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第861話 本領発揮

 ギルド冒険者達のダンジョン攻略方法を知るために、俺達は何も手出しする事なくただその様子を見守っていた。しかし俺は石橋を叩きまくって渡るような、そのやり方にイライラし始める。ダンジョン攻略なんだからもっと楽しんでワクワクしながら、ドカドカ討伐していった方が面白いと思う。


 俺はシャーミリアに念話で愚痴っていた。


《何だこのスピード感。ダンジョン攻略がぜんっせん面白くないんだけど》


《スケルトンや屍人を、前に進ませたのがいけなかったのでしょうか?》


《いや、それならそれでガンガン進めばいいのにな。やれ普段と違うだのダンジョンに異変が起きてるのかもしれないだのと、いちいち考え込むのはやめてほしい》


 とはいえ確かにシャーミリアの言う通りかもしれなかった。ゾンビやスケルトンなんて相手してもつまらないと思った俺が、シャーミリアに頼んで使役させて潜らせたのが失敗だろう。だって簡単に使役できるようなモンスターを狩ったって、自作自演してるみたいだし。他の冒険者達もめんどくさくないと思ったのだ。まさかそれが裏目に出て、危険かもしれない! なんて思うと思わなかった。


《いかがなさいます?》


《屍人やスケルトンはどうなってる?》


《下層の魔物を順調に狩っております》


《むしろそれを止めよう、屍人たちの使役を解いてくれ》


《かしこまりました》


 俺達が念話を終える頃ようやく冒険者達の会議も終わり、どうやら冒険者パーティーアークライトとゼルニクスの安否を確認するという目的に切り替えたようだ。『救出』から『安否確認』になったのは、救出組が全滅しない為の策らしい。帰りの事を考えながらも、極力消耗しないよう大きな戦闘をせずに行くというのだ。そして生存が確認出来たら、一旦戻って他の地域からより強い冒険者の応援を要請するらしい。


《いやいや、生きてるのが確認出来たら救うでしょ。安否確認して引き上げるってどういう事?》


《まったく意味不明でございます》


 まあギルマスが言うにはダンジョン内でも安全な地帯があり、そこに避難している可能性があるだろうという判断だった。死んでいるなら応援を要請する事はないが、生きているならばゼルニクスほどの冒険者なら安全地帯を見つけて潜んでいると考えたらしい。


 とりあえず進むことに決まったので、そのまま階層下に降りていく。だがシャーミリアが使役したゾンビやスケルトンが結構魔物を討伐しているので、魔物の数は少なかった。


 十三階層に到着した時、ギルドマスターがまた全員を集める。


「やはりおかしい」


 また始まった。俺は話し合いに入る前にギルドマスターに直接聞いた。


「何を懸念してるの?」


「潮が引くように静かになった後、大量に魔物が湧く事があるのですよ。スタンピードと言うのですがね、それが起きる兆候に似ているのです」


 なるほど。やっぱ俺が勝手にやったことが仇になったんだな。


「えっと、スタンピードが起きても俺が何とかするからすぐに進もう」


 すると銀等級冒険者が俺に言う。


「おいおい! これだから素人はよ! 新人冒険者のほとんどがそうやって死んでくんだぜ。自分の力も分からないで過信してよ、ここまでこれたのは銀等級が集まったおかげなんだぞ! スタンピードの怖さを知らねえんだろ?」


 いやいや。デモンのスタンピードなら経験したことあるけどな。


「それにしても慎重すぎるだろ」


「これくらい慎重さが無いと、冒険者はすぐに死ぬんだよ!」


「え、そうなの?」


「あたりめえだろ!」


 たった今分かった。俺は魔人たちと行動して来たからこそ思い至らなかった。彼らはすぐに死ぬんだ、だからこんなに慎重なんだ。俺の感覚がマヒしていたというより、チートなシャーミリアとファントムを連れているからそう思わないだけだ。まあ、俺の武器召喚もチートだし。


 しかし俺には、そんなに悠長にしている時間はない。

 

 俺が堂々と言った。


「俺達が先行する。ついて来るも良し応援を呼びに行くも良し、だが俺達四人でゼルニクス達を救う事が出来たらそこまで仕留めた魔物の素材は全部俺達が貰う」


「今回はダンジョン攻略ではございませんので、素材など二の次です」


 ギルドマスターが言うので、俺は他の冒険者にも問う。


「他の皆はどうだ? 俺達が先行して救出したらそれでいいか?」


「馬鹿か? 四人だけで二十六階層以下に潜れるわけないだろ」


「やって見なければ分かんないよ」


「どんだけ夢見てんだよチビ」


 ビキビキビキビキ! 地下に進む前にシャーミリアに皆殺しされる可能性の方が高い。俺はシャーミリアを制して言う。


「まあいい。あんたらも俺達が邪魔なんだろ? ここで無茶して死んでもらった方がありがたいんじゃねーの?」


「馬鹿野郎。俺達は新人冒険者に死んでもらいたいなんて思ってねえし、それに巻き込まれて俺達が死ぬのもごめんだ」


「だから死なないって」


 そもそもシャーミリアとファントムなんか生きてないし。二人とも不死身だから死ぬとかありえないし。


「か、勝手にしろ!」


「じゃ! そう言う事で、行くぞ!」


 俺がそう言って奥に向かって進み始めると、シャーミリアとファントムもついて来る。ミーシャはファントムの肩の上に乗っているので必然的に一緒に行く事になる。


 しかしギルドマスターは、俺達だけを先に潜らせることはしなかった。


「仕方がない。ラウル様を信じて皆で潜ろう、いざとなったら脱出するだけの体力は残しておけ!」


 冒険者達は渋々それに従った。そして階層を降りて十五階層に着いた時、魔物とゾンビの混合チームが待ち構えていた。シャーミリアが使役を解いているので、魔物とゾンビは共通の敵を見つけてこっちにやって来る。


「うお! だから言わんこっちゃねえ。屍人がこんなところまで下りている」

「まったくだ。魔物と混合なんて厄介だぜ! 打撃と魔法が利かないのがごっちゃになってる!」

「一旦上階にあがるべきだ!」


 銀等級冒険者達がざわついて、ギルドマスターが指示を出そうとしている。また会議とかされたら面倒なので、俺は12.7㎜M2重機関銃を召喚してそれを床に置いた。冒険者達は一応手に剣や魔法の杖を構えているが、俺はそれを無視して魔物の群れめがけ引鉄を轢く。


 ズドドドドドドドドドドド! ドミノ倒しみたいに魔物が死んでいく。


「はへ?」「ま、ほう?」「これは、どうなって…」


 魔物が沈黙し、ファントムが12.7㎜M2重機関銃を手に持って進む。シャーミリアにはM240中機関銃とバックパックを与え、俺はバレットM82を携帯し、ミーシャにはAK74マシンガンを持たせる。まあ…いつもの標準装備である。


 俺の魔力が上がっているため、更に破壊力が増したその武器に魔物はなすすべがなかった。そして俺は背筋にぞくぞくするものを感じていた。化物をガンガンぶっ殺している爽快感。


 ああ…これこれ。このエイリ〇ンと戦う兵士の感覚がたまんねえ。


 あっという間にバラバラになる魔物を見て、冒険者達は唖然としていた。だが俺達はそれにかまう事無く、どんどん階層を下りていく。しらみつぶしに階層を攻略することなく、目の前に現れた魔物を狩る作戦だ。石橋を渡るも渡らないも魔物は蹴散らして行こう戦法。


「こんな…こんな戦いあんのかよ」「は、はは。寒気がすんぜ」「一方的じゃねえかよ」「近づく事も出来ねえでいるぜ」


 もちろん冒険者達は何もすることがない。


「とにかくどんどん潜るから、ついて来れたらついて来ればいい」


 もう冒険者達は何も言わなかった。魔物の種類もだんだん変わってきて、ゾンビやスケルトンなどはいなくなり魔法をつかう骨が出て来る。相手が魔法を使おうと杖を掲げるので、俺は発動前にそいつに狙いを定める。するとそいつは自分の周りに光るバリアを張った。


 冒険者が叫ぶ。


「リッチには魔法は聞かねえぞ! 打撃か浄化魔法しかないんだ!」


 俺は関係なくバレットM82の引き金を引いた。


 バリン! ズドン! とリッチとやらは粉々になる。


「嘘だろ? リッチの結界が意味をなしてねえ」


 その階層にはリッチと騎士のようなスケルトンもいる。騎士のスケルトンも次々に仕留めていくが、俺的には自作自演のようで気恥ずかしい。だが俺達の力を示すにはやるしかない。


《だいたいこんな感じでいいだろ。あとの区画にいる奴らはリッチを使役して適当に排除してくれ》


《かしこまりました》


 そして俺達が次の階層に降りると、そこにはモヤのような影がゆらゆらと浮かんでいた。


「レイスだ! 群れを成してるぞ!」「精神防護の身体強化を!」「急げ!」「下手をしたら即死するぞ!」


 レイス? 幽霊か? 即死とかおっかないんだけど。


《シャーミリア。銃が利かない奴が出たけど、どうしよう?》


《お任せください。そのままお進み頂いて構いません》


《そうなんだ》


 俺達は何もしないでそのまま進み始めた。


「なっ!」「自殺行為だ!」「精神が持っていかれるぞ!」「だれか! あいつらを止めろ!」


 だがそれを聞かずに、シャーミリアを先頭にして俺達は進んでいく。シャーミリアが近くに寄っただけでレイスと言う奴は消えて行った。屍人や霊魂はすべてシャーミリアの範疇である。シャーミリアはただ自分の気で消しているのだ。


 そういえばバルギウス戦でもそんな事あったな…


「レイスが…消えて行く…」「どういうことだ?」「浄化魔法を使えるのか?」


 浄化魔法は使えない。言って見ればシャーミリアは幽霊や屍人の王、彼女に向かって来る霊魂などいないってだけだ。


 さらに階層を下っていくと、次に出てきたのは全身がテカテカになっている骨だった。それが三十体ほどゆっくりとこっちに向かってきていた。


 俺が冒険者に聞く。


「ありゃなんだい?」


「わからねえ。こんな深部まで潜った事はないからな」


 気がつけば二十五階層、どうやらここまで潜った事のある冒険者はギルドマスターだけらしい。


「ギルマスは知ってる?」


「スケルトンスライムです」


「なにそれ?」


「魔法の利かないスケルトンに、打撃の利かないスライムがまとわりついています。討伐するには高位の魔法使いと剣士が居なければ難しい」


 そうなんだ。とりあえず俺はバレットM82ライフルを撃ち込んでみた。


 ズドン! ボニョッ 銃弾がスライムにからめとられスケルトンに届かない。するとミーシャがファントムの肩の上から俺に言う。


「私が」


「ん、やってみて」


 ミーシャがRPGロケットランチャーを構えて、スライムスケルトンに打ち込んだ。


 バゴン! シャーッ! ピキピキピキピキ! 


 ロケットランチャーが炸裂したあたりから周囲、五十メートルくらいが凍り付いてしまう。スライムスケルトンもカチコチに固まってしまった。ミーシャが言っていたデイジー&バルムス製の弾頭だ。


 するとギルマスが言う。


「こ、高位の氷魔法…。マジックキャスターだったのですね!」


 違うと思う。ミーシャはマジックキャスターじゃなく、マッドサイエンティストだと思う。


 それを見たミーシャが言う。


「ラウル様、撃って下さい」


 俺とシャーミリアとファントムが撃つと、凍ったスライムスケルトンは次々に崩れ落ちていった。


「次が問題の二十六階層ね」


「はい!」


 そして銀等級冒険者達の俺達を見る目が変わっていた。


「すまなかった!」「あんたら凄いんだな!」「こんなん白金以上だぜ!」「口だけじゃなかったんだな」


 冒険者は力のあるものを純粋に評価するらしい。やはり実力の世界で生きているだけあって、自分より実力のある者を純粋に尊敬しているようだ。二十六階層に降りて俺はギルドマスターに言う。


「えっと、落とし穴を探そう」


「へ? そのまま一階層ごと降りていかないので?」


「いや。まずは穴を見つけたい」


「わかりました」


 二十六階層で俺達は、アークライト達がハマったという落とし穴を探し始めるのだった。すると再びスライムスケルトンがニ十体ほど出て来る。ミーシャが撃とうとしたので俺はそれを制止した。


「それはもったいない」


 すでに俺は対処方法を見出していた。M202A1四連ロケットランチャーを召喚し、サーモバリック弾を撃ちこんだ。着弾すると派手に爆発し、スケルトンにこびりついていたスライムを飛び散らせる。更に半分のスケルトンは半壊した。


「シャーミリア。スライムが取れた奴を撃て」


「は!」


 スライムスケルトンはサーモバリック弾と通常弾頭で、次々に粉砕されていく。そのあまりにもの爆発力の凄さに冒険者達は後ずさった。あらかた片付いたので、俺達は更に先に進むのだった。

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