアが言った。
「まだ息のある者がいるようです」
「適当にとどめさしてくか」
「「は!」」
俺とシャーミリアとカララが、周辺のズタボロになって生きているデモンを30㎜機関砲で仕留めていく。撃てばバラバラになり、あっという間に塵になった。そのままこいつらが向かってきた方角へ進んでいくと、かなり遠くにおかしな建物が見えて来る。
「なんだあれ?」
「城じゃないですかね? 」
「確かに城っぽいな」
それはまるで、前世の映画で見たヴァンパイアか悪魔が住むような城だった。だが不思議な事に建物は城しかなく、周りに都市があるわけではない。
「フレイムデモンとかハエデモンは、家には住んでないのかね?」
するとゴーグが言う。
「そうじゃないですかあ? なんか服も来てないし、アイツらに家ってちょっと想像つかないです」
「言うとおりだな」
城まで八百メートルくらいの距離でハンヴィーを停めた。見れば見るほどおどろおどろしい城で、魔城というにふさわしい、まるでネタのような城だった。
「どうしたらいいかな?」
ギレザムが言う。
「破壊してしまってはいかがでしょう?」
「うーん。別に恨みは無いんだけどな」
ガザムが言った。
「私が潜入して内部を探って来ましょうか?」
「それはいささか危険だ。どんな奴がいるか分からんし」
するとゴーグが言う。
「あっちの世界への帰り道を聞いてみるとか?」
「…なるほど。向こうの世界では普通にあるもんな」
「はい」
俺は早速、音響兵器LRADを召喚し、スピーカーをその城に向けた。指向性が出るように、スピーカーを調節して音量をMAXにする。
「みんなはこれを」
スマートイヤーカフを召喚してみんなに渡し、耳にはめたのを見て俺はマイクに向かって言った。
「こんにちわー!」
恐らくスピーカーの正面に居たら鼓膜が破れるだろう音が、真っすぐに魔城に飛んでいく。
シーン。
特に答えは無い。
「道を聞きたいんですけどー!」
シーン!
…どうする? 全く反応がない。
俺はシャーミリアに聞いた。
「気配は?」
「大きめのが二つほどあります」
「居留守?」
「そうかと」
じゃあ。楽しそうにすれば出て来るかもしれない。そこは俺の美声で。
「じゃあ、ここで一曲!」
前世の記憶をたどり、JPOPを歌い出す。シャーミリアだけがうっとりして聞いていた。
「素晴らしき御歌声! 神の恵みとはこの事!」
俺がしばらく歌っていると、魔城のデカい門がゆっくりと開いていく。
やはり…。俺の得意な歌につられて出て来たようだな…。ふっ!
「出てきました」
ギレザムが言う。俺達は一応武器を構えてそいつが出てくるのを待つ。門の前には二体のデモンが現れ、そいつらが俺達の方に近づいて来た。一人はドラキュラ伯爵みたいな奴で、一人は頭に角が生えた女のデモンだ。
俺はマイクに向かって言う。
「いやあ。流石に本物はわかりますよね?」
「うっさいわ! なんちゅう凄まじい音をだすんだ! 貴様! 殺す気か!」
「本当に! なんという攻撃を! 恐ろしい!」
「えっ?」
めっちゃ怒ってる? もしかしたらデモンを大量討伐したのがムカついてる?
「もしかして俺が…」
「とにかく、それを止めろ! うっさい!」
「あ…」
どうやら音響兵器LRADがうるさいらしい。それは失敬した。
「あー、すまん」
「何の用だ!」
「いや。道を聞こうと思いましてね!」
「誰が教えるか!」
「あ、大量にフレイムデモンを討伐したから怒ってらっしゃる?」
「はあ? 野にいるケダモノを殺したのを自慢でもしに来たのか?」
「えっ。あれここの市民じゃないの?」
「フレイムデモンやフライデモンなど、野にいる獣ではないか! 市民などではないわ!」
そうだったんだ。この世界の常識を知らんから、もしかしたらアイツらは市民とかなんだと思った。
「それはすいません」
「というか…迷うたか? 貴様らのいるところではないぞ・」
「あの。迷いまして、お家に帰りたいのです」
「ほう…。お前が何者かはしらんが、我らに頼みごとをするときは契約がいるのだぞ?」
「契約?」
「そうだ。契約だ」
確か…今までも、デモンから契約という言葉は聞いた事がある。悪魔と契約というと、めっちゃ良からぬ事しか思いつかない。とりあえず俺はすぐに答えずに考え込むのだった。