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第87話 上陸作戦開始

港にはたくさんのカンテラの光が動いていた。


その後ろでは火が焚かれており、一帯を明るく照らしている。


港に接岸しロープを投げると、下で待つ人がロープを係船柱に括り付けてくれた。梯子を降ろすと、こちらから降りる前に数人があがってくる。


こちらは俺とマリア、シャーミリアに、マキーナ、ルフラ、ジーグ、スラガの7人が出迎えを受ける予定だ。マリアはどう見てもメイド、シャーミリア、マキーナ、ルフラにもメイドの姿をさせた。ライカンは普段は人間にしか見えないため、ジーグはモーニングを着せて執事に扮している。スラガはスプリガンだが普段はただの小男で、背広を着せているため使用人に見える。全員どこをどう見ても人間だ。


「ようこそグラドラムへ!アルガルド様」


聞いた声だと思ったら元グラドラム王のポールだった。薄暗い甲板の上ではカンテラの光でそれぞれの顔が浮き上がっている。ポールの後ろには5人ほどの人がついていた。元宰相のデイブ、背広を着た紳士風の男、教会風のマントを来た男、そして皮の鎧を来た衛兵二人だった。俺の方からあいさつをする。


「こんばんはポールさん、今宵の月は明るくていい日になりました。」


「左様でございますな。とてもいい夜です。」


すると元宰相のデイブも声をかけてくる。


「アルガルド様お元気なようで何よりでございます。」


「デイブさんもありがとう。よろしくお願いします。」


「はいこちらこそよろしくお願いいたします。」


ポールやデイブと軽く挨拶をかわす。3年前に別れた時とほとんど変っていないが、ちょっと草臥くたびれているのかな・・後ろに控えているやつらが、草臥れている原因だろうけど。


「アルガルド様、こちらがバウム・シュタイン様、バルギウス帝国の特使様です。」


「よろしくお見知りおきを、バウム・シュタインと申します。」


「アルガルドです。こちらこそよろしくお願い申し上げます。」


バウム・シュタインという男、ただの特使ではない・・背広の下にはちきれんほどの筋肉が隠れているようだ。いやらしい顔つきで無精ひげがむさい。マリア、シャーミリア、マキーナ、ルフラをまるで品定めするように睨め上げる。うちの女性陣はどこ吹く風だが。


「そしてこちらが、ラーテウス・ノラン様です。ファートリア神聖国からの特使様です。」


「ラーテウス・ノランと申します。よろしくお願い申し上げます。」


「アルガルドです。よろしくお願い申し上げます。」


ラーテウス・ノランという男は神経質そうな目で俺をじっと見つめた。何か確認するような目つきだ・・いぶかしげな顔をする。その俺を見る目つきの方にうちの女性陣が全員にらみつける。


「コホン!」


俺が咳ばらいをすると、女性陣が何事もなかったように無表情になる。


やっぱりそうか。バルギウスとファートリアからの使者がいるんだな。それはポールとデイブのこんな顔もうなずけるな。


《みんなちらちらとファントム執事を見ているな・・やっぱりこんな執事いないよなぁ・・まさか!これが原因?》


「早速ですが貿易の品を確認させていただきます。」


「ええ、こちらへ。」


船内に入り貨物室へ案内する。そこにはビッグホーンディアの毛皮や角、干し肉、グラウス氷床から切り出した氷で冷やした肉の燻製、ディアからとれる小さい魔石、石炭などが積まれている。


「これは良い品ばかりを。良い値で買取させていただきますよ。」


「よろしく頼みます。」


「明日の朝から領民に荷下ろしをさせます。」


「お手数をおかけいたします。その時は私も立会いします。」


ポールとひととおり形式上の挨拶をとりおこない、俺達は船を降りる事となった。


俺の配下のメンバーの他にも、10人ばかり船を動かすための魔人が乗っているが、彼らは明日の荷下ろしと輸入品の積み荷を積んだらグラウスに帰る予定だ。


ギレザム、ガザム、ゴーグ、ダラムバ、スラガ、マズル、ティラ、タピ、ルピア、アナミス、ファントム の11人はいったん船内の護衛の任につけるようにする。全員には無線機を持たせてお互い連絡が出来るようにした。何かあればすぐ全員下船し船を出向させ俺達と合流する、さらに夜の間にギレザム、ティラ、タピ、ルピア、アナミスは先にグラドラムの街中に潜伏する手はずになっている。


「それでは船を降りられる人たちは、7名ということでよろしかったでしょうか?」


デイブが聞いてくる。


「ええ、よろしくおねがいします。」


船を降りるメンバーは俺とマリア、シャーミリア、マキーナ、ルフラ、スラガ、ジーグだった。この魔人達は完璧に人間に見える。ジーグはライカンだが普段は人間の見た目だ、ルフラはスライムだが人間の形をしている。この6名が俺の御付きとなる。



「長旅でお疲れでしょう。是非とも新たに作られた迎賓館でおくつろぎください。」


「お気遣いありがとうございます。」


貨物室を出るため、全員が通路にもどるときだった。


スッ


執事のデイブが俺の横によると、俺のポケットに何かをいれた。紙のようなものだが・・なんだろう?とりあえず目を通す必要があるな・・どうするか・・


「あ、それでは下船して船の前で待っていてくれますか?」


「わかりました。それではお待ちしております。」


ポールが俺に答える。ポールを含めグラドラム、ファートリア、バルギウスの人間を先に船から降ろした。俺はポケットから先ほどデイブから渡された紙を広げる。




___________________________


ラウル様へ


ようこそおいでいただきました。

本来はもっと友好的なお出迎えになるはずが、奴らのおかげでこのような形式ばった御挨拶になり申し訳ございません。奴らの強大な軍事力に対し抗うすべのない我々が、軍門に下るしかなかった無能をお許しいただきたく思います。


魔人国へのラウル様宛て書簡も形式的な物ばかりだったのは、すべて奴らに検閲されているが故のことでした。


あなた様は私たちを救った英雄です。


もしラウル様が決起をなさるときは、私共もお供させていただきたく思います。ことを起こすのであればぜひ我々にもお声がけいただきたく思います。


またこの3年間で、我がグラドラムにもファートリア神聖国とバルギウス帝国の間者が、たくさん潜入しております。3年前の1000人の兵消失事件の真相を探るものも多数訪れました。ラウル様が流布された魔人の仕業ではないかという噂のおかげで、平穏に暮らす事が出来るようになりましたが、奴らは報復する事を諦めてはおりません。魔人など大したことは無いという論者もおり、ファートリアバルギウス連合から魔人国へ攻めようという声も上がっております。


ラーテウス・ノランとバウム・シュタインというものがおりますが、彼らは大勢の兵を引き連れてきております。さらにグラドラム首都内だけでなく広範囲に分布しており、失踪対策として連絡を密にしておるようです。我々もすべてを把握する事は出来かねております。


やつらは邪な考えを持ちラウル様達を出迎えていると考えられます。


十分お気を付けくださるようお願いいたします。


くれぐれもラウル様単独で動くことの無きようご注意ください。


我が親愛なるラウル様へ


ポール


___________________________


ふむ。そうか・・それは・・


「ご主人様。好都合でございますわね。」


「ああシャーミリア。まさか相手の方から俺達が動きやすい展開をしてくれているとは思わなかったよ。」


シャーミリアが好機ですね!という顔で俺に微笑む。


「ラウル様。ちょっと早めになりますが作戦行動を始めることができますね。」


「そうだな。マリアは人間だ、十分注意して動いてくれ」


「ふふ、3年前とは違いますよ。」


マリアが・・腕が鳴る!という顔で俺に言って来る。


他のメンバーもやる気満々の顔で俺に目を向けてくる。



「よし、初手の予定を変更する。ルフラ俺になれるか?」


「もちろんでございます。」



スライムのルフラがもぞもぞと形を変えていく。あっという間に服装も含めて俺になった。


「このように。」


「ああ、出来れば声も。」


「失礼いたしました。」


「よしそれでいい。これをつけろ。」


俺は盗聴用マイクをルフラに取り付ける。そして耳にイヤフォンを取り付けた。


「俺の声が聞こえるか?」


「はい。」


「よし!唯一弱い人間のマリアが守るべき対象だ、わかったか?」


「「「「「はい」」」」」


「わたしは・・」


マリアが言おうとするが、シャーミリアが遮る。


「あなたはラウル様の大切な人。私たちにはあなたを守る義務があるのよ。」


「はい・・」


「よし、それじゃみんな行ってくれ!」


「「「「「はい」」」」」


俺はその場に残り全員が部屋を出ていく。俺に成りすましたルフラが先頭で、マリア以下全員がそれについていく。船の窓から様子をうかがっていると、全員がはしごを降りてポールとその一団についていく。港にはさらに大勢の兵士がいたようだった。


スッと目をつぶりシャーミリアに同調する。


「ア・ああっ・」


シャーミリアが変な声をあげて、みんなが不思議そうに見つめるのが見えた。同調に成功した。その意識をそのままに、船の通路を歩いて行く。


「おまたせ。」


「ラウル様!早速行動開始ですか?」


ギレザムが俺に声をかけてきた。


「ああ、どうやら相手はせっかちなようだ。おかげでこちらの準備はかなり短縮されそうだぞ。」


「それは何よりです。」


「それじゃあ計画を実行していこうと思う。それぞれに合わせた兵器を召喚するからみんな集まってくれ。」


俺は武器データベースを開いた。


場所 陸上兵器LV4 航空兵器LV2 海上兵器LV3 宇宙兵器LV0

用途 攻撃兵器LV6 防衛兵器LV3

規模 大量破壊兵器LV2 通常兵器LV6

種類 核兵器LV0 生物兵器LV0 化学兵器LV0 光学兵器LV0 音響兵器LV2

対象 対人兵器LV7 対物兵器LV5

効果 非致死性兵器LV2

施設 基地設備LV3

日常 備品LV4

連結 LV2


データベースの兵器レベルは3年で少し向上した。どうやら体験したことを元にレベルがあがるらしいことを発見した。


馬車に乗った事で兵員装甲車が召喚できるようになったり、グリフォンに乗って飛ぶ事を体験し航空兵器が召喚できるようになり、ペンタと海を潜れば潜るほど海上兵器の呼び出せるものがバージョンアップした。また魔人達と剣や槍、弓などで訓練する事によって通常兵器や対人兵器のレベルも上がってきたのだった。


俺も3年前とは格段に違う、データベースのバージョンもいってみればVer3といったところだ。新しくは連結という項目が出来ている。これにより俺の武器を使うときにある変化が起きた、ただし・・俺の魔力を大量に消費する為、使いどころに注意する項目だった。


連結LV1は俺が武器を使用するときに、俺の魔人側の魔力に武器を連結できるのだ。ハンドガンでも12.7㎜弾くらいの威力になる。連結LV2にすると俺の魔人側の魔力が、みんなが持つ武器に流れ込み威力があがるのだ。ただし魔力が枯渇すると稼働不能になるため、使いどころはほとんどないと言っていい。


「よし!それじゃあ火種を撒きにいこうか。」


「「「「「はい!!」」」」」


俺は魔人達に武器を召喚して渡していくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 3章の始めか…2章の終わりあたりで、バルギウス帝国(…ファートリア神聖国)と、が周辺の国々を押さえた…というような話があったと思いますが…認識はあっているでしょうか?(グラドラムの状況もうろ…
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