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第904話 大巨人を倒したらダンジョン

 ツノヤギを追い払って険しい山道を進む事一時間、ところどころにあった冒険者の死体をファントムが吸収し遺品回収していく。すると穴が空いた死体だけじゃなく、体中が滅茶苦茶に折れて死んでいるのもあるようだ。まあ霧と足場の悪い崖、普通の人間ならば滑落して死ぬこともあるだろう。ましてや霧の中であのような魔獣に出会ったら、慌てて逃げる際に転げ落ちてしまうかもしれない。


「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」


 俺が遺体に向かい手を合わせてそう言うと、シャーミリアとアナミスもマネして言う。


「「なむあみだぶつなむあみだぶつ」」


 たぶん何の事か分からんだろうが、二人にとってはただ俺の真似をすることに意義があるのだ。


「ファントム、死体を回収しろ」


《ハイ》


 しゅおおおおお! とファントムが死体を吸いこみ遺品を回収する。なんて悠長な事をやっていた時だった、薄っすらと変な音が聞こえてくる。


「なんだ?」


 ドドド? ゴン!


 いきなり頭上に二メートル大の巨大な岩が落ちてきた。


「おわ!」


 ゴガン!


 ファントムがその岩を殴ると、左右に割れて崖下に落ちていく。だが岩はその一つではなく、何個も何個も落ちてきた。アナミスが俺に覆いかぶさるようにし、ファントムとシャーミリアが巨大な岩をことごとくいなしていく。それはしばらく続いたが、一発も俺にあたらずに岩は砕けて落ちた。


 次第に勢いがなくなり、岩の落下が止まる。


「がけ崩れか?」


「落下前は何の前触れもございませんでした」


「いきなりだったな」


「はい」

 

 崖の上を見るが霧で先が見通せない。俺達はしばらくそこに留まり、上の様子を伺っていたが何も変化は無かった。逆に静かすぎて不気味なくらいだ。


「万が一落石があっても岩場に身を隠せば問題ない。登るぞ」


「「は!」」

《ハイ》


 俺達が再び崖を登り出すと、突然霧が濃くなってきて視界が悪くなる。するとシャーミリアが俺の前にスッと出て、止まるようなジェスチャーをした。


《なんだ? ツノヤギか?》


《いえ。何やらおかしな気配が》


《シャーミリアでも、気配を正確に捉えきれないのか?》


《気配があるのに無いと申しますか、おかしな雰囲気です》


《どうするか?》


《危険ですので、ファントムに先行させ様子を見てはいかがでしょう。私奴はいざという時にご主人様を守らねばなりません》


《そうしようか。ファントム! 行け!》


《ハイ》


 ゴオッ! とファントムが大きくジャンプして、上の霧の中に消えていった。


 次の瞬間。


 バリバリバリバリ! ゴゴゴゴゴゴ!


 物凄い地鳴りがしたと思ったら、地面が思いっきりそそり立ってきた。山肌が垂直になり、やがては反対側にめくれてくる。シャーミリアは俺を掴んで飛び立ち、アナミスも山肌を離れて飛んだ。するとすれ違いざまに、ファントムが俺達のそばを落下していった。


 ヒュンッ!


「ファントム!」


「ウスノロは大丈夫です! ご主人様、それよりもあれを!」


 山から飛んで離れてみてみると、霧の中から何かが持ち上がってくる。それはぐんぐんと天空に伸びあがっていき人型の大巨人になった。


「デカ!」


「あれが地面を剥がしたようです!」


 なんと山ぐらいありそうな巨人が、山肌をめくり上げて俺達を振るい落とそうとしていたのである。


「ゴーレム? にしてはめちゃくちゃデカいな。まるでもう一つ山が出来たようだ」


 すると次にそのゴーレムは、近くの岩を持ち上げて俺達に放り投げてきた。シャーミリアとアナミスが、その岩をひらりひらりとかわす。あんな岩にぶつかったらぺしゃんこになりそうだが、二人にとっては避けるのに苦労はない。


《シャーミリア。上空へ飛んでくれ》


《は!》


 シャーミリアがその巨人の頭上に飛びあがる。すると俺達に向かって巨人が手を伸ばしてきた。


「もっと上へ」


「は!」


 手を逃れぐんぐん上がって行き、巨人の全体が見渡せるまでになった。


「岩だよなあれ」


「そのようです」


「んじゃ」


 俺は空中にGBU-28バンカーバスター(地中通過爆弾)を大量召喚した。GBU-28バンカーバスターとは地下30メートルにまで刺さり爆発する、2,2トンの地下基地破壊用爆弾である。岩ならばこいつが利くはずだ。そのまえにっと、ファントムにあたったら大変だ。


《ファントム! しばらく出てくんな! 危ないぞ》


《ハイ》


 俺の指先が下を向くとバンカーバスターは次々に自由落下して、岩の巨人に突き刺さり爆発し始めた。次々に爆発して巨人ゴーレムの表面をガンガン削っていく。


「よっしゃ効いた」


 俺は断続的にGBU-28バンカーバスターを召喚して、雨あられの様に自由落下させた。すると巨人がたまらず、腕を上げて頭を隠そうとする。だが腕がボロボロに崩れていき頭がむき出しになる。次第に頭にも突き刺さって半壊し、たまらず巨人は膝をついた。


「しぶと! ならこれでどうだ!」


 俺は次に、GBU-57A MOP(大型貫通爆弾)を召喚する。GBU-28バンカーバスターが2,2トンなら、これは13,6トンあり、70メートルも深く刺さり大爆発を起こす。重量と破壊力はGBU-28バンカーバスターの比ではない。


 案の定、GBU-57A MOPは巨人に深々と突き刺さり大爆発を起こした。腹の当たりに大きな穴が空き、尻餅をつくような形で倒れ込む。だがまだ立ち上がるような仕草をした。


「山…大丈夫かな」


 俺はGBU-57A MOPを十本召喚した。それが巨人に向かって行くと、次々に刺さり爆発する。まるで穴の開いたチーズの様になった巨人だが、それでもまだ動こうとしていた。よく見れば崩れかけている岩が、元に戻ろうとしている。


「再生すんのかよ」


 どうやら最初の大きさよりも小さくなりつつも、穴を埋めようとしているようだ。


「さて、どこまで耐えられるかな?」


 俺はもう山の破壊など眼中になかった。巨人ゴーレムに対し、GBU-57A MOPを無尽蔵に雨あられの様に降り注いだ。再生するなら再生の隙を与えないで、爆撃し続けるだけだ。もはや爆炎で巨人は見えなくなり、それでも俺は徹底的にGBU-57A MOPを撃ち込んでやった。


「どうかな?」


 俺が爆撃を止めると、とうとう巨人の姿はどこにも無くなってしまう。煙が少しずつ薄れていき、山肌が見えて来て俺達は意外な光景を目にする。山肌が破壊され尽くした先に、迷路のような通路が現れたのだ。


「あっ…」


「ご主人様。ダンジョンのようです」


「だな。やりすぎてぶっ壊しちゃったみたい」


「ご主人様に岩などを投げた罰でございます」


「神様なら悪い事しちゃったな。とりあえず降りてみよう」


 俺とシャーミリア、アナミスが地表に降りる。そして俺はファントムを呼んだ。


《もう出て来ていいぞ!》

 

《ハイ》


 そこにファントムも合流して来た。山肌はあちこち穴だらけになっており、ところどころに人工的な通路がむき出しになっていた。その通路に降り立って壁に手を当ててじっと見る。


「間違いない。ダンジョンだ」


「扉を見つける事無く、ダンジョンを発見してしまいましたね」


「だな。どっかに扉があったんだろうが、屋根ごとひっぺがしてしまったらしい」


「お見事です」


「いや。たまたまなんだけど、あんな巨人が出てくるから仕方なく」


「どうされます?」


「ちょっと見て行こうか。もし危険だと判断したら、ギレザム達を連れて来ればいいだろ」


「「は!」」


「ファントム。そこの瓦礫を片付けてくれ!」


《ハイ》


 崩れた山の岩を次々に放り投げ、ファントムが道を開けてくれた。本来は入り口から入らなければいけないのだろうが、壊してしまったからには仕方がない。俺達は空いた穴から、通路に侵入していくのだった。


「魔獣とかいるのかな?」


「感知できませんので、魔獣はいないかと」


「そっか」


 俺達四人が更に奥に進むと、何かが動き始めるのが分かる。


「恐らくはゴーレムかと」


 シャーミリアの言うとおり、俺達の前にはゴツイ岩のゴーレムがぞろりと並んでいる。だがそのゴーレムは俺達と反対の方を向いているようだった。


「あ。たぶん裏から表に向かって進んでるんだな」


「おっしゃるとおりかと」


 俺達の話し声に反応したゴーレムが、ぐるりとこちらを振り向くと一斉に全部のゴーレムがこちらを見る。


「さっきデカいのとやったばかりだからな。壊し方は分かってる」


 だがデカい武器を使ってしまえば、ダンジョンは崩落して俺達は生き埋めになってしまうかもしれない。そこで俺はすぐにM72E9 貫通力強化ロケットランチャーを何本も召喚して全員にわたした。


「撃っていいよ」


 シャーミリアとアナミスとファントムが、次々に M72E9・貫通力強化ロケットランチャーを撃ち込んでいくと、ゴーレムは体に穴をあけて次々に崩壊していく。しばらく続けていると、その部屋のゴーレムは全て沈黙した。


「なんかグレースのゴーレムと似てる。だけど、グレースの方がプログラムしてるだけ性能が良い。ここのゴーレムはただ立ち向かって来るだけで狙いやすい」


「操作の知識がないのでございましょう」


「なるほどね。じゃあもう少し進んでみようか」


「「は!」」

《ハイ》


 俺達は今着た通路を逆戻りしていき、反対側の瓦礫を片付けて穴に入った。すると通路の先に扉が現れ、それを開くと今度は階段が出てきた。


「こっちだ」


 俺達が階段を降りていくと、そこにはまた通路が出てきた。どうやら迷路のようになっているようで、右と左に通路が続いている。


「どっちかな?」


「アンデッドや魔獣であれば気配を辿れるのでございますが、ゴーレムとなるとつかみかねます。私奴が先行して探ってまいります」


「いや。急いでるわけじゃないからな、じっくり進んで無理ならやめよう」


「は!」


「じゃとりあえず左で」


 そして俺達は左へと進んだ。シャーミリアが先頭に立ち、俺とアナミスが中衛、ファントムが後衛を務める。迷路をグルグルと回るが、なかなか扉などが出てこない。だが次の曲がり角を曲がった時だった。ひょろひょろしたゴーレムが通路にゆらゆらと揺れていた。


「細!」


 俺がそのままM72E9 貫通力強化ロケットランチャーを召喚し打ち込んでみる。だがなんと、ひょろひょろしたゴーレムはランチャーの弾を避けたのだった。弾は奥まで飛び壁にぶつかり炸裂する。


「速!」


 すぐさまシャーミリアとアナミスが俺の前に立ち、ファントムが後ろに構えて警戒態勢を取る。


「速度が速いようだが、シャーミリアとどっちが早いかな?」


 俺はシャーミリアに、召喚したMGL140グレネードを渡す。


「これを至近距離からお見舞いしてやれ」 


「は!」


 俺の前からシャーミリアが消え、次の瞬間ひょろひょろのゴーレムの中に出現するのだった。

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