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第810話 ベルゼバブ

 ヴァルキリーで飛んで来た俺は、ギレザムたちの側へと舞い降りた。するとそこには見慣れぬ二人が居て、突然現れた俺を見て驚いている。一人は少女のように見えて、もう一人は…


 えっ? ヨー〇? ジェ〇イマスターの?


 そこには前世のSF映画で見た超能力と光の剣を使う、ちっさい生き物がいた。


 いや…、光の剣は使わんだろうけど、見るからにヨー〇じゃないか! いや、今はそんな事どうでもいい。空一杯にデモンが広がっているんだから、あいつらをなんとかしないと身動きが取れない。


「ギレザム。まだ見つかってはいないんだな?」


「そのようですが、時間の問題であろうかと思われます」


「だろうね」


「そしてデモンは空だけではありません。地上からも湧いて出て来ています」


 なるほどね。どうしてもこの二人を見つけ出したい訳だ。てことは、この二人は敵にとって重要だって事ね。


「ご主人様。急がねば嗅ぎつけられましょう」


 シャーミリアがそれほど焦っていないように言った。だが既にやる事は一つだ。恐らく俺達が逃げても、まもなく捕まってしまうだろう。この二人が何者なのかは知らないが、敵が血眼になって探すって事はこちらにとっても重要人物だ。


 俺は皆の為に新たな武器を召喚しつつ、それぞれに指示を出していく。


「シャーミリアと俺が空の敵を蹴散らす。ギレザム、ガザム、ゴーグは地上のデモンを迎撃しろ」


「「「「は!」」」」


「ティラ、アナミス、ルフラはこの二人を守りつつ、後続の大隊と合流するんだ」


「「「は!」」」


「本隊が合流したら殲滅戦を開始する」


 するとゴーグが笑って言った。


「ラウル様! デモンを残しておけって事ですか?」


「いや、思う存分暴れて皆殺しにしていいぞ」


「はい!」


 俺達が行動を開始しようとした時、突如、少女のように見える一人が俺に言った。


「なっ! この人数であれほどの数のデモンを相手するのか?」


「むしろ、この面子くらいの方が良いかもしれないんだよ」


 俺の攻撃に巻き込まれてしまうかもしれないからね。


「軍隊を連れてきているんだろ? それを待てばいいじゃないか!」


 そんな大声を出したら…


「…てか見つかったみたいだぞ」


 空を覆っていたデモンが列をなして、こちらに一直線に向かってきていた。この少女がアホみたいに大きな声を出したからだ。一刻を争うので皆に号令をかける。


「いけ!」


「「「「「「「は!」」」」」」


 俺とシャーミリアが一気に上空へと飛び立つ。ギレザムとガザムとゴーグが、南方向へと突撃を開始し、ティラ、ルフラ、アナミスが二人を連れて後退し始めた。森の中なので車両では走れず足で進むことになる。


 おー、いるいる。てかキモイ…


 ハエの顔をした体が猿のやつが、ハエの羽でブンブンと大量に飛んでいる。俺達が空中に出現したことで、俺達の周りを囲むように飛び始めた。すると一人のデモンが前に出て来て、俺達に話しかけて来た。見た感じは紫色の肌をした色っぽい女だが、ハエの羽が生えているので間違いなくデモンだ。


「面白いのが出て来たねぇ…、飛ぶ奴がいるなんてねえ」


 それはこっちの台詞のような気がするけど…


「そっちも、ブンブンと飛んでるじゃないか?」


「天まで持ち上げて落として殺そうと思ったけど、飛ぶんじゃそうはいかないね」


「殺す? ああ…、俺達がお前達をか?」


 すると一瞬沈黙してから女が笑う。


「あーっはっはっはっはっ! あたしたちを殺すだって? この数が見えてないのじゃないかい?」


「まあいいや。お前ら一体ここで何してんだ?」


「契約でそれは言えないねぇ。お前達こそ何者だい? なんでこんなところにいるんだい?」


「俺達がここにいる理由は簡単だよ。お前たちを皆殺しにするためだからな」


「くっくっくっ! あたしをベルゼバブだと知って言ってるのかい?」


 あー、何か聞いた事ある。確か悪魔かなんかの名前だ、てことは今まで通りコイツは敵で間違いない。


「やれるもんならやってみろよ」


「お望み通り、体を腐らせてやろうじゃないかい!」


 するとベルゼバブが天に向かって手をあげた。それを振り下ろすと何万と言うハエのサルが俺達に飛びかかって来る。俺とシャーミリアは背中合わせになった。


 するとヴァルキリーが俺の頭に直接語り掛けて来る。


《我が主! どんどん兵器を召喚してください。すべて換装できるようになります》


《わかった!》


 俺はヴァルキリーに言われたとおりに武器を召喚する。肩にM134を二基、両腰に12.7㎜M2重機関銃を二基、そして両手にSMAW-NEロケットランチャーを持った。


《我が主! 命じてください!》


《撃て!》


 目と鼻の先までハエのサルが来たので、二人で一斉射撃を開始した。


 ズドドドドドドドドドド!

 ガガガガガガガガガガガ!

 キュィィィィィィィィィ!


 俺達を中心にして閃火が伸びて行く。俺とシャーミリアは背中合わせになりながら、グルグルと回転をし始めた。すると周りで飛びかかろうとするハエのサルたちは、燃え尽きるようにボトボトと落ちていくのだった。俺達を中心にしてどんどん円が広がっていき、黒かった空が澄渡って来る。


 気持ちいいい!!!! めっちゃ崩れていくし、なにこれ! めっちゃストレス解消になる!


 デモンの塊がどんどん崩れて落ちていくのは、まるでゲームのようで気持ちよかった。しばらく続けているとサルのハエがピタッと止まる。


「どうしたどうした! もうかかってこないのか?」


 俺が煽るとベルゼバブが悔しそうな顔で前に飛んできた。


「ぐぐぐぐ! なんだ! なんなんだ! その力は! あたしが聞いてた力じゃない!」


 なるほど、恐らく北で戦った時の情報を耳にしているのかもしれない。あの時の俺とでは格段にレベルが違うのだ。連結LV2でも、かなりの威力を発揮する事が分かっている。俺はためらわずに、話しているベルゼバブに向かってSMAW-NEロケットランチャーを撃ち込んでみた。すると、その射線上にハエのサルの壁が出来てベルゼバブには当たらなかった。


「上手く避けるもんだな」


「ぐぅぅぅぅ」


 ベルゼバブは、今にも手拭いを噛みしめそうなそぶりで悔しがっている。その隙に俺は、シャーミリアの残弾が少なくなったM240とバックパックを捨てるように言う。すぐさまシャーミリアに新たなM240中機関銃とバックパックを召喚して換装した。


《シャーミリア。とにかくこいつらをきれいさっぱりやってしまおう》


《は!》


 再び蠅たちを撃ち始める。どんどん落ちていくハエのサルに俺は快感を覚えるのだった。


 するとベルゼバブが叫び始める。


「やめろおぉぉぉ! あたしの可愛い子らを殺すなぁぁぁ! わかったぁぁぁ! もうお前達を攻撃しないからぁぁぁ」


 懇願しているようだが、そんなの関係ねえ! ひゃっぁはぁぁぁぁぁ!


 どんどん落ちていくハエのサル。これは気分いい!


「まってぇぇぇぇ! まってぇぇぇぇぇ!!」


 なんか泣いて懇願しているな。馬鹿だねぇ…やめるわけないじゃん!


 うっほぉぉぉぉぉぉ! ガガガガガガガガガガガガ! そして俺は射撃をしながらも、地上で戦っているギレザムたちの方角にミサイルを発射した。もちろんギレザムたちにあたらないように援護する為に。地上でもガンガンと爆発する爆弾に、更に気分も高揚してくるのだった。


「ひっ! ひけぇぇぇぇ! ひけぇぇぇぇぇぇ!」


 ベルゼバブが言うと、残り千にも満たないハエのサルが逃げていく。


「シャーミリア! 追うぞ! 出来るだけぶっ殺しとこう!」


「は!」


 俺とシャーミリアがデモンの群れに追い打ちをかけるように、背中からガンガン銃を撃ちこんでいく。俺に慈悲など無い。だって気持ちいいから! 


 南へ飛びながらも地上に向けてクラスター爆弾を落としていく。ギレザムたちは後方から軽く追撃をしているようだが、俺の爆撃を邪魔しないように距離を取っているようだ。


《ヴァルキリー! ジャンジャン爆弾を落とすから狙い定めてくれ!》


《仰せのままに》


 ドカドカと森に落ちていくクラスター爆弾に、地上のデモン達もバンバン飛び散っていく。なんかやっつけられてるかよく見えないな、ギレザム達も追うのを止めたようだしやるか!


《ヴァルキリー!デイジーカッターを数発落とす》


《はい》


 そして俺は更にデイジーカッターBLU-82爆弾をどんどん投下していく。地表ではまるで核爆発かと思われるような爆発が連続して起きた。だが爆撃に専念をしているうちに、シャーミリアから声がかけられる。


「ご主人様。ベルゼバブとやらに逃げられたようです」


「あ、やべ! 地表を焼くのに集中し過ぎた!」


「地表のデモンの気配も残りわずかでございます」


「じゃ、爆撃止める」


「は!」


 そして俺は爆撃を止めて、燃える地表を見下ろした。


「残ったデモンは、銃でしらみつぶしにしていくか」


「は!」


 俺とシャーミリアが地上すれすれを飛び回り、生き残ったデモンを撃ち抜いて行く。残すとゴキブリみたいに増えそうだからな。


「よし! 一旦攻撃を終えるぞ!」


「は!」


 俺とシャーミリアは殲滅戦を止めて、ギレザムたちのもとへと戻るのだった。俺が地表に降りたつとギレザムたちが俺に言って来た。


「お見事です!」

「私達の得物はほとんどなくなってしまいましたね」

「俺は結構狩れたから満足!」


 三者三様の言葉が来た。焼け野原になった森は煙たくて視界が悪い。だが魔人達は意に介していない様子で、煙たい素振りをしていない。人間とは違いこのくらいへっちゃらなのである。


 俺が次の行動を指示しようとした時、ふいに念話が繋がった。


《ラウル様!》


《お! カララ! 念話が繋がるようになったのか!》


《そのようです! こちらティラたちと合流いたしました! そちらの援護すべく急ぎます!》


《いや、問題ない。こっちのデモンはおおかた片付いた。飛ぶ奴は多少逃がしたが、とにかくこの領域からはデモンは居なくなったようだ》


《突如、念話が繋がるようになったと言う事は、そのデモンの影響だったのでしょうか?》


《そうかもしれん。とにかく合流する! そのまま南に進め!》


《かしこまりました》


 とにかく俺達は問題なく謎の二人を保護する事が出来た。ギレザムたちとシャーミリアと共に焼け野原を歩いて北へと向かうのだった。


 しかし、あの女のデモンは念話の阻害が出来るのか。戦闘能力は問題にならないほどだったが念話の阻害は厄介だな。先行しているオージェ達との連絡手段が問題になる。まあその前に救出した二人の正体を探らねばなるまい…、普通に聞いて答えてくれたら楽なんだけどな。


「ラウル様。念話阻害は厄介ですね」


 ギレザムも同じことを考えていたようだ。


「ああ。作戦遂行する上で、念話は結構重要だからな。転移魔法陣で拠点間移動が楽になったと思ったら、今度は新しい問題が出て来た」


「無線を普及させた方がよろしいでしょう」


「そうだな」


 召喚する通信機器の優先順位が上がる。今までは念話頼りだったが、ここから先は俺の兵器を更に有効活用していく必要がありそうだ。火の一族のような厄介さは無いが、デモンにも面倒な力を持っている奴がいる事を再確認するのだった。

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