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第900話 古典的な作戦

 魔道鎧で強化している騎士と、フェアラートという強力な魔導士がいる事を知った俺達は、作戦の変更を余儀なくされる。改めて周囲の状況を調査したうえで、最適な作戦を考え出すのだった。


「まあ焦らずに行く事じゃな」


「はい先生」


 簡単に言えば俺が焦りすぎていたのだ。むしろここまで来たのだから、腰を落ち着けて攻略するべきという結論になる。俺達は今、山頂にあるイフリート神殿を訪れていた。モーリス先生がその内部の構造と、神が使うゲートの事を聞いてここを活用する事になったのだ。


「まずは魔導エンジンが数基必要じゃな」


「わかりました」


 各地に繋がる神ゲートがあるという事は、ここに転移魔法陣を設置する事は可能だと考えたのだ。ゲートは神である俺達しか通れないが、汎用性のある転移魔法陣を作れば兵士を大量に呼び寄せられると推測した。俺達はこのイフリート神殿に前線基地を作る事にしたのである。


 そしてオージェが言う。


「ここに基地を設置する事が最重要課題だとして、俺達は俺達のやることを並行で進めるぞラウル」


「だな」


 俺達は、モエニタ王都の周辺調査をもとに書いた地図を広げて周辺の地理を確認した。俺達がモエニタ王都攻略に向けてやる作戦は、とても古典的な物だ。


『兵糧攻め』


 籠城する敵を攻めるのに最も効率的で、君主を捕獲するのに一番適している方法である。交通の要所や軍事的に重要なポイントを押さえ、持久戦に持ち込むことにしたのである。だが兵糧攻めをするには、ここにいる精鋭部隊の人数だけでは数が足りな過ぎた。そこでイフリート神殿に基地を設営し、魔導エンジンと転移魔法陣によって魔人国の兵士を大量流入させようと考えたのだ。


 また兵隊を各地に駐留させて、モエニタ王都以外の地域を支配しようとも画策している。その為に俺達は周辺の地理を全て調べ尽くした。モエニタ王都の南と西に国土が続いており、各地からの商人が自由に王都へ出入りをしている状態だった。それによって魔道具の普及も行われており、俺達はそれを全て断つ方向で進める事にしたのだ。


 そして俺が地図を指さし皆に言う。


「兵士が来たらこことここに拠点を置く。街道を封鎖し商人の出入りを止め、物資の搬入をさせない。あとはセイラとトライトンから聞いた情報だが、モエニタ王都は一本の川に生活の水源を頼っている。その上流を堰き止めて、水をこちらがおさえる」


「「「「「「「は!」」」」」」


「それと並行に、後方部隊としてエミルと魔人の混成部隊が、前線基地から魔導エンジンを搬入し、バルムス達を連れてきてほしい。護衛はカララとマキーナ」


「了解だ」

「「は!」」


「グレースはゴーレムを出してもらう。川の流れを変えるための土木作業を頼みたい」


「了解です」


「トライトンとセイラはそれを手伝ってほしい」


「「わかりました」」


「オージェ、ギレザム、は作業している奴らの護衛を」


「あいよ」

「は!」


「ガザム、ティラ、マリアは周辺の哨戒行動だ。ルフラはマリアの護衛についてくれ」


「「「「は!」」」」


「シャーミリアとファントムとアナミスは俺と、各地を周り市民をコントロールする」


「「は!」」

《ハイ》


「ラーズは、モーリス先生とミーシャ、オンジさんを神殿で護衛しろ」


「は!」


 するとブリッツが手を挙げた。


「あのー、僕は何をすればいい?」


「モーリス先生の助手を頼めるだろうか? ミーシャだけでは人手不足だ」


「わかった。先生、よろしくお願いします」


「まあ、あまりやる事はないようじゃ。魔導エンジンが来るまでは魔法陣を書き記す場所に下書きをするくらいじゃよ」


「見たいです!」


「ええよ」


 決まりだ。


「総員作戦開始」


 エミルがイフリートに指示を出し皆が外に出る。振り向いて出口を見ると、既に溶岩になっておりそこに神殿があるとは分からない。俺達はモエニタ王都とは反対側に降り、そこで各自に兵器を召喚して渡した。エミルとケイナが乗るヘリが飛んでいくのを確認し、俺達は各地へと散らばっていくのだった。


 まず俺の隊は西方に向かう事にした。海産物や果物は南方から入り込んでいるらしいのだが、野菜や動物系の肉、魔獣の肉などは西方から入って来ているらしいのだ。生活必需品的なものが西側から来ると分かった俺は、先に西方の村々を攻略する事に決める。

 

「かなり遠回りになるけどな」


「問題ございませんわ!」


 車体の上にある、銃座に座ったシャーミリアがなんかハイテンションだ。また俺と作戦行動をするにあたって、陸路を行くことが楽しいらしい。アナミスが運転しながら若干呆れたような表情をし、ファントムは相変わらずどこか遠くを見ている。


 俺達は陸路を行くために米軍のハンヴィー(高機動多用途装輪車両)で走っている。荒野を走るため、黄土色の車体にした。ファントムが後部座席にどっかりと腰を下ろしていて、俺が助手席に座り、アナミスが運転してくれている。


「ご主人様! 魔獣を取ってまいりましょう!」


 なるほど。久しぶりに陸路を行くので、魔獣を俺にふるまいたいらしい。


「いいけど、あんまりデカいのはいらないぞ。食いきれる分だけにしてくれ」


「は!」


 シャーミリアが天井の銃座から消えたので、俺が天井に登ってあたりを監視した。ガザムとティラとルフラ&マリアが哨戒行動を行っているので、ここに敵が来るとすれば先に彼らから連絡が来るだろう。だが念のため監視は怠らないようにする。


 そしてシャーミリアはすぐに戻ってきた。


 シャーミリアは、そこそこデカい鹿タイプの魔獣をぶら下げている。角が虹色に光っており、顔が少し人間みたいにも見えるやつだ。


「さあ! ご主人様! 昼食にいたしましょう!」


「んじゃどこか日陰を探そう。ここは暑くてかなわん」


「それであれば、これを捕らえた森が二時の方向、五キロにございます」


「アナミス。聞こえた?」


「向いますわ」


 ハンヴィーは右方向に逸れて進む。しばらく行くと、シャーミリアが言った通り森が見えてきた。森を少し入ると、木が密集しているのでハンヴィーはこれ以上行けそうにない。俺達はそこで降りる。


「では! 薪を集めてまいります」


 そう言ってシャーミリアは消え、あっという間に木が積み上がっていく。シャーミリアはやることなす事がすべて早く、あっという間に鹿タイプの魔獣をもさばいてしまう。


「ささ! ご主人様! お座りください」


「ああ」


「手伝うわ」


「あら。アナミス、結構よ。私奴が全てやる」


「しかし」


 だが俺はアナミスに言う。


「アナミス。シャーミリアは一人でやりたいんだよ。たぶん」


「あ、ああ。はい、それではご一緒に待たせていただきます」


 ファントムは立ってどこかを見たままで動かない。俺達の前の焚火には、串にささった肉が立ち並んでいく。


「なんかシャーミリアに焼いてもらう肉は久しぶりかも」


 俺が言うとシャーミリアはにんまりとした。


「良い感じに焼きます!」


「ああ」


 シャーミリアは最初に焼けた串を俺に渡して来た。とても良い香りがするが、シャーミリアはこのためにミーシャから香辛料を大量に貰って来たらしい。


「はむ。うっま」


「ささ! もっとあります」


「これ美味いぞ。ビッグホーンディアよりずっと肉が柔らかい、なんていう魔獣なんだか」


「本当ですか! それは何よりでございます」


 シャーミリアがウッキウキに肉奉行を続けてくれているので、俺は黙って食い続けた。だが食っているうちに、少しずつ体が火照って来る。


「なんか体が熱いんだが?」


「えっ! 毒の類は含まれておりませんでしたが…」


「いや。具合が悪いとかじゃなくて、なんつーか力が湧いてくるような?」


 それを聞いたアナミスが一つ肉を取り、それを口にいれて咀嚼する。


「これは…」


「なに?」


「精力効果があります」


「うっそ、滋養強壮に良いってこと?」


「そのとおりです」


 気がつけば俺はかなりの量の肉をくらっていた。気が付かなかったが、自分が食べれる限界を超えていたかもしれない。


「なんか、体を動かしたいんだけど。力が有り余ってる」


「お食事はいかがなさいましょう?」


「それよりも体を動かしたい。シャーミリア、組手の訓練をするぞ」


「は、はい!」


 久しぶりだった。とにかく食ったばかりで腹がいっぱいなはずなのに、俺の体は物凄く活性化している。ひょっとするとめちゃくちゃ特殊な魔獣だったのかもしれん。ツノも七色に輝いていたし、そんな魔獣を食って良かったのだろうか?


「行くぞ!」


 俺は一気にシャーミリアへ距離を詰めて、襟首をつかもうと手を伸ばした。だがあっさりと交わされ、シャーミリアは俺の視界から消えた。次の瞬間、俺の後頭部がチリチリとする。


「シュッ」


 俺が腰を曲げてかがむと、俺の頭上をシャーミリアの手刀が通り抜けた。どうやら意識を刈り取ろうと思っていたらしい。そのまま頭上の腕を掴んで一本背負いで投げ飛ばす。シャーミリアはそのまま飛び、木に垂直に立って俺を見ていた。


「ご主人様。銃格闘をお試しください」


「了解」


 俺は愛用のコルトガバメントを二丁召喚した。そのままシャーミリアに肉薄し、至近距離から撃ち放つ。だが既にシャーミリアはそこにはおらず、俺の頭上に逆さまに飛び上がっていた。再び首の後ろを狙って手刀が降って来たので、俺はかがんで銃を上に向けて撃った。しかし手ごたえはない。


「なっかなか、つかまんないな」


「ですが反射速度は衰えてはいないようです」


「でもいいぞ。鎧の魔導兵を倒す訓練になる。続けてくれ」


「は!」


 それから俺達はしばらく組手を行う。俺は拳銃縛りでやっているが、やはりこれでは到底シャーミリアを捕らえる事は出来なそうだ。そこで俺はルゼミア母さんとの組手の事を思い出す。


 シャーミリアが完全に拳銃縛りだと思っているところで、突然レミントンM870Pショットガンを召喚して至近距離から撃った。突然の武器変更で、シャーミリアは一部を被弾し一瞬怯む。俺はショットガンを構える手を放し、すぐさまウージ―サブマシンガンを召喚して撃った。


 しかし武器交換を一度見られた以上は、シャーミリアは察知してそれを避けてしまう。


 こりゃダメだ。


「まいった!」


 俺が言った。


「素晴らしいご判断でございました!」


 俺に撃たれた数発の散弾銃を体内から吐き出しながら、シュウシュウと音をさせてシャーミリアが拍手をする。


「ズルをした」


「戦闘にズルも何もございますでしょうか!? これからも組手でこの方式を鍛錬されれば、かなりの強さが手に入るかと愚考します」


「この方式? 思い付きだったけど?」


「ご主人様の武器召喚は無限。それを全て駆使すれば、白兵戦において私奴もギレザムもファントムも敵ではなくなるかと」


「いやいやいや。ギレザムはチャレンジしてみたいけど、ファントムと殴り合いたいとは思わないよ。絶対に死ぬじゃん」


「ファントムがご主人様に危害を加える事は、未来永劫ございません。魔力の回廊が繋がっておりますので、ファントムの攻撃はご主人様にあたる事は無いのです」


「そう言えばそうだったっけ」


「はい」


 だが今の組手は良かった。俺は何かがつかめそうな手ごたえを感じていた。


「腹もこなれたし、出発するぞ」


「「は!」」

《ハイ》


 俺達は再びハンヴィーに乗り込んで、西の村へと向かい出発するのだった。

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