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第839話 冒険者ギルドを掌握

 転移罠などに警戒しつつも、都市に逃げ込んだモエニタの騎士達を掃討していく。既にオージェ達が先の都市に潜入している為、敵本隊の関心をこちらに集中させなければならない。彼らは四人で潜入しているために、大軍がむこうに差し向けられたら危険だからだ。


 そのため俺達は派手に暴れ回る。また敵の騎士達の反応からも、俺達が深くまで侵入してきているのは上にバレている。ベルゼバブを討伐したのが大きく影響しているのだろう。むしろ敵が本拠地から出て来てくれれば敵の戦力を分散できるので、それが好都合ではあるが。


 シャーミリアが言う。


「ご主人様。一般の住宅にも入り込んでいるようです」


「市民の気配はあるか?」


「はい」


 恐らく敵騎士は仕方なく逃げ込んだのだろうが、奇しくも人間の盾状態になってしまったらしい。そのとき上空で監視させているマキーナから念話が繋がる。


《ご主人様》


《どうした?》


《森林地帯からぞろぞろと騎士達が出てまいりました。北門付近に向かっております》


《なるほどね。逃げ道を塞ぐつもりかな?》


《いかがなさいましょう?》


《ミノスとラーズを向かわせる。一緒に掃討してくれ》


《は!》


《ミノス、ラーズ! 聞いたな。森林近いから出た騎士達をマキーナと掃討しろ》


《《は!》》


 敵もただ待っていたわけではないらしい。いろいろと仕掛けをしているらしいが、制空権をこちらが握っているうちは手も足も出ないだろう。


 俺が背中に触れているカララが言う。


「ラウル様。糸の先に召喚する兵器をハンドガンに変えていただけますか? 一般市民を殺さぬように始末します」


「了解」


 俺は数百に伸ばしたカララの糸先に、グロック19ハンドガンを召喚した。すると街のあちこちからパンッパンッと乾いた音が鳴り響き始める。手榴弾を爆発させると一般市民が死ぬため、騎士だけを始末するようにしてくれているらしい。


「シャーミリア! 俺の護衛をファントムに任せ、住居内に逃げた騎士達を潰して回れ。室内ではM240中機関銃は振り回し辛い、これを持っていけ」


 俺はH&K HK45Cハンドガンを二丁とマガジン四本を召喚してシャーミリアに渡す。シャーミリアが240中機関銃とバックパックを外すと、それをファントムが収納した。H&K HK45Cハンドガンは.45ACP弾を射出し、その威力であればどんなフルプレートアーマーでも貫通するだろう。


「では」


 シュッ! シャーミリアが消えるように居なくなる。


  ギレザムから念話が繋がった。


《ラウル様。上から見える敵はいなくなりました》


《よし! ギレザム、ガザム、ゴーグは都市に潜入しろ》


《《《は!》》》


 上空を見るとグリフォンから飛び降りるギレザムたちが見える。それぞれが都市のあちこちに降り立ったようだ。


《敵は一般市民がいる都市に潜伏した。ハンドガンとコンバットナイフで対応しろ》


《《《は!》》》


 そして俺達はじりじりと都市を中心に向かって移動した。時折路上に出て来る騎士は、ファントムがあっという間に撃ち殺す。俺とカララは住宅内に逃げ込んだ騎士達を丁寧に潰していた。


 しばらく進むと、カララが俺に告げる。


「ラウル様。銃を防ぐ者がおります」


「なに? デモンか? 火の一族が出たか?」


 もしそうならば、一度体制を立て直して迎え撃たなければならない。しかしカララの答えは違った。


「いえ。人間です」


「人間?」


「強い魔法を使う物と、手練れの剣士が複数いるようです」


「位置は?」


「南に五軒、西に三軒ほど行ったところにある建物です」


 俺はそれをシャーミリアに伝える。


《かしこまりました。すぐに確認をいたします》


《十分に気を付けろ》


《問題ございません》


 そして俺はギレザム、ガザム、ゴーグにもそれを伝えた。


《シャーミリアが先に向かっている。手練れの人間がいるようだ》


《《《は!》》》


 そして俺とカララは、またしらみつぶしに潜り込んだ騎士達を潰していく。俺達がじりじりと進んでいくと、シャーミリアが報告してきた。


《ご主人様。恐らくは冒険者と呼ばれる者たちです。騎士ではないと思うのですが、いかがなさいましょう》


《そこにいる人間は、個体としてはどう?》


《ファントムの素体になった者よりはだいぶ劣りますが、人間にしてはそれなりと言ったところでございましょうか》


《カーライルと比べては?》


《それは、あ奴が上でございましょう》


《そうか…。じゃあ殺さないでいてくれる? まもなく俺とギレザムたちもいくから》


《私奴一人でも問題はございませんが?》


《なるべく無傷で捕えたい。そいつらにエリクサーを使うのはもったいないからね》


《かしこまりました》


 そして俺達が路地を曲がると、ひときわ大きな建物が見えて来た。その周辺にシャーミリアとギレザムたちが待機している。


「お待たせ」


「こちらでございます」


「デカい建物だな」


 するとギレザムが俺に言う。


「恐らくは冒険者ギルドと呼ばれている建物かもしれません」


「冒険者ギルドか…北の大陸では解体されてしまったし、力のある者はだいぶ殺されたから見たことが無かったな。ユークリット王国で、復興の協力をしている人達で全部じゃないかと思うくらいだ」


 するとシャーミリアがニッコリと笑って言う。


「なるほど。補充…でございますか?」


「そういうこと。奪われた者は奪おうと思ってね」


「名案でございます」


《アナミス! 来てくれ》


 俺の側に黒いツバサのアナミスが、ばっと降り立つ。


「はい」


「冒険者を貰って行こうと思うんだ」


「それは良い考えでございます」


「じゃ、行こうか」


「はい」


 俺はギルドの扉を開く。すると中からいきなり火の玉や氷の玉が飛んで来た。カララの糸の盾でことごとく防がれる。


「こんにちは」


 中には十数名の人間がいた。更に奥には受付嬢のような人間もいる。皆が驚愕の表情でこちらを見ているのだった。


 するとシャーミリアがこめかみに血管をたてて言う。


「ご主人様が挨拶をしている! ひれ伏せよ!」


 と行っても人間達が従う訳も無く、剣と槍を構えてじりじりと包囲網を縮めて来ていた。


「カララ。動きを止めて」


「はい」


 カララの糸がいっきにギルド内に広がっていき、全員の自由を奪った。身動きが取れなくなった冒険者達が口々に叫ぶ。


「ば、化物! 来るな!」

「騎士達は何をやっているんだ!」

「くっ解除できない! これは魔法じゃないぞ!」

「どうやってもだめだ!」


「いや、すみませんね。きっと動けば俺達に攻撃を仕掛けてくるのでしょう?」


 皆が引きつった表情で俺を睨んでいる。


「が、ガキ?」

「まだ成人してないんじゃないのか?」


 すると今、俺の事をガキと言った男のもとに瞬時にシャーミリアが立つ。


「殺すな!」


「しかし」


「もったいない」


「は!」


 そして俺はそこにいる冒険者とギルドの事務員たちに言った。


「この国の上層部のやつらが、北大陸のギルドを解体し冒険者も貴族も皆殺したんだ」


「な、そのようなこと」


「あ、知らない? まあ遠い国の話だからね」


「それと、我々となんの関係がある!」


「いや。その代わりに、あんたらに北大陸の冒険者になってもらおうと思って」


「なっ!」

「なんだと!」

「そんなことするか!」

「そのような戯言を聞くと思うな!」


 そりゃそうだよな。とりあえず皆、身動きが取れないままに汗を垂らしている。するとシャーミリアが言った。


「ご主人様。上層階にも人がおります。ここにいる連中より強いかと」


「そうか」


 すると冒険者が言った。


「ははは! お前たちなどギルマスがどうにかしてくれる!」

「そうだ!」

「俺達とは強さの桁が違うからな!」


 なるほど、こいつらよりも強い奴がいるって事ね。


「カララ。ここは任せた。シャーミリアとアナミスは俺についてこい」


「は!」

「はい」


 そして俺達が階段を上がっていくと、二階の通路が見えて来る。その通路の一か所に大きな扉があり、そこから人の気配がしてくる。なるほど下の人間達より気が強いのは俺にも分かる。


「先に押さえます」


「頼む」


 そしてシャーミリアが瞬時に部屋に入って行く。俺達が入って行くと、シャーミリアがすでに男を羽交い絞めにして待っていた。


「あー、失礼します。あんたギルマス?」


「う、うぐぐっぐ」


「シャーミリア。緩めてやれ、死ぬぞ」


「は!」

 

 首を絞められていた男が口を開く。


「はあはあ。な、なんだ! お前達は!」


「北の大陸から来ました。ちょっとこの国のお偉いさんに用があってね」


「な、なぜギルドにこんなことを!」


「そうだよね。兵士でもないし関係ないんだけど、実は北大陸の冒険者はこの国のお偉いさんにほとんど殺されたんだ。だからこの国の冒険者を持って行こうと思って」


「な、そんな! 物みたいに! 冒険者は自由なもの! 言う事など聞くわけが無い!」


「本当はそうだよね。しかもあんたらに罪はない、だから殺さずに北に連れて行ってあげようと思ってね」


 すると恐怖にかられた目で俺を見ながら言った。全く話が通じない事に焦っているようだ。


「お前が…お前は噂されている悪魔だな!」


「悪魔? 違うけど」


「いや。いずれ北から悪魔が来ると言われていたんだ! こんなことをするのは悪魔くらいしか居ない!」


 やっぱ俺達はこの国じゃ悪魔だと思われているんだ。まあ、あながち違うとも言えないけど。


「悪いんだけど、あんたからやるよ」


「なっ! なにを!」


 そして俺はアナミスの背に手を付けて、アナミスがギルドマスターの顔の前に手を差し伸べる。そこから赤紫の靄が出て、ギルドマスターの目がとろんとしたところで魂核に侵入する。


 俺はまずギルドマスターの魂核を書き換えたのだった。


「よし、ギルド内の全員の書き換えをしよう」


「は!」

「はい」


 そして俺はギルドマスターに言う。


「一旦、下に行って皆を説得して見てくれないかな? もしかしたら自分の意志でついて来てくれる人がいるかもしれない」


「は! 分かりました! 誠心誠意話をしてみましょう! なあに! 殿下の為なら皆が言う事を聞くと思いますよ! さあ! 早く早く!」


 そう言ってギルドマスターは颯爽と部屋を出て言った。俺達はゆっくりと部屋を出て階段を降りていくのだった。

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