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第83話 魔人の射撃訓練

翌朝、120名の魔人達と一緒に射撃訓練場に集まった。



森も何もない見晴らしのいい荒野に、ドワーフから作ってもらった土人形をあちこちに配置して、土嚢を積んで射撃練習場を作ったのだった。


そこに魔人達が集まっているので俺が話を始める。


「よし!それじゃあまずは、銃の実践的な使い方を見せよう!マリア!こちらへ!」


「はい。」


マリアはメイド服を着ていた。キッチンでの朝食の後片付けをしてそのまま駆けつけたからだ。仕事の合間に射撃訓練に来てもらったのだった。シャイタックM200スナイパーライフルを抱えて俺のところに来てくれた。忙しいのに大変申し訳ない・・


「これが銃というものだ!」


「おお!これが・・」

「細い棒にみえるが・・槍か?」

「あれが、武器?そんな、」

「どうやって戦うんだ。」


ザワザワとなっている。当然の反応だった・・剣でも槍でも無い、鉄の細い棒に見える。


「そうだよな。でも凄いんだぞ!じゃあマリアの標的は・・鳥だ。」


「はい。」


マリアは特別に用意した台にメイド服で寝そべって荒野にいる鳥を探す。マリアが見つけて俺に教えてくる。


「ラウル様、鳥がいます。」


双眼鏡で見ると1キロメートルくらい先に、鴨に似た鳥がエサをついばんでいた。


「みんな、鳥が見えるか?」


「はい。」

「あれはガモですね。」

「あれはウマいんだよな。」


魔人はそれぞれに口にしている。


《すげえな裸眼であれが見えんのか魔人は。》


「あれを、ここから殺す。」


「え!ここから?」

「どうやって・・」

「そんなことが出来るのか。」


魔人達は口々に不可能だと言う。


「マリア、やれ。」


「はい」


ズドン!


マリアは間髪入れずにすぐ撃つ。


1.2.3.4秒 


バッ!


1羽のガモが飛び散って、他のガモ達が逃げていく。


「おおおお!」

「どうなっているんだ!」

「こんなことが可能なのか!?」


そうだろうそうだろう。それはそう思うよな。


「これがこの武器の性能だ。だれか、あの鳥をひろってきてくれ。」


「は!」


ライカンの副隊長ジーグが脱兎のごとく駆けだして、あっというまに1キロ先の鳥をとって帰ってきた。


「あの・・ほとんど食べるところがないかもしれません。」


ほんとだ・・


「ちょっと威力があるからな、猟には使えないかもしれないが、こうやって遠いところから攻撃できる武器なんだ。」


「おおお!」

「素晴らしい、これが・・元始の魔人のちから・・」

「アルガルド様!これが私たちにも使えるんですか?」


「まあこれだけの距離で、あんなに小さい標的に当てるのは俺でも無理だ。マリアだからこそ出来る芸当だよ。攻撃は誰でも可能だ。」


「マリアさん・・すごい。」

「マリアさんは人間?なんだよな?」

「マリアさんはアルガルド様より武器の扱いがうまいのか。」


よしよし、マリアの評価があがっていくぞ!これも計画通りだ。


「じゃあ順番にやっていくぞ!みんなこっちへ来てくれ。」


魔人達を連れて場所を変えた。そこにはドワーフが作った土人形たちがそのあたりに建てられている。


「あれを標的にして練習をしていく。10人ずつ交代でやっていくので順番に並んでくれ!俺が武器を召喚して渡していくから取りに来い!」


「「「「はい!」」」」


俺はAK47自動小銃を召喚した。ひとりひとりに説明をしながら渡していく。


最初は隊長格のミノタウロスのタロス、ライカンのマーグ、スプリガンのニスラ、竜人のドラグ、オーガのザラム、オークのガンプ、ダークエルフのウルド、ゴブリンのティラ、アラクネのカララ、スライムのルフラが並んだ。


魔人達が自動小銃を構える姿はびっくりするほど違和感があった。あと・・スライムのルフラが人間なんだが・・スライムのイメージは大福のような形だと思ってた。スライムでもルフラだけは、いろんなものに変化する事が出来るんだとか。まるでバー〇パパだ。


「いいか?このままでは使えない、これから使える状態にするからそれを教えていく。まず大変危険なのでこの先の穴部分を周りの人に向けないこと!」


「「「「はい!」」」」


俺とマリア、ギレザム、ガザム、の武器を扱った事のある4人がそれぞれに姿勢や注意事項を説明していく。


「じゃあ、マリア。あとは頼む。」


「わかりました。」


マリアは皆に銃の安全装置の外し方や、狙いの定め方を教えていく。みな立ってそれぞれ土人形に向かいAK47自動小銃を構える。


いやあ・・ミノタウロスが自動小銃を持っているんだけど・・牛の頭の魔人がだ。それにもまして竜人のドラグはトカゲ人間だ・・それがAk47を構えている。アラクネのカララさんなんて上半身以外蜘蛛だから違和感バリバリだ。


「では、みなさん。これから皆さんを指導するマリアです。よろしくお願いします。」


「「「「はい!」」」」


「まずはあまり体に力を入れないでリラックスしてください。先ほど説明したように土人形に狙いを定めたら、反動に備えて軽く体に力を入れます。ただそれほど大きな反動はありませんので、怖がることはありません。」


「「「「はい!」」」」


「私が合図をしますので、土人形に先端を向けて教えた通り、引き金を引いてください。」


みんな銃を肩口に構えて照準を合わせている。


「てーーーー!!!」


ダダダダダン!

ダダダダダン!

ダダダダダン!


土で出来た土人形が土ぼこりを上げてあちこちはじけ飛んでいる。


「打ち方やめー!」


みんな打ち方を止める。


みんな黙り込んでシンと静まり返った。


《ん?どうした?みんなどうしちゃったんだ?》



「え・・こんなに簡単なんですか?」

「いま、攻撃したんですか?」

「指を動かしただけなのに。」

「これが・・武器」


どうやら魔人の隊長たちはあまりにも簡単な攻撃に、あっけに取られているようだった。俺はみんなに話しかける。


「そうだ!これが俺の召喚する武器、銃の攻撃だ。今の攻撃で10人の敵が死ぬか大けがをした。」


「す・・凄まじい!」

「こんなことが我々にも!!」

「簡単すぎる!」

「奇跡だ。」


ガヤガヤし始めた。次第にガヤガヤが大きくなり広がっていく。


オオオオオオオ!


感動しているようだった。だが俺はここでいったん冷静になってもらうため話をする。


「みんな!どうだい?これが銃なんだが簡単だろう?」


「ええ!」

「魔法が使えるようになった気分です。」

「素晴らしい。」

「神の力だ」


「そうなんだが、今は止まっている的に撃っただけだ。動いている敵に当てるのはまた難しいし、敵を制圧していくには今のままでは無理だ。」


みんなは銃の威力に驚いているが、とりあえずクギを刺す。


「「「「わかりました」」」」


じゃ本当に難しさを分かってもらうために次の訓練に移ろうかな。


「じゃあマリア頼む。」


「では皆さん!また所定の位置についてください。」


みんながまた土人形に向かって銃を構える。


「人型の頭を狙って撃ってみてください!」


「は!」


「てーーーーー!!!!」


ダダダダダン!

ダダダダダン!

ダダダダダン!


数人は何とか頭に当てたようだったが、体にあたったり外れたりしている。


「打ち方止め―!」


みんなが首をかしげている。的を絞ると途端に当てづらくなるからだ。


「どうだ?的が小さくなると当てづらくなるだろう?」


「はい。」

「難しいですね。」

「確かにそうだな」

「当てられるようになるのだろうか?」


「そうなんだよ。さらに的が動けば当てづらくなる。みんなはまだ剣や槍で戦うほうが戦いやすいだろう。しかし!剣や槍、体術と同じように訓練で銃の命中率は必ず上がる。それまでこの練習を定期的に行っていこうと思っている。」


「「「「は!」」」」


凄いな。今まで培ってきた武技にプライドもあるだろうに、なんて素直な反応なんだろう。人間では絶対にこうはいかないな。


「じゃあ見本を見せる。俺じゃなくて済まないが・・マリア!また頼む。」


「はい!では。」


ミノタウロスの隊長、ミノスからAK47を受け取り、マリアが土人形に向かって構える。


ダダダダ

ダダダダ

ダダダダ

ダダダダ

ダダダダ

ダダダダ


10体の土人形の頭だけを寸分の狂いもなく正確に撃ち抜いて行く。


「「「「「おおおおお!」」」」」

「「「「「素晴らしい!」」」」」


魔人達から感嘆の声があがる。


「よし!では次の順番の人に変わろうか。」


「「「「は!」」」」


隊長格の連中が名残惜しそうに、副隊長へとAK47自動小銃を渡す。アラクネのカララとスライムのルフラも次の者へと渡した。


それから半日かけて110名の射撃訓練が終わった。


「まずは本日の射撃訓練は終了だ!これから精度をあげたり、組織的な動きをみんなで習得していこうとおもう!武器をマリアの元に戻してくれ。」


「「「「はい」」」」


魔人たちはAK47をマリアの元に集めて俺の次の言葉を待つ。


「みんな、射撃と言うものがどんなものか分かったと思う。そして俺が召喚する武器の性能の一端も見えただろう。俺はこの武器を使って、組織的な戦いが出来るように皆に教えていくつもりだ。だがこれまで皆が培ってきた武技や体技も戦いには有効だ。その身体能力もこれからの戦いに活かしてほしいと思っている。また銃は武器のひとつで万能ではない!武器の性能を過信する事なく、自分で考えて行動する事も必要となってくる。みんなの能力を鑑みてあった武器を見つけていこうと思う。よろしくな!」


「「「「は!」」」」




そして俺の配下達の組織戦闘とファントムの性能を見せるデモンストレーションに移る。


「よーしじゃあ、俺の配下は前に出てくれ。」


俺の配下のギレザム、ガザム、ゴーグ、ミノス、ラーズ、セイラ、ドラン、スラガ、アナミスが前に出てくる。


「さて、それじゃあ昼飯の前にみんなに見てもらいたいものがある。俺の兵器とこれまでの自分たちの武器攻撃混合での組織的な戦い方だ。」


土人形がたくさん立っている向こう側に、迷彩戦闘服を着てヘルメットをつけたファントムが立っている。ファントムには棍棒を持たせていた。


「いかに皆の今までの武器の攻撃が強力で、俺の兵器がすぐれていても、こんなこともあるんだという参考事例としてみてほしい!あそこにいるファントムはシャーミリアが俺の為に作ったバケモノだ。ハイグールと言ってかなり強いうえに不死と超速再生を持っている。弱点はない。今回はコイツの性能も見てもらうつもりだ。」


ファントムには配下を殺さないように指示をした。あとは俺の配下がどこまでやれるのか・・俺も見ものだった。


「シャーミリア様は凄いものをおつくりなさった。」

「さて、一度は魔物の国を出た者どもが、どの程度か見極めてやろう。」

「いや、元王ガルドジン様の配下であるぞ、かなりやると見ていいと思うがな。」


魔人達はそれぞれに感想をのべたり、俺の配下を品定めするようなことを言ったりしている。


「俺の武器も万能ではないということを知ってほしい、そして人間の騎士の成れの果てであるファントムの性能を目に焼き付けてくれ。」


「どんなバケモノなんだ・・」

「シャーミリア様は最高傑作と言ったらしい。」

「なんだ・・あの者の気配がおかしいぞ。」


みなファントムを見て息をのんでいる。


「それじゃあ会場を移す。みんな俺についてきてくれ!」


デモンストレーション用の会場にみんなを誘導していくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 119名だったのが120名? …あっ…ファントム君か…とか、思ったりした自分でした。 まずはマリアさんの評価…スナイパーとしての腕もさることながら、ラウル君本人からの『自分以上』の評価に魔…
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