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第844話 決意表明

 デメールの俺に対する質問で女子連中に沈黙が流れたが、その沈黙を突如破ったのは聖女リシェルだった。


「デメール様。そのようなデリケートな話は、個人間でするものです」


 流石にお堅い聖女様。飲みの席とは言え、そんなエロい話題は良くないよね!


 だがイオナが言う。


「あら。そんなことはありませんわ」


 おい! かあちゃん! なんで息子のそんな話を聞きたいんだよ!


 そこに、もう一人味方が現れた。


「お母さん。ラウル君が困っておりますよ」


 エミルだった。だがそのエミルに言い寄る人がいる。


「あら、エミル。いいじゃない」


 ケイナがエミルの腕を絡めとった。すると今度はグレースが援護してくれた。


「ラウルさんは、そりゃいろいろですよ」


 フォローになってない。


 モーリス先生が大笑いする。


「ふぉっ! ふぉっ! ふぉっ! 面白くなって来たわい」


 いや。面白くないし。


 俺が正直に、『誠に未熟ながら未だに童貞であります!』と言おうとした時だった。バッとシャーミリアが部屋に入って来た。


「ご主人様! どうなさいました! 心拍数と体温の急上昇が感じられました。それに尋常ではない発汗、もしかすると何かを感知されたとか?」


 それはそれで恥ずかしい。


「い、いや。そういう訳じゃないんだけどね」


 シャーミリアがあたふたしている。それを見たデメールが言った。


「うち、そんな変な事を聞いたか?」


 問われているのはアウロラだった。だけど彼女も中身は女子校生で興味のあるお年頃。


「あ。ま、まあ…」


 いたたまれなくなって、俺がガバッと立ち上がって言う。


「すみません。夜風にあたって冷やしてきます」


「あ、ああ」


 デメールが申し訳なさそうにしている。だが別にデメールが悪いわけではない。そうだ、俺は戦争が忙しくてそんなことを考える暇がなかった。と言うか考えなければいけないのだろうか?


「では」


 そう言ってシャーミリアが俺を連れ出した。俺が広いベランダに出ると大きな月が浮かんでいる。空は澄渡っているが雲もちらほらと浮かんでいるようだ。


「ご主人様。だいぶ収まったようでございますね」


「ごめんな。ちょっと豊穣神の質問に狼狽えちまった」


「ご主人様! 私奴に謝罪など! いけません!」


「あ、そうだな」


 そして俺はシャーミリアに聞いた。


「子種を授けなきゃいけないとか言われてな。だけど、俺がカトリーヌと交わったら彼女は死ぬかもしれん。それはどうしても必要な事なのだろうか?」


「恐れ入ります。私はご主人様の御心に従うまで、もしご主人様が違うと思われれば、止めてもよろしいのでは無いかと愚考します」


 シャーミリアならそう答えるよな。


「難しいよ」


「私奴が、ご主人様に降りかかる全てを退けられればいいのですが」


「随分助けられているさ。シャーミリアのおかげで生き延びてこれたんだ。ありがとうな」


「あ、ああ…はぁはぁ」


 やべ! 不用意に褒めちゃった。


 シャーミリアがぺたんと座り込んでしまう。なんか俺が言葉責めしてるみたいで困る。するとベランダにカララとアナミス、ルフラ、ルピア、ティラ、マキーナが出て来た。シャーミリアが慌てて立ち上がりしゃきっとする。そしてカララが言う。


「ラウル様、お風呂のご用意ができました」


「風呂?」


「この屋敷には大浴場が備え付けられておりましたので」

 

 そのまま俺は女の魔人たちに連れられて、大浴場に向かう。この屋敷はとにかく豪華だった。貴族の屋敷のように上品ではないが、これでもかと言うくらい金がかけられている。俺はそのまま脱衣所に入り、服を脱ぎすてて浴室に入った。


 カラカラカラ


「すっごいな」


 なるほど凄い。タカかワシのような彫像の口から、お湯が出ている。周りが全て大理石のような材質の石で出来ており、なんと金の蛇口がついていた。湯けむりが上がっており、俺は俺がタライでお湯をすくい体のあちこちを流した。


「ふうっ」


 ちゃぷ。と足をつけると丁度いい湯加減だった。湯船もめちゃくちゃ広くて、泳げそうな雰囲気だ。俺はそのまま中央に向かって進んでいく。


「あ…」


 するとそこにはカトリーヌ、マリア、ミーシャがいた。


「えっ! あ! はれ? なんで?」


 俺は慌ててしゃがみ込み湯船に肩まで浸かった。


「デメール様が癒してやれとの事でございましたので」


 カトリーヌが嬉しそうに言う。


「そうなの?」


「はい!」


 すると、カラカラカラカラと入り口の音がした。


「えっ?」


 いきなり入り口から、シャーミリア、アナミス、カララ、ルフラ、ルピア、ティラ、マキーナが素っ裸で入って来た。俺は顔の半分までをお湯に浸かり、彼女らをただじっと見つめる。


「失礼いたします」


 シャーミリア達を見たミゼッタが言う。


「あー、来た来た! みんな勢揃いだね」


「なんで?」


 するとアナミスが代表して言った。


「デメール様がご奉仕をと」


「ご、ご奉仕!? な、なん?」


「失礼します」


 俺が戸惑っていると、あっという間に女達に取り囲まれてしまった。するとカトリーヌが俺に言う。


「ラウル様。私はルゼミア王から伴侶と決められました。ですが、ラウル様はそれに囚われ過ぎてはいまいかと思うのです」


「どゆこと?」


「ラウル様は叔母様の息子ですが、実際の所は魔人と人間の血を引く混血です。私が言うのもおかしいですが、ラウル様は人間の風習に捉われる事無く、気の赴くままご自由になさってよろしいと思います。もちろん私もラウル様の子種を授かりたいとは思っておりますが、ラウル様は既に世界の王に手が届く存在。小さな小国の貴族の娘が縛って良い存在では無いのです」


「し、しかし」


「しかしもへったくれもありません。そうですよね?」


 カトリーヌは魔人の女達に問う。だがシャーミリアが困ったように答えた。


「そ、そのような。それはルゼミア様が決めた事でございます」


 だがカトリーヌが笑いながら言った。


「シャーミリア。あなたもその一人だと私は思いますけど」


「私奴が? 滅相もございません。私奴がご主人様となど恐れ多い」


「えっ? そんな事無いわよね? ルフラ」


「そうですね。カトリーヌの言う通りだと思います」


 ルフラはカトリーヌとの接点が多いから影響を受けているのだろう。っと思っていたら、カララも言った。


「ラウル様は、この世の全てを自由にしていい御方かと。どんなルールもあなた様を縛る事は出来ません」


「いやー。そんなことは…」


 すると今度はアナミスが言った。


「ラウル様は私達の素でもあるのです。小さな事に縛られる事のなきように。そう考えればマリアやミーシャだってその一人です」


 するとマリアとミーシャが慌てだしマリアが言った。


「い、いえ! 私は使用人の一人にございます。そんな大それたことは」


 するとルピアが言った。


「そんなことはないと思うよ、マリアだってその一人」


 今度はミーシャが慌てて言った。


「さすがに私はキッチンメイドですので」


 するとそれをティラが制した。


「ミーシャがいなければ、様々な発明は無かった。だからミーシャだってその一人」


「で、ですが」


「いーのいーの!」


 ティラがけらけら笑いながら言う。そして今度はカララが言った。


「マキーナ。あなたもシャーミリアの眷属だからって権利が無いわけじゃないわ」


「い、いえ! 私など魔人の末席に置いていただけるだけで十分」


「そんなことはない。あなたに助けられたことだってたくさんある」


「しかし…」


 女達の主張が続いた。ちょっと収拾がつかなくなってきたので俺が言う。


「ちょ、ちょっとまってくれ。わかったよ、とにかく俺は自由にやればいいんだな」


「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


「なら、こんな時に言うのもなんだけど、真の敵を片付けるまで待ってくれ」


 俺はきっぱりと言う。


 正直な所、風呂で裸の女に囲まれているこの状況では欲望が暴発しそうだった。だが、俺は前世と今世を合わせて四十八年くらい童貞だ。そんな俺がより取り見取りの状況になってしまってパニックを起こしている。正直な所、目が回りそうだが宙ぶらりんではよくない気がした。


「真の敵を片付けたら、その時は最初を選ばせてほしい。そういう事でどうだろう?」


 するとシャーミリアが言った。


「よろしいかと思われます。それがご主人様の御意志でしたら、それが一番だと思われます」


 俺の言葉で皆が納得したようだった。俺が全ての事を片付けた時に、どうすべきかを決めようと思う。するとカトリーヌも深く頷いて言った。


「良きご判断だと思われます。その時を皆で待つことにいたしましょう」


「カトリーヌはそれでいいのかい?」


「もちろんでございます。ラウル様のような大英雄を束縛できるほどの女ではございません」


「わかった。ならそう言う事で」


 俺が湯船を上がろうとすると、がしっと俺は腕を掴まれる。そして湯船に寝かされたと思ったら、みんなの手が俺に伸びて来る。


「な、ななっ」


 俺はそのままみんなに体中をマッサージされるのだった。あまりにもの気持ちのよさに、俺の脳髄はとろけてしまいそうだ。


 ‥‥‥‥‥‥


 気づけば俺は大きなベッドに寝かされていた。どうやら風呂場でそのまま寝てしまったらしい。見渡すと俺のベッドの周りで女達が扇子をもってあおいでいた。


 マリアが俺に声をかけて来た。


「お目覚めですか」


「ああ、夢を見ていたよ」


「夢でございますか?」


「この全員で幸せに暮らしている夢さ」


「それは良き夢でございます」


 俺はガバッと起き上がった。そしてみんなに告げた。


「俺は皆とずっといっしょだ。ずっと一緒に居よう」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


「最後の決戦。誰一人欠ける事無く行くぞ」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


 俺は全員を見渡して言う。そして仁王立ちになって腰に手をかけて言った。


「えいえいおー!」


「‥‥‥」


「あのー、えいえいおー! って言ったらみんなも言ってね」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


「えいえいおー!」


「「「「「「「「「「えいえいおー!」」」」」」」」」」


 そして俺は皆を見渡す。だが皆は俺の顔を見ておらず、もっとずっと下の方を見ていた。今気づいたのだが俺は素っ裸だった。

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