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第838話 久しぶりの対人戦

 モエニタ王都の北部にある玄関都市の騎士達が、鬼気迫る顔で俺達と対峙している。これはあらかじめ敵が仕組んだものなのか、当然の人間の反応なのかの判断はつかないが、ティブロンたちや自分らの仲間だった騎士も殺しているのだ。異常としか言いようがなかった。


 だがこれは想定内でもある。敵地に堂々と現れたのだから、敵が何かしてくるかもしれないというのは想像できた。


《ルフラ、攻撃されたらすぐにホウジョウマコを庇え》


《はい》


《シャーミリアとアナミスは臨戦態勢》


《は!》

《はい》


《ギレザム達グリフォン隊は上空からの攻撃準備》


《《《《《は!》》》》》


 恐らくエミルは、俺達の動きを見ながら最適な行動をするだろう。ピリピリと張り詰めた空気が、目の前の騎士と市壁の上の砦にいる兵士達と俺達の間に張り詰める。


 俺は装甲車の上に乗るルフラの口を借りて話す。


「何故、仲間を殺したのだ?」


 すると騎士の先頭に居るやつがそれに答える。


「北方にて悪魔が出たとの通達があった! そしてその面妖な風体と鉄の馬車が全てを物語っている! すでに騎士達は毒されておった! よって殺したまで!」


 まあまあ、正確に情報が伝わっているらしい。しかも本気で俺達が悪魔だと思っている顔だ。


 まっ。当然っちゃ当然か。騎士でもないような俺達がいきなり来て、自分らが送り込んだ騎士達が簡単に変な奴を受け入れようなんて言い出したら、心が毒されていると思われても仕方がない。実際に洗脳しちゃってたし。


 そして俺はルフラの口から言う。


「君らは騙されている。我々は悪魔などではない! 北方から来た他国の人間だ! この国ではこのようなもてなしが普通か?」


「その鉄の箱の後ろにも隠れているだろう! そいつらの風体を見れば分かる! お前達はあやかしか悪魔だ!」


 あ、後ろに隠れてる俺達がバレてんのね。じゃあいいか。


 俺達がぞろぞろと装甲輸送車の脇に立ち並んだ。それを見た騎士達がほら見ろ! みたいな顔をしている。


「なぜ我々を悪魔だと?」


「少年と世にも美しい女達の姿をした悪魔だと聞き及んでおる! どこからどう見てもそうであろう! 他国に来るのに騎士団も連れずに数人で来るものなどおらんわ!」


 …確かに。どう考えてもおかしいか。麻痺してた。


 じゃあいいか。


「で、もし俺達が悪魔だとしたら? どうするつもりだ?」


「モエニタの神であるアグニ神の名のもとに討ち取るだけだ!」


 なるほどモエニタの神はアグニ神って言うのか。


「それは火神の事か?」


「悪魔ごときが、崇高な我が国の神の名を口にするでない!」


 スタンバイすっかな。


《ティラ。ヘリにマリアを乗せて上空に、マリアはTAC50スナイパーライフルで狙撃体制に入るよう伝えろ》


《はい》


 そして俺は相手の騎士に伝える。


「魔獣を騎士が使役している方がよっぽど悪魔っぽいけどね」


「あれは…我が国の宰相様から下賜されたものだ!」


 ほう。そういうヤツがいるわけだ。


「で、俺達を討ち取るんだっけ?」


「そうだ! こいつらを殺せ!」


 騎士団長のような奴が叫んだ瞬間だった。市壁の上に待機していた弓兵や魔法使いが倒れていく。もちろん俺がマリアに指示をして狙撃させたのだ。かなりの距離があるにもかかわらず、音もたてずに眉間を撃ちぬいたのだ。


 やっば! マリアの連続、超ロングレンジスナイプショット。もはや神の領域だ。


「あ、悪魔の仕業だ! であえ! 総攻撃でたたみかけよ!」


 ギィィィィと大きな門が開いて、そこから雄叫びを上げて騎士達が出て来た。それだけじゃなく市壁の左右からも大群が押し寄せて来る。


 俺が指示を出していた通りに、ルフラはホウジョウマコを包み装甲輸送車に乗る。シャーミリアとアナミスが中機関銃を構え、ファントムにはM134ミニガンを召喚し、俺のヴァルキリーの肩には12.7㎜M2重機関銃が取り付けられた。カララが俺の護衛の為に後ろにつく。


 すると都市内部の上空に、飛竜に乗った敵の騎士が浮上し始めた。


《ギレザム達は上空を》


《《《《《は!》》》》》


 俺達は機関銃を構えて敵をひきつける。あと三十メートルに差し掛かった時、俺は指示を出した。


「撃て」


 キュィィィィィィィィィィ

 ドガガガガガガガガガガガ

 ズドドドドドドドドドドド


 俺達は一斉掃射をした。ドミノ倒しのように倒れていく騎士達、それでも俺達にとりつくべく次次と現れて前に進もうとしていた。


 ひっさびさの感覚だな。


 人間を大量抹消したことで、俺の体に痣が浮かび上がってくる。体が熱く火照り、俺達は人間の魂を欲するように大量に殺し続けた。


 ピィィィィ! と鳴き声を上げて飛竜がこちらに飛ぼうとするが、上空のギレザムたちグリフォン隊が12.7㎜M2機関銃で掃射し片っ端から落としていく。新たに市壁の上に弓兵と魔導士が現れるが、マリアの狙撃で次々と眉間に穴をあけて倒れていくのだった。


 文字通り何もできずに死んでいく人間達。一方的な蹂躙になぜか俺達の意識は高揚していく。


 だが敵もそろそろ圧倒的な兵力の差に気づき始め、都市の内部から笛が聞こえた。それを合図に騎士達が都市の中に戻って行く。だが俺達は撃つのを止めなかった。敵兵が門を閉めようとしても俺達が撃つので、門を閉める事も出来ないでいる。


「おみやげ」


 俺はAT4ロケットランチャーを両手に召喚し、門にめがけて撃った。門を過ぎて着弾したランチャーが派手に吹き飛び、巻き込まれた騎士達がバラバラになる。俺は次に120mm迫撃砲を四つ召喚し、その先を都市に向けて次々に榴弾を放り込んでいく。


 シュパン! シュパン! と次々に撃ちあがっていく榴弾。それが都市内に着弾して爆発音を上げていく。


「カララ装填を頼む」


 俺は迫撃砲の脇にどっさりと榴弾を置いた。すぐさま装甲輸送車の隣りに、M777 155mm榴弾砲を召喚してファントムを呼ぶ。


「榴弾砲を固定しろ!」


《ハイ》


 ファントムがM777 155㎜榴弾砲を地面に固定した。俺はすぐさま榴弾を装填して市壁にめがけて撃ち始める。門にあたって大きな木の門が外れて落ちた、壁にはどんどん穴が空いてボロボロになっていく。


 空に出て来る飛竜も無くなり都市は静かになった。


《カララ、止めてくれ》


《はい》


 カララと俺は榴弾を撃つのを止めた。都市からは煙が上がっており、俺達の目の前には数万の騎士達の死体が転がっていた。


「シャーミリア! 久々のファントムの養分だ。全て吸収させろ」


「かしこまりましたご主人様!」


「いそげよ」


「は!」


 早速ファントムが死体の吸収を始めた。掃除機みたいにどんどん死体が吸い込まれていく。


 俺はすぐにFPV神風ドローンを召喚する。これはドローン自体が爆弾になっており、敵陣に落下して敵を殺傷する兵器だ。俺はディスプレイ端末を装甲輸送車の後部ハッチの所に置いて、ドローンを飛ばしてやる。すると上空からの映像が映し出された。


「よし」


 それをそのまま都市の上空に飛ばしてやると、敵が壁の後ろに隠れているのがはっきりと見えた。壁の外を気にしているようで、俺達が入ってくるのを待ち構えているようだ。俺が操作するドローンの映像が、騎士達に近づいて行き画像はそこで切れる。


 音だけがズドンと響いて、都市の中に煙が昇った。


 俺は次々にFPV神風ドローンを召喚していく。再び飛ばしてやると、爆発したところでは数人が倒れており周りに逃げていったようだ。だが逃げると再び固まって入り口の様子を伺っている。どうやら自分達が何をされたのか分かっていないらしい。俺は再び騎士の塊の所にドローンを落とした。


 ズドン! そして俺は次のドローンを飛ばしてやる。上空から見ると敵騎士はようやく攻撃されている事に気が付いて、散り散りに逃げ始めているようだった。俺はとにかく騎士が固まった場所にFPV神風ドローンを落としてやる。


「逃げろ逃げろ」


 なすすべもなく爆散していく仲間を見て慌てふためいている。俺は怪我をした騎士を担いでいる集団にも、分け隔てなくFPV神風ドローンを落としていくのだった。


《ギレザム》


《は!》


 俺達はこのまま正面から侵入する。上空からの指示と援護よろしく。


《かしこまりました》


 そして俺は装甲兵員輸送車に乗っている、ホウジョウマコとルフラのコンビに声をかけた。


「ハッチを締めて待機。デモンもしくは火の一族を確認したら先にヘリに戻れ」


「「はい」」


 そしてヴァルキリーを着た俺と、シャーミリア、ファントム、カララ、アナミスが銃を携帯して門に向かって走っていく。門の前にたどり着くとギレザムが言う。


《門の周辺には約三十。上空から掃討します》


《頼む》


 すると俺達からも見える門の内側上空に、ギレザムが乗ったグリフォンのイチローが現れた。その背に乗ったギレザムは12.7㎜M2重機関銃を抱えている。その銃身が隠れた兵士に向いて火を噴いた。


《沈黙》


 俺達はそれを聞いてすぐさま都市の内部へと入り込むのだった。門周辺の建物は俺のAT4ロケットランチャーで崩壊していた。更に都市のあちこちの空に煙が昇っている。


《ギレザムほか全員に告ぐ! 俺達は都市に入った。逃げた兵士の殲滅戦に入る! 上空から狙えない敵がいたら通達よろしく! 俺達が殺る》


《《《《《は!》》》》》


 すると俺達の頭上にエミルのベルAH-1Zヴァイパー戦闘ヘリが現れた。俺は無線を召喚しエミルに伝える。


「エミル! 俺達は掃討戦に入る。上空からも敵兵の排除を頼む」


「了解」


 そしてベルAH-1Zヴァイパー戦闘ヘリは、さっそうと都市の内部へと飛び去って行った。俺達が都市内を走り始めると、騎士達が建物の脇からぞろぞろと出て来た。


 ズドドドドドドド! 兵士たちはほとんど近づく事も無く、パタパタと倒れていく。俺達の視界の上で、ギレザムたちが屋根の上を撃っていた。どうやら屋根の上にも待ち伏せしていたらしい。


 エミルのベルAH-1Zヴァイパー戦闘ヘリが都市の通路に向けて、M197 20mm機関砲を掃射していた。あんなもんの直撃を受けたら人間は原型も残らない。


「カララ」


「はい」


「糸を四方に巡らせ、騎士の居場所を確認しろ」


「はい!」


 カララが集中し、四方に無限とも思えるような目に見えない糸が張り巡らされていく。


「百メートル四方の騎士は捉えました」


「よし」


 俺はカララの背中に手を触れて、魔力を流し込みカララの糸の先に手榴弾を召喚してピンを抜いた。すると都市内のあちこちから手榴弾の爆発音が聞こえて来る。


「次だ」


 俺とカララはシャーミリアとアナミスに護衛されながら、再び奥に進んで同じ作業を続けるのだった。

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