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第828話 ベルゼバブ攻略

 俺達の銃撃は全てベルゼバブの黒い幕に吸い込まれてしまう。魔人達がヒットアンドアウェイで攻撃を仕掛けても攻撃が通らず、ベルゼバブは真っすぐに俺に向かって進んで来るのだ。ラーズが俺の前に立ちはだかりベルゼバブから守ろうとした。


 だが俺はそれを制する。


「ダメだラーズ!」


「しかし!」


「食われるぞ!」


「‥‥‥」


「俺が逃げ回ればアイツは俺について来る! その間に攻略法を見つけるしかない! とにかくベルゼバブに接触してはならない!」


「は!」


 俺はとにかくベルゼバブから距離を取って逃げ回る事にした。近寄ればアイツは衝撃波で行動不能にしてくるし、あの黒い幕はなんでも食らい尽すようだ。


 そして状況はだんだん悪い方向へと向かっていく。


「なんだありゃ?」


 ベルゼバブは体の各所に黒い幕を張っていたが、いつしかそれは全身を覆いつくし黒い球体になり始めた。ベルゼバブが通過した場所の床がめくれている。


 どう考えても危険だった。


「一度引くしかない!」


 俺が全員に言うと、シャーミリアが言う。


「私奴がしんがりを務めます! ご主人様は先にお逃げ下さい!」


「無理はするなよ!」


「心得ております」


 そして俺はカーライルに声をかけた。


「ひとまず脱出しよう」


「しかし!」


 カーライルの視線の先にはビクトールがいた。どうやらあいつをどうにかしたいらしい。


「危険だ! 今はあきらめろ!」


 そして俺が部屋の入り口に向かうとカーライルがついて来た。その後にギレザムとラーズが、そしてファントムとシャーミリアが銃撃でベルゼバブをけん制しながら後退してくる。


 しかし、何だありゃ。重い装甲車を何台も丸のみにした。今までのデモンには無い強さだ。


 ズゴン!


 俺達が逃げる方向の目の前の壁から、突如ベルゼバブが出現した。


「うお!」


 俺達は反転し部屋へ続く道を後戻りする。


「わらわから逃げられると思ったか?」


 そう言えばヤツは壁抜けが出来るんだった。こいつの厄介さに改めて気づかされる。俺達は再び元の部屋に戻るしかなかった。通路を走って元の部屋に飛び込み一気に魔人達が散開する。


「入って来た瞬間を狙う!」


「「「は!」」」


 シャーミリアが上空にギレザムとラーズが左右に、そして俺とファントムとカーライルが一直線に奥へと逃げる。ベルゼバブが入り口から入って来たので、一斉掃射をするが再び黒い幕が張られて防がれた。


「ダメか」


 ベルゼバブが標的にしているのは俺だけのようで、魔人達には見向きもしない。一直線に俺めがけて進んで来る。


「シャーミリア!」


「は!」


「俺と二人でベルゼバブをひきつける。その間に皆を逃がす」


「は!」


 しかしギレザムとラーズが反対する。


「危険です!」

「我らが守ります!」


「考えがある! 頼むから離脱してくれ!」


 するとシャーミリアが言った。


「ご主人様がそうおっしゃっているのです! 従いなさい!」


「くっ!」

「わかった」


「全力で脱出しろ! 他に潜っているガザム達も外へ! ファントムはカーライルを連れていけ!」


《ハイ》


 ファントムがガシっとカーライルを抱えて走り出し、その後をギレザムとラーズが追って行った。俺はとにかくベルゼバブから逃げ回り、シャーミリアが空中からベルゼバブを撃ち続ける。


「うははははは、配下を逃がすとはいい度胸だねぇ。お前達だけでどうするつもりだ?」


 俺はベルゼバブの言葉に答えずに必死に逃げる。アイツに近寄れば行動不能にさせられる可能性があった。とにかく皆が地上に出るまでの時間を稼ぐ事にする。ベルゼバブ少しでも足止めする為に、兵員輸送車をガンガンばら撒くが気休め程度にしかならなかった。


 飛び道具は無いが、くっつかれたら終わりだ。ゼクスペルともまた違う厄介さだな。高位のデモンだとか言っていたが、攻略法がなかなか見つからない。


「く!」


 ベルゼバブとの鬼ごっこをしているうちに、上手く追い詰められていたようだ。狭まった場所へまんまと追いやられていた。そこにベルゼバブが迫ってきたので、俺が脇をすり抜けようとした時だった。


ブブブブ


 ガクン! まただ。あの衝撃波が俺を襲い、全身の力が抜ける。


「おしまいだ!」


 ベルゼバブが叫び、黒い幕が津波のように俺の上へと覆いかぶさってきた。


「やべっ!」


 俺は咄嗟に自衛隊の輸送艇1号型を頭上に召喚する。それで数秒のタイムラグが起きて、その隙にシャーミリアが俺をさらった。


 ズズゥーン!


 俺が輸送艇1号型の下敷きになる前に、シャーミリアが上空へと連れ出す。


「助かった」


「ご無事で!」


「また力が抜けた」


 全長五十三メートルもある輸送艇1号型が、黒い幕に覆われていく。


「兵員輸送車よりもはるかに大きい輸送艇を食うのか?」


「そのようです」


「みんなはもう地上に出たと思うか?」


「彼らの足であれば既に出たものと思われます」


「この作戦が通用するか分からんが、俺が次の兵器を召喚をしたら抱いたまま通路を廻り地上に逃げてくれ。恐らくシャーミリアの速度なら逃げられる」


「かしこまりました」


「速度は全開」


「は!」


 そして俺は輸送艇を喰らうベルゼバブを見ながら次の兵器を召喚する。俺が召喚したのはBLU-118 サーモバリック爆弾だった。


「ベルゼバブが輸送艇を食らい尽す前に!」


 それを投下したと同時に、シュッとシャーミリアが加速した。俺は身体強化を最大限にあげて、シャーミリアの加速に耐える。後方で物凄い爆発音が聞こえ、周辺の岩肌に亀裂が入るのが分かった。どうやら失神は免れたらしい


 バシュッ!


 あっという間に空中に出て、洞窟の側で待機していた皆に告げる。


「急速に洞窟から離れろ!」


 下では配下達が一斉に洞窟から離れるように走っていく。


 ズゥゥゥゥン! と洞窟の入り口が崩れ、思いっきり洞窟の口から土ぼこりがふきあがる。シャーミリアに抱かれたまま山を見下ろすと、山の一部がボゴンと盛り上がり次の瞬間陥没する。山を一部変形させるだけの爆発だが、ベルゼバブはどうなっただろう?


「どうだ?」

 

 俺がシャーミリアに聞くと即座に答えた。


「まだです!」


「だろうな」


 俺が見ている山の一部がズズズと盛り上がり、そこから黒い球体が出てきたのだった。サーモバリック爆弾の至近距離の爆発でも死なないらしい。


「ベルゼバブの目標は俺だ。俺がいる限りアイツは逃げない」


「いかがなさいましょう」


「かといって次の手が…」


 すると俺の耳に聞きなれた音が聞こえて来た。振り向くとエミルの操縦するAH-64Eアパッチガーディアンがこちらに飛んで来ていた。


「シャーミリア! ヘリに飛べ!」


 そして俺とシャーミリアは、キャノピーの側に行く。そして俺が無線を召喚しエミルにつなげた。


「来てくれたのか!」


「心配でな」


「ちょっと試したいことがある! 一緒に来てくれ!」


「わかった」


 そして俺はAH-64Eアパッチガーディアンを引き連れて山の方に戻る、すると山の中腹あたりで黒い塊がどんどん大きくなっていた。


「なんだありゃ?」


 エミルが聞いて来る。


「デモンだ。なんでも食うんだ」


「うえー、気持ち悪いな」


「とにかくあれに全弾ぶち込んでくれ!」


「了解」


 そしてエミルが山の方へ向かって飛んで行った。


「シャーミリア! いざという時はエミルとケイナを守れ!」


「は!」


 そして大きくなった黒い塊に向けて、AH-64Eアパッチガーディアンはミサイルを全弾撃ちこんだ。だが黒い塊はそれを次々と飲み込んで、どんどん大きさを増していくのだった。


「なんだ? 爆発を飲みこんでデカくなっているのか?」


「潜在的なものでしょう」


 俺はすぐにエミルに無線を繋げた。


「中止だ! 戻ってくれ」


「了解」


 ヘリは俺達とすれ違うようにして後方に下がっていく。眼下では黒い塊が渦を巻いている。俺達の攻撃に対応できるように幕を広げたのだろう。その渦巻は周囲の木々すらも食らい尽して拡大していく。


「あれさ、なんかに似てるよな?」


 俺が言うとシャーミリアが答える。


「日本人が使った闇魔法に類似しているようです」


「なるほどな。あれの強化版かも…」


 モーリス先生は光魔法で俺をあれから救出したっけ。


「シャーミリア! あれの上空へ!」


「は!」


 そして俺とシャーミリアが、その黒い渦の真上へと飛んだ。俺はすぐさまスタングレネードを召喚して、それをその渦めがけて投げる。スタングレネードが落ちて行き黒い幕で炸裂した。100万カンデラ以上の光が光り、その黒い幕の一部が怯んだように縮む。


「効いたか!」


 俺はすぐさま次々とスタングレネードを召喚して投下していく。黒い幕はその光を嫌うように広がるのをやめて、一定の大きさから膨らまなくなった。だが決定打に欠けていた。

 

 すると俺の無線機に唐突に連絡が入る。


「ラウル様」


 今度はマリアだった。避難の為に逃げたと思っていたマリア達のヘリが飛んでいる。モーリス先生を避難させて逃げるように指示していたのに、ここまで来てしまったらしい。


「シャーミリア! 俺を連れてチヌークへ飛べ」


「は!」


 俺は開いているハッチからシャーミリアと共に中に入った。


「母さん!」


「あら、お出迎え?」


 何をのんきな事を…


「危険なんだ! デモンが山を食らい尽している」


 するとモーリス先生が外を眺めながら俺に言った。


「あれは闇魔法の一種では無いかのう?」


「恐らくはそうです!」


 するとミゼッタが俺に言う。


「私が!」


 そう言えばミゼッタは強烈な光魔法を体得していた。


「やれるか!」


「はい!」


 そしてマリアがチヌークの開いた後部ハッチを、ベルゼバブの黒い幕の方へと向ける。そしてミゼッタが後方に歩いて行き、風に飛ばされぬようにハッチにしがみつく。


「カララ! ミゼッタを固定しろ!」


 カララが糸でミゼッタを後部ハッチの中央に固定した。両手が開いたミゼッタが地上に向けて手を差し出す。


 ミゼッタの手の先から、パウッ! と光の弾が飛んでいき、ベルゼバブの巨大な黒い幕の上に到達した。そして次の瞬間、一斉に光のガトリング砲が地上を照射し始める。


 パパパパパパパパパパシュ!! まるでストロボが連続で焚かれたように閃光が煌めく。


「どうか?」


 俺が地上を見ると、ベルゼバブの黒い幕はどんどん小さくなっていくのだった。あっという間に黒い幕が無くなっていく。


「効いた! シャーミリア! 行くぞ!」


「は!」


 俺とシャーミリアがハッチから飛び出し、一気にベルゼバブの黒い幕の中心に飛んだ。そこには慌てふためくベルゼバブの姿があった。


「な、なんだ? わらわの、わらわの力が!」


 そして俺とシャーミリアがベルゼバブの正面に立った。崩れそうな岩肌にベルゼバブが立ち、その傍らにしぶとくビクトールも立っている。あの爆発を生き残ったのは恐らくベルゼバブの力のおかげだろう。俺がベルゼバブに言う。


「残念だったな!」


「な、なに? 魔人風情が!」


「終わりだ!」


 するとベルゼバブは、急にビクトールを自分の前に立たせる。


「わらわの役に立て!」


「な、なにを!」


 ビクトールが慌てている。そのビクトールの首筋にベルゼバブが指を突き入れた。


「うっがぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ベルゼバブがビクトールに何かしたらしく、ビクトールの肌に思いっきり血管が浮き出し始めた。それでもベルゼバブがビクトールに何かを注入するのをやめない。すると突然ビクトールの体がデカくなり始めたのだった。

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